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たららんち
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ぶろぐがわり

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むかしのじぶん



 みなさん、幼稚園児のころの記憶はありますでしょうか?
 私は、実はもう全然ないです。
 ただ、二つだけ、幼稚園に関することで覚えていることがあります。

 ひとつは、大怪我をしたことです。

 幼稚園の体育館には、積み木を大きくしたような遊び道具がありました。素材こそはやわらかいゴム製でしたが、形は四角だったり三角だったり、まさに積み木のそれだったと記憶しています。
 そのうちのひとつに、私は乗りました。そして、それを滑り台に見立てて滑って遊んでいたのです。
 すいー、すいー、と。
 しかしいつのまにか、滑り台の終着点は体育館の壁。私は頭から思い切り壁に激突します。
 それはそれは、痛かったでしょう。イマイチ覚えていませんが。けれど、私は泣きませんでした。そんなことにめげずに、さぁ遊ぼうとやる気満々です。
しかし周りの子達の様子がなにやらおかしい。みんながこちらのことを見ています。
 おそらくその中の誰かが、「先生のところへ行ってきな」というようなことを言ったのでしょう。私は先生のところへ向かいました。
 すると先生は私を見てとても驚きました。それもそのはず。鏡に映った私は、額を血まみれにしていたのです。
 それを見た私はショックで大泣き。痛みでは泣かなかったことが、今でも少し不思議です。
 その後、病院で額を縫いました。病院の先生の顔が私をのぞきこんでいる記憶はあるのですが、ほかの記憶はイマイチです。
 全身麻酔ではなかったはずなのですが、うーん、思い出せない。
 今度、母親に聞いてみることにしましょう。

 ふたつめの経験、こちらが本命です。

 実は実は、私、「幼稚園中退」なんです。

 原因は父親の仕事の関係で、引っ越したことです。今でこそ、多少改善されたのですが、当時の私は極度の人見知りでした。
 小学校に行くのですら、できれば行きたくない、家にいたいとごねていたほどです。そう考えると、今の「何も考えたくない、好きなことだけして、誰か心を癒されるような人と暮らしたい」という怠惰な夢の一端は、この時点で見えていたのかもしれません。

 それで、引越しをした私なのですが、当然あたらしい土地なので知り合いは誰一人と居ません。強いて言うのなら、一階に暮らしていた祖父母だけです(引越し先が祖父母の家で、後に二世帯住宅化)。
 そうなると、「幼稚園に行きたくない!」となるのも、わかっていただけるのではないでしょうか。
 たしか年中で引越しをしたので、一年ほど私は若い若いニートでした。

 そしてそれから十数年。
 私は押入れを母や姉と整理していました。すると出てくる思い出の数々。
私と姉の小学校の作文や工作品。
 習字の紙や修学旅行のしおり。
 その中に一つ「あら?」と思うものが。
 それは、幼稚園の先生からのメッセージでした。
 内容は、○○○くんはどうたらこうたらな子で、先生もとてもなんたらでした。というようなもの。そして、最後にある一言が。

「別の幼稚園に行っても、友達をたくさん作って楽しんでください」

 あぁ、先生。私は友達はおろか、幼稚園に行ってすらいないのですよ……。


作品名:ぶろぐがわり 作家名:たららんち