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私の読む「宇津保物語」第一巻 としかげ

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1 センダン科の落葉高木。暖地に自生する。樹皮は松に似て暗褐色。葉は羽状複葉で縁にぎざぎざがあり、互生する。初夏に淡紫色の5弁花を多数つけ、秋に黄色の丸い実を結ぶ。漢方で樹皮を苦楝皮(くれんぴ)といい駆虫薬にする。おうち。あみのき。《季 花=夏 実=秋》「―の花散る那覇(なは)に入学す/久女」
2 ビャクダンの別名。

雫をなめて生きながらえているうちに、その翌年の春より、この林の西より木を倒す斧の音が聞こえてきた。それを聞いて俊蔭は思った。
「斧の音は高く聞こえているからあまり遠くない処であろう。高い響きのする木であるなあ」
 と思って、琴を弾きながら漢詩を詠うと、この木の響きは三年間消えなかった。日が過ぎていくのに俊蔭が弾いて唄う声に響き返してくれた。そうするうちに俊蔭は思った。

「この場から四面を見ても、ここより離れたところに山は見えない。天地は一つに見える程一目に見渡されて、他に世界らしい世界はないのに、琴の音に響き返すのは、どのような木で有ろう。その木を探して琴を一つ造るだけの木材を得たいものだ」
 俊蔭は世話になった三人に別れを告げて斧の音が聞こえてくる方に足を踏み出した。はやる足を絞って力強く歩いて、海。河、峰、谷を踏破してその年を過ごした。
 
 同じように探して翌年も暮れた。

 響きのよい木を探して、三年目の春に、大きな高い峰に上がって、四方を見渡すと、頂は天に届き、険しい山が遠くに見えた。
俊蔭それを見て勇気を起こし急ぎ足で登ってやっとその山に到着すると、見渡すと千丈の谷底が根で。梢の先は天に突き刺し、枝は隣国の桐の木を倒し、その倒れた桐の木で割木を作る者がいる。見ると偉大な桐の木を阿修羅が樵っている。

頭髪は剣が立ったようである。面を見ると炎が燃え立っているようである。足と手は鋤鍬である。眼は大きくきらきら光って金属の椀のようだ。妻や子供孫まで居て、連なって、木樵をする。俊蔭はそれを見てはっきりと悟った。
「わが身はこの山で果てよう」
 勇気をふるって阿修羅一家の中に入って行った。阿修羅は見たこともない男を見て驚き、
「お前は何だ、何人か」

 俊蔭答えた。
「日本国王の使いで清原の俊蔭である。この木を倒す音を三年がかりで尋ね歩き、やっとこの山を探し当てた」
 と言う。聞いて阿修羅は怒りの顔で、
「お前は、どのような考えでこの阿修羅の、この世が創って滅びるまでの時間のその何倍もの罪を持ち、その半ばを過ぎるまで、虎狼虫けらといえど人間世界のものを近くに寄せず。獣が罠にかかるように来て捕らえた物を食料にしてもよろしい、と、ここに住まわせられた。どんな思いで人間のお前がここに来たのか。早くそのわけを申せ」

 阿修羅は両眼を車の両輪のようにぐるぐると回して俊蔭を睨み付け、歯を剣のように剥き出し怒り回る。俊蔭は涙を流して、
「有り難いことです。この山に登ってくるには、厳しい断崖、葉が激しく燃えさかる炎の中をくぐり抜けるまで、獣が激しく追ってくるのを抜けるときは炎が熱く、剣がふくらはぎを貫く、毒を思い切り含んだ蛇が仏の説くように向かってくる。日本よりこの国に来て、住み着いた林をすててこの山に来て」
 と、父母の許から離れた日よりこの國に来た間までのことを阿修羅に答えた。

 聞いて阿修羅は、
「われらは昔に犯した罪が深くて阿修羅の身となった。そうであるから、忍辱の心を持つ者達ではない。そうはいっても、日本の國に忍辱の父母が居られ、四十人の子供が悲しみ千人のお前の親戚、知人が心配して集まり、お前の許しを願っている。その孝心に賞(め)でてお前の命を許してやる。お前はすぐに日本に帰ってこの阿修羅のために大般若経を写経して供養をしてくれ。お前を日本の國の父母に向かうように便宜を与えよう」
 
 と阿修羅が言うときに俊蔭は伏し拝んで、
「日本からこの山を尋ねた一番の目的は、父母が愛している唯一人の子供の俊蔭。両親が私を心配すること、慈悲の心で育ててくれる、それらを振り切って国王のご命令が重要であるからこの国へ渡航してきた。
 父母は紅の涙を流して言われた

『お前が不幸な子であれば、親に永遠の涙を流させよ。孝行ならば、親の嘆の浅いうちに帰りなさい』
 と仰った。それなのに、俊蔭達が乗った舟は大時化にあって多くの仲間を海に飲まれて無くし、自分一人が知らない世界に漂着して、そうして長い年月がたった。

 そうであるから俊蔭は不幸な子である。この不幸の罪を免れるためには、貴方の倒された木の一片でも頂戴して、長年苦労を掛けた父母のために琴を造り、その音を聞かせて不孝の罪の償いとしたい」
 と言うと、阿修羅はますます怒り、

「お前の子孫代々の命に代えようといったところで、この木一寸もお前は得ることは出来ない。その訳は、 

(お断り。私は学者ではありません。手にした原本は、岩波書店 日本古典文学大系 宇津保物語です。読み方は、頭注を参考にさせていただき、文を綴っていきます。短歌は詠みませんから、短歌の訳は頭注そのまま戴かせて貰っています。文中おかしな所があっても、研究していませんので対処できません)



コメント

阿修羅とは、

 仏法の守護者。別名修羅。
 阿修羅のもともとはインド神話における「アスラ」という名の魔神であり、インドラ神と戦いを繰り広げた鬼神であった。
 その後仏教に取り入れられ、仏法を守護する八神である天龍八部衆の一つとなった。その姿は一般的に三つの顔に六本の腕を持つ三面六臂で表され、有名な奈良興福寺の八部衆像・阿修羅像などもそうした姿を見せている。
 阿修羅は戦いの神としてのイメージをもたれており、そのためか激しい争いの場を、その名をとって修羅場と呼んだりもする。(ネットから)          


その訳は、この世界全体、阿修羅の世界、天上の世界、地上の世界そのすべての父母が仏になられた日、天稚御子(あめわかみこ)下ってこられて、三年掘り続けた谷に天稚御子と同じ天上の女性(にょしょう)クダリが、音楽を移された木である。そこで、天女クダリが言われるのは、
「この木は、阿修羅のとてつもない長い罪が半分ほど終わった今の世に、山から西に向かう木の枝は枯れるであろう。その時に木を倒して三等分して、木の上部は仏に差し上げ、忉利天(とうりてん)にまで差し上げよう。中の部分は、父母に捧げ、下の部分は、将来この地上に生きる子供のために与えよう」
 と言われて賜った桐の木である。

 阿修羅を山の守りとされて、春は花園、秋は紅葉の林に、天女が下られて遊ばれるところである。断りもなく易々と来たお前の罪もあり、まして何年かの間愛撫して育てた。

 万劫の罪を少なくしよう。罪多き身を免れようと守ってきた。だから阿修羅の得になる物は何もない。何の理由でお前の取り分があろうか、ない」
 と言って、すぐにでも阿修羅が俊蔭を食おうとしたときに大空が突然暗くなり大雨が車の輪が回るように降り出し雷が鳴り響いて龍に乗った童が、黄金の札を阿修羅に渡して空に登って行った。阿修羅が札を見ると書いてあることは、
「三つに分けた木の下の品は、日本の衆生俊蔭に与える」