エッセイ集:コオロギの素揚げ
山崎豊子展。そして『あさが来た』の広岡浅子と五代友厚展
奈良県に住んでいる友人に、《山崎豊子展があるが、興味ありやなしや》というメールを送った。
《○○ちゃんに会いたいし山崎豊子はすごいと思うし出かけましょう》との返信。
《大阪商工会議所の五代はんの像が見たい》、《ついて行くから》と後日受信した。
五代はんの像? 大阪商工会議所?
検索すると、五代友厚の像があるのは大阪商工会議所ではなく、大阪証券取引所だった。
さて、約束の1月22日。
高島屋で開催された山崎豊子展で、彼女の細かく読みづらい文字の取材ノートやカセットテープの多さに圧倒された。
ほとんどの作品が映画やドラマになっているが、演じる俳優の写真が、これまた懐かしくもあった。どちらかといえば、俳優の写真に見入ってしまったといえる。
掲示されている説明文を読むのが目に酷なので早々に退出し、55年間助手を務めた野上孝子氏の『山崎豊子先生の素顔』を買って、家でじっくり読むことにした。
昼食を味わった後、地下鉄で移動し “大阪企業家ミュージアム” へ。
「テレビ見てない○○ちゃんは知らんやろけど、『あさが来た』で五代様人気、すごいねんで」
「像があるんは大阪証券取引所で、大阪商工会議所には何があるか知らんけど近くに大阪企業家ミュージアムがあるから、そこ行こ。前から行きたかってん」
有無を言わさず、前から興味のあった、100人の企業家の資料を収集・展示しているという、大阪企業家ミュージアムに行くことに決めたのである。
大阪企業家ミュージアムでは、五代友厚の特別展が開催されていた。思っていた以上の人出で、その入り口で展示されている広岡浅子の写真や自筆文書の前は人だかりとなっていた。
「やっぱりきつい顔しとるなぁ。気ぃ強うないとできんわなぁ」
「ちょっとおっさん、ちゃうやろ。この時代の人は皆おんなじ表情しとるやろ。口端を下げて、カメラのレンズをみつめると、そうなんねん。ニコッとしたり、Vサインする人は、この時代にはおらんわな」
私は、心の中で毒づいた。
五代友厚の胸像があった。
「像があるやん、良かったね」
後日新聞紙上で、五代友厚の大きな立像の前で記念撮影している女性の姿入りで、その人気ぶりを報道していた。
なるほど、これかぁ・・・あの胸像では満足できんかったんやろな、ほんで返事がなかったんやろか、と気付いたのであった。
加島銀行の支店が当時の外観のまま、私が住む阪急池田駅から徒歩5分のところにあって、見学に来る人が毎日数人あるということを、付け加えておこう。
2016年 2月20日
作品名:エッセイ集:コオロギの素揚げ 作家名:健忘真実