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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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風、彼方より舞い戻る 神末家綺談8

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魂を呼ぶもの



朝が来る。この村特有の朝の匂いで目が覚める。都会にはない、身体の底を冷やすような透明な匂い。

(久しぶりだなあ・・・)

小夏は布団から起き上がり、さっさと顔を洗って着替える。まだ外は薄暗いが、体中に染み入るような心地よい空気に朝を感じる。

久しぶりに家の周辺を巡る。都会に飛び出して二年。こんなに静かだったかな、と静まり返った山を見上げる。都会の朝は、人工的な音がうるさい。ここはそれがない。静寂。しかし耳をすませば、木々の葉が揺れる音や、小さな生き物が奏でる命のリズムがきちんと流れ込んでくるのだった。

「おはよう、早起きだね」

声をかけられて驚く。山の鳥居へと抜ける雑木林で、穂積に出会った。和服姿の大伯父は、穏やかに笑っている。

「おはようございます。大伯父様こそ、早いね」
「年寄りだからなあ」

隣り合って並びながら、色づく山の裾を歩く。秋も終わるのか。燃えるような紅葉のあとは、一面真っ白な世界がやってくる。定めのように。

「・・・昨夜、瑞のことを伊吹と話したんだけど・・・どこか行っちゃうんじゃないかと随分沈んでいたの」

弟は、瑞の存在を慈しみ、その出自も運命も、己自身の罪もひっくるめて、愛しているのだと思う。家族や友だちとは違うつながり方を知って、失うことを何よりも畏れている。

「瑞の様子がおかしいって言ってた」
「・・・恋しい相手が目の前で自分を呼んでいるのに、応えてやることも、手を伸ばすこともできない。そうなってもおまえは、冷静でいられるだろうか」

遠い昔をみやるような眼差しを山へ向けて、穂積が尋ねる。己自身へ問うような口調だった。