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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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風、彼方より舞い戻る 神末家綺談8

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ものすごく突然だった。瑞と二人して玄関をくぐると、ボストンバッグを足元においた姉が、ブーツを脱いでいるところに出くわした。

「ね、姉ちゃん!?」
「あれ、小夏(こなつ)だ」

姉の小夏が戻っていた。染めた長い髪を毛先だけ巻き、短いスカートに落ち着いた色合いのセーターを合わせている。足が長く、中学のときに170センチを超えた彼女はモデルのような体型を維持している。美人だが中身は清香に似ている、というのは瑞の言だ。

「ただいま、元気そうだね二人とも」
「この子はもう、帰るなら一言言えば迎えにいったのに・・・」
「ごめんね、ばあちゃん。思い立ったら、連絡するのも面倒になっちゃって」

小夏は昔からそういうところがある。思い立ったら即行動なのだ。都会の高校に入学を決め、入る寮の手続きまで迷うことなくあっという間に済ませてしまうのだから、すごい。

「お帰り、小夏」

奥から穂積が現れ、小夏を迎えた。屈んでいた小夏は立ち上がると、丁寧に頭を下げる。

「ただいま戻りました、大伯父様。急にごめんなさい。みんなの顔、見たくなっちゃったの」
「ここはおまえの家なんだから、好きなときに戻っておいで。さあ、みんなでご飯にしようか。久しぶりに賑やかだな」
「そうですね。今夜は小夏の好きなお鍋だからちょうどよかったこと」

佐里も穂積も嬉しそうだ。伊吹と小夏は佐里にとっての孫にあたるが、穂積にとっては兄妹の孫――姪孫にあたる。それでも家族だ。家族が揃えば嬉しいもので、離れている分喜びも大きいようだった。

「・・・ほんと急にどうしたの?」

荷物とおみやげを持つのを手伝いながら、伊吹は小夏に尋ねた。都会で青春を謳歌している姉が、ここに戻ってくるのは正月くらいのものなのだ。彼女もまた世継ぎを生むという使命を負っている。だからそれまでは自由にさせてほしいと言い、家を出ている身なのだった。