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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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光の雨 神末家綺談最終章

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老人は静かに川の水面を見つめていた。初夏の京都、三条河原。川の裾に等間隔で座るカップルや家族連れが、賑やかな笑い声をたてている。

彼は、京都の出身ではない。親類もおらず、北日本の出身であるため度々来るような場所でもない。今だって、明日に控えた孫の結婚式に呼ばれて京の地を踏んだというだけなのだ。

それなのに、この川べりに座っていると、ふいに懐かしいような、いつかここでこうして川面を見つめたかのような懐かしい気持ちになっている。

(不思議なものだなあ・・・)

仕事は第一線を離れ、息子たちも独立した。孫の晴れ姿を見て、あとは静かに余生を送るだけだと思っていたが、水面を見つめていると、この長い人生で一度も感じたことのない新鮮な気持ちになるのだ。こんな感情が、自分の中に残っていたとは。新しい発見に、老人は目を細めて穏やかに笑う。

「だァーかァーらァー、父さんたちはお前のことが心配なンだってば」

賑やかな声に顔をあげると、二人連れの若者がやってきて、老人の少し離れた隣に腰かけるのが見えた。

「そうじゃなくてもハネッカエリなのに、一人暮らしなんて親は心配するっつうの」

口を尖らせ、そんなことを言うのは、ミルクティーのような綺麗な色の髪をした青年だった。

「なんで?お兄ちゃんだっているし、いいじゃん。わたしやっぱ京都に進学したい。今日、大学も見学して、ますますそう思ったもん!」

彼に反論している小柄な少女。二人はどうやら兄妹らしい。進学についてもめているようだが。

「おまえ俺の大学にそう簡単に入れると思ってンの?」
「べ、勉強するもん!」
「あっそ。でも親の意見も聞いてやれよ。女の子の一人暮らしは心配だろ」
「お兄ちゃんと一緒なら文句ないって言ったもん、父さんも母さんも」
「冗談だろ!?俺のフリーダム大学生活の邪魔をするな!」

ぎゃあぎゃあと続く微笑ましい二人のやり取りに、老人もまた顔をほころばせる。兄のぶっきらぼうな物言いにも、妹思いな性格が現れているのがわかる。仲が良いのだろう。