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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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光の雨 神末家綺談最終章

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「ここで・・・妹を待っていた。必ず二人で、逃げようと」

そしてその約束は果たされなかった。
だけど、今は違う。

「瑞、まだ間に合う・・・」

あの日、真実を知った日、傷だらけの瑞を心底哀れに思った。あの時代あの場所に自分がいたら、どんなことをしてでも自分が守ってやるのにと。

いま、それができる。
過去をなかったことにできる。瑞を守れる。痛みから、別離から、この先に待つ永く悲しい未来から。

「・・・伊吹」
「大丈夫だからな。俺が絶対に、瑞と妹を守るから」

座り込んだ瑞に手を差し伸べる。伊吹の手を握り、瑞は静かに立ち上がる。

「伊吹・・・笑ってて、くれるのか」
「だって約束したじゃん」
「・・・そうか、そうだったっけ」

瑞が、つられるようにふわりと微笑んだ。

「俺は約束を守る男だぞ、瑞」
「素晴らしい」
「もっと褒めていいよ」
「男前」

こんなやりとりを、時間を越えて交わしていることがおかしくて、伊吹は笑った。

(ああ。だけどこれが最期)

それでも笑う。だって泣いたら、瑞が悲しむ。悲しませたくない。苦しませたくないから。

「・・・伊吹、衛士が来る」
「・・・!」
「みずはめが、待っているのに・・・」

神聖な森を穢す暴力的な足音が轟くのを、伊吹も自身の耳で聞く。