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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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光の雨 神末家綺談最終章

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「もういいっ!コーヒー買って来るっ!」
「はい俺キャラメルフラペチーノ!」
「自分で買えバーカ!」
「バカって言ったほうがバーカ!」
「ふんだ!お兄なんかもー知らん!」

妹がずんずん坂道を登っていってしまう。やりとりがおかしくて、老人は思わず噴き出した。幼い子どものような会話の応酬ではないか。

「あ、うわ聞いてました?すんません、やかましくて」

青年が苦笑を浮かべて頭を下げる。人懐っこい笑顔だった。

「仲がいいのですね」
「あいつ反抗期なのか兄に対してひどいンですって」

重いため息をついて、青年は老人の隣に座りなおした。

「京都の学生さんですか?」
「うん。今日は妹が大学の見学に出てきたから、付き合ってたんだ。おじいちゃんは?」
「明日、こっちで孫の結婚式があって」
「おー。おめでとうございまーす」

他愛のない話が続く。話していて気持ちのよい若者だった。

「俺、京都へは修学旅行で初めて来たんですけど・・・ここからの景気がどうしても忘れられなくて。それで進学先を京都に」

若者は、日に照る水面を眩しそうに見つめながら言う。

「ここからの、景色・・・?」
「懐かしいっていうのか・・・どうしてこんなに、ここに来たくなるのかなって思う。遠い昔に、誰かと一緒にこの景色を見たような。既視感っていうのとも違う」

それは、老人が感じていたのと同じような感覚だった。