エッセイ集:コオロギの素揚げ
五月山季節語り―招福 金運 のお守りです―
山の恵みは、果実や山菜ばかりではない。
周囲に目を配って歩いていると、偶然とはいえ、鳥の巣、シカの角や動物の骨、おそらくシカかイノシシの大腿部の骨、だろうものを見つけることがある。そして、ヘビの脱け殻を。放っておけばいいのかもしれないが、見つけると嬉しくなって、拾ってしまう。
今までは、それらを人(師匠)にあげていた。“五月山の自然”における展示品に使いたい、と言われていたからである。
ひと通りのものは拾ったと思う。それでも性懲りもなく今回拾ったのは、ヘビの脱け殻。
残念なことに全身がきれいに残っているのでなく、破れ、汚れていた。しかも小さい。おそらく、昨秋に孵化した幼体に違いない。
師匠は、破れてるようなんはいらん、と言う。
「ヘビの脱け殻、財布に入れといたらお金が貯まる言うし、欲しい人もいるんちゃうやろか」
と進言すると、ほんならクラフト展に出してみたら、とのお言葉。
クラフト展とは、師匠が所属するボランティアグループが、活動の紹介を兼ねて催している。
そのメンバーたちが里山をテーマに作ったいろいろな作品、山や花の絵・竹炭・蔓で作った敷物や入れ物・アクセサリー・竹で作った知恵の輪などを展示し、販売しているのである。
五月山登り口にある緑のセンターで、4月初旬の8日間が当てられていた。
ヘビの脱け殻を洗い、乾燥させ、小さく切って小袋に入れると、8袋できた。
ネットで調べると、通販で1,500円前後の値が付いている。遊びのつもりなので、ひとつ100円とした。能書きを作って、初日に持って行くと、置いておくスペースをもらえた。
師匠は、そこまですると思っていなかったそうである。長いままの脱け殻を置いておくだけと思っていたそうだ。
おそらく、欲望をくすぐる能書きが利いたのであろう。ホラ文は得意だから。7袋が売れたのである。
能書きの内容は、ここでは秘密にしておこう。
そう、ヘビの脱け殻が、私にとっての金ウン、をもたらしたのであった。
ついでながら、今年の2月に拾って師匠に差し上げた、シカの角、も展示されていた。4つに枝分かれし、ずっしりと重いシカの角である。
気をよくした私は、来年に向け、ヘビの脱け殻とシカの角を集めることを宣言した。
シカの角は、アクセサリーやインテリアに加工でき、犬のおもちゃ・おやつとして売っていることを知ってしまったからである。
2018年 4月13日
作品名:エッセイ集:コオロギの素揚げ 作家名:健忘真実