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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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光の雨 神末家綺談最終章

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(家・・・って、どっちだっけ)

頭に霞のようなものがかかっていて、考えるごとにぼんやりとした曖昧さが増していくのだった。

「わたしも行かなくては。ああ、みずはめ」

青年が振り返ったさきに、美しい女が立っていた。緋の袴、黒くつややかな髪を結い上げている。女は伊吹の姿を認めると、深々と頭を下げた。

「・・・あなたをずっと、ここで待ち続けておりました」
「お、俺・・・ですか?」
「いまようやく、我らの悲願が叶います」

女は静かに伊吹のそばに寄る。誰だっただろう。昔、会ったことがあるような、ないような。

「みずはめ、知り合いか」
「兄様、この者は・・・」

彼女は言いかけて、困ったように頬に手を添えた。

「この、者は・・・この者は、誰だったでしょう・・・?」
「何だそれは。さあ、もう帰ろう」

青年が笑って彼女の背に手をやった。そして伊吹を振り返る。

「おぬしも共に来るか?一人では心細かろう」
「・・・ううん、行かない。俺は、ここで、お別れ」

これで二人は、もう大丈夫だ。唐突にそんな思いが横切ることを、伊吹は不思議に思いながら続ける。