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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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光の雨 神末家綺談最終章

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手を、離せない。もう離さなければと思うのに。

「・・・大好きだ、穂積。離れたくない・・・」

瑞の目から涙が零れるのを、穂積は見た。感情を出して、むせび泣いているのを見るのは初めてのことだった。

「穂積・・・ほづみ、」

手に、力がこもるのを感じる。痛いくらいに。自分の名を繰り返し呼ぶ瑞の、苦しげな声。迷子の子どもが親を呼んで泣くのに似ている。

そして、悟った。

(ああ、そうなのか・・・)


この手を離してやることが、自分にできる最後の――


「・・・・・・さあ、お行き」


雪が舞った。風が鳴って視界が奪われる。目を開けた次の瞬間、もうそこに瑞と伊吹の姿はなかった。

もう二度と、手の届かない場所へと、行ってしまった。

桜の花が、雪と交じり合って、視界が埋め尽くされていく。ただ白くなっていく光景に、穂積はただ一人で立ちすくんでいた。


「初代・・・長きにわたるお役目、ご苦労様でございました・・・」


深く頭を垂れ、穂積は彼の背中に別れを告げた。涙が足元に落ちていくのが見えた。感情が溢れて、それでも不思議と悲しくはないのだった。


美しい花が舞い、雪とともに満月を彩る光景を、穂積はいつまでも眺めていた。
在りし日の、思い出とともに。


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