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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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風、彼方より舞い戻る 神末家綺談8

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「ごめん、絢世さん・・・」
「どうして謝るの?わたしはいつでも、伊吹さんの、味方でいたいの」
「ごめんね、ごめん・・・」

きつく目を閉じた伊吹が、ごめんと繰り返しながら両手で絢世の手を握った。

「逃げていいはずが、ないのに。俺は・・・どうかしてた。きみの、優しさに甘えて・・・」
「・・・ち、がう、ちがいます。わたしは、」

一人で苦しまないでほしい。泣かないでほしい。

「わたし、伊吹さんが、泣いてるの、見たら、」
「うん・・・」
「つ、つらくって、」

だって、好きなひとだから。
笑っている顔が好きだから。
伊吹が笑ってくれるなら、自分にできることなら喜んでやる。それなのに、何もできない。悔しい。悔しくて、涙が溢れてきた。結局自分に出来ることなんてない。悔しくてたまらない。

「い、伊吹さんが泣くの、嫌なんだもん・・・!」
「うん・・・」
「なんでいっつもいっつも、伊吹さんばっかりっ・・・泣くの、苦しむのっ・・・そんなお役目なら、なくなっちゃえば、いい・・・!」
「うん・・・」
「なんでわたしは、いっつもいっつも・・・伊吹さんが泣くのを、苦しむのを、見ているだけなのっ・・・悔しい、守れないのが、悔しい・・・!」

ぎゅっと、握られる手に力が込められるのがわかった。熱を取り戻した伊吹の手。

「・・・そうだったのか」

嗚咽が止まらない絢世に、優しい声が降ってくる。