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猫の髭は七つの夢をみる

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真ん丸じゃない月が 綺麗に見えた。想い出の夢は 夜空の星にでもなったかな。
ちぇっ、なに感傷的になっているんだ…… らしくないな。 

「にゃぁ」

ベランダに はらり。
なんと オレの自慢の髭が三本 抜け落ちた。
オレは 焦る。舌で拾い集めた。夢の髭だ、せめて食べてしまおう。
あ! 
突然に吹いた風が 髭を舞い上げた。目で追った時には 細く煌めきを見せて消え去ってしまった。
もう思い出せる夢の記憶はなかった。

あと揺れる自慢の髭は四本。大事にしなくてはいけない。
無駄な つまらない そんな夢は見たくないな。 ねえ お月さま どう思う?
お月さまは 何も応えてくれない…… オレは ベランダから出て棲み処へと帰った。

翌日、信じられないことが起こった。
お日様があるうち オレは 公園や町のあちらこちらを見て歩いた。そして、あのベランダにやって来ると 昨日のように 器に粒状のものが入っていたのだ。
食べていいのか? なんて考えはしなかった。コレはオレのものだ。そういう気がした。
しかし、待てよ。ほとんど食べてから気がついた。此処は 人の住処の中じゃないか?

ひらひらと揺れるカーテンの奥に感じる人の気配は 窓越しに感じたものと同じようだった。どんなやつか 気になり警戒した。気配が動くたび、脚を竦め いつでも走り去る体勢を作った。恐がり逃げるのではない。オレは 猫だぞ!
しかし、相手の人は どうやらオレを恐がっているようだ。こちらにやって来ない。

「にゃぁ」

ふふん。口猫えて(ほえて)おいたぞ。吠えては犬だって? だから口に猫さ。
これで恐がって こちらには来られないだろうな。

作品名:猫の髭は七つの夢をみる 作家名:甜茶