エッセイ集:コオロギの素揚げ
え〜っ、まだまだこれからやん。よしっ、百歳をめざすぞっ
長年にわたっての日課、ランニングを、秋に卒業した。
筋肉が落ちてきていたので、長い距離の終盤には足が上がっていなかった。つまり、ストライドが伸びないからスピードは出ないし、地面のなんでもない出っぱりにつま先を引っ掛けて転んだこと数回。みっともないったらありゃしない。膝に負担もかかる。
要するに、ランニングは体に悪いのである。
そこで、ずっと早くから始めていた趣味のひとつ、ハイキングに戻ることにした。ほんとは登山、といきたいものだが、諸々の事情でしょっちゅう行ける訳ではないから、負荷を掛けて、近くにある五月山を毎日歩くことにした。標高315メートルの里山である。その日の気分と持ち時間によって、歩くルートを選ぶ。
毎回同じ人たちと顔を合わせているうちに、早朝登山会と “100回登山カード” の存在を教えてもらって、参加を始めた。
山を歩いている人は、男性が圧倒的に多い。見たところ、70歳を超えていそうな人が多い。
驚いたことに、6700回を超えている人がいる。退職してから始めたのであろうが、何年かかっているのだろう。
さらに驚いたのは・・・。最高齢は、いくつだと思う?
年齢を教えられるまで70歳代だろうと思っていた人が、なんと、96歳。
娘さんが付き添って歩いておられるのだが、付き添いといっても距離をおいて、ゆっくりと歩いておられる。杖をつきながら、急斜面は休み休み、緩斜面はええペースで、自然の変化や鳥のさえずりを楽しみながらの安定した歩き方である。
そこで、目標が出来た。
最高齢記録を、私が作るぞっ。
三浦雄一郎氏もすごいが、他にも、何かを継続している100歳前後の人々がいて、後に続く者にとっては、心強い目標となっている――やる気になったらできるのんちゃうん、という思いだけでも・・・。
まだ20回程度で、年齢もまだまだ及ばない私。
無論以前から何度も歩き、時にはハイキングコースを駆け抜けていたのだが、こうしていろんな人と出会い、時にはおしゃべりを楽しみながら歩いていると、気付かなかった事がいっぱいあったのだと、気付かされた。
週一回程度は、ゴールデンレトリバーを連れて行っている。彼にも登山カードを作った。連れて行かない日には、「今日はワンちゃんは?」と聞かれるほどになっている。もう小太郎(作品用の名)も、山仲間である。
家から往復2時間程度。犬を連れていると30分は余計にかかるし、下りなどでもし引っ張られたら踏ん張れる自信がないし、山道のすれ違い時に神経を使うし。やはり、週一でいい。
時々、電車で中山連山(最高峰478メートル)にも通っている。アップダウンがそこそこあって、午前中に終わらせられるから良い。
甲斐あって、臀部が引き締まってきたような、気がする。
2015年12月11日
作品名:エッセイ集:コオロギの素揚げ 作家名:健忘真実