猫の髭は七つの夢をみる
この住処の人は、慈悲深いのか?
たぶん気まぐれだろうな。オレ、野良猫だから。
でも こんな夢ならいいじゃないか。
夢かぁ。
そうだ。夢みれば 叶うんだ。
この街で このテリトリーで夢を思い描いていこうかな。
オレのガラじゃないか。
可笑しいかい? 笑いたきゃ笑えばいい。
夢って 幾つ持っていいのだろう?
ひとつってのは 寂しいな。
それに ひとつの夢で満足するほど まだオレの生き様は終わっていない。
じゅうってのは 欲張りすぎかな。
ははぁーん これだ。
オレの自慢の その中でも飛びぬけて自慢の髭 七本。
ななつ。
これを オレの夢の数としよう。そうすれば きっと楽しくなるさ。
オレは、食べ終えた満足な腹をベランダの床につけ、すっかり暗くなった空を見上げた。
これから ななつの夢ってのは 神様だって『むしがいいぞ』というかもしれない。
オレが今まで過ごしてきた中で夢のような出来事といえば何だろう? その分も数に加えるとしても なかなか思い当たることは出てこないものだ。
作品名:猫の髭は七つの夢をみる 作家名:甜茶