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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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光の雨 神末家綺談最終章

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嘘ではない。瑞の目を見て伝える。少し不安げに揺れている彼の瞳は、事実迷子の子どものように見えた。

「心を交わすうちに、本当に・・・そう思えるようになっていた。わたしに子はいないが、親の心というものをおまえのおかげで知れた。別れは・・・心底、つらい」
「・・・うん、」
「だがな、親というのは、子の幸せのためならば、どんな痛みにも耐えられるものなんだ。おまえが幸せになれるなら、こんな苦しみ、何度だって耐えられる。そう思えるんだ」

子を成せなかったことを、悲しかったとは思わない。すべてこの役目のためだったのならば。穂積を取り巻く運命のすべてが、瑞との未来を向いていたのなら。

「だから、苦労をかけたなどと言うな。これはわたしが望んだこと。おまえと過ごした日々の中に、振り返ってみて後悔など、一つもないのだから」

瑞が俯く。息をとめ、何かに耐えるように肩を震わせる。
そして、雪の舞う中に、その手のひらが静かに伸ばされた。穂積はそれを握る。冷たく体温を持たないその手は、それでも思いを伝えてくる。

「名前を、ありがとう」

俯いたまま、搾り出すように瑞は言った。

「ずっとおまえに言わなくてはと、思っていた」

じんわりと、胸に広がっていくのは、悲しみとも寂しさとも違った感情だった。桜と雪が舞う。瑞の姿が消えてしまうような錯覚を覚えながら、穂積は五感のすべてで瑞の言葉に集中する。