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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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光の雨 神末家綺談最終章

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「・・・俺だって、同じだ。同じ罪を負ってる。それをいま、やっと償える」

ばけもの使いだ、と声があがり、衛士らが逃げ出していく。

「帝の所業を、天がお諌めにこられたのだ!」
「なんと恐ろしい、罪深いことか!」

蜘蛛の子を散らすように逃げ出す者たち。何を言っている、と怒声を飛ばしたのは、瑞の父だ。

「都を穢し、人心を惑わすあやかしぞ!構えよ!」

まだ、瑞のことを思い出せる。みずはめの加護が生きている。伊吹は剣印を構えた。負けないと思った。逃げない。絶対に!

「俺を殺したって、雨なんか降らない!あんたたちは救われない!」

怖くない。もっと怖いことを知っているから。

「瑞を傷つけたら許さない!!」

もう二度と見たくない。瑞が死ぬところなど。見るくらいなら、自分が死んだほうがましだ。

そのとき。

「っ・・・!!」

瑞が、獣が吼えた。物凄い音が森中を震わせ、伊吹は耳を押さえ、必死で足を踏ん張る。音が、目に見えるかのようだ。草木を震わせるその声は、怒りだった。

「俺を守ってくれたのか・・・?」

咆哮がやめば、もう森には誰もいなかった。低く呻き、獣が鼻面を伊吹に押し付けてくる。

「ありがとう・・・」

森に静寂が訪れる。色濃くなる懐かしい気配に、伊吹は別れが迫っているのだとわかった。

運命は変えられただろうか。神末家の祖先は、もうない。ここから違う世界が始まり、この先、瑞を待つ未来には伊吹はいない。そして伊吹もまた永遠に、瑞を知らずに生きていく。