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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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風、彼方より舞い戻る 神末家綺談8

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「・・・あたしは、引き裂かれた己の半身が自分を呼んでいれば、そこへ飛んでいきたいと思う。今すぐにでも」

瑞はそんな思いに駆られているのだろう。かつて引き裂かれた妹。その魂はいまもあの山に縛られている。

「神となった妹のもとに、瑞は近づけない。一度は闇に堕ちた呪われし存在であるからだ」
「・・・・・・」
「こんなに近くにいながら、触れることも出来ぬまま、千年以上もの時だけが流れている」

途方もない。瑞の心情を正確に汲み取ることなど、それほどまでに悲壮な別れを経験したことのない小夏に、できるはずもない。

「あたしも彼女に呼ばれている気がするの」
「それでここへ戻ったのか」
「うん。きっと、何かの変調なんだと思う。伊吹が言ってた。封じられていたものを暴いたことで、神末の血に連なるものたちに変化が起きているのじゃないないかって」

その変化の渦中にあるのが、みずはめの存在だ。おそらく彼女の意思が、瑞を呼び、小夏を呼び、伊吹を焦らせているのだ。

「・・・大伯父様は、どう感じているの?」

神の婿たるこの人物が、いま一番状況を把握しているはずなのだ。いつものように静かに佇む彼からは、動揺や焦りは見て取れない。それでも、おそらく、変化をより一番感じているのはこのお役目に違いない。彼の魂の半分は、花嫁であるみずはめとも繋がっているのだから。

「時が、来たんだろうな」

風が吹き抜けていく。

「わたしたちが、初代様に血肉をお返しする時が」

初代。食われて池に投げ込まれた青年。すべてを呪い、焼き尽くし、愛するものによって封じられ、その魂を使役される式神。