猫の髭は七つの夢をみる
ずっとベランダで見ていた。
この二匹の仔猫が器のカリカリ食べ去った。その後にまた二匹上がってきた。仔猫は、遊びも楽しいのだろう。食べては、ベランダから下りて またやって来る。見ているだけで楽しい。でも、母猫のカノジョにしてみたら 毎日が大変だろうと思った。
チクワを食べたカノジョは、人の住処へと入って行った。体をグデーンと部屋で伸ばして寝転がって寝てた。
まさか! この仔猫たちのオヤジは……
そんな妄想を浮かべてしまったほどカノジョは 人の住処に居ついていたように思えた。どうも寝不足みたいだ。ひとりグッスリと眠りたかったんだろう。頑張っているね。
オレは、カノジョが休んでいる間、仔猫たちの様子を見ていた。零れたカリカリの食料も頂いた。旨いぞ。
どれくらい経ったのだろうか。
カノジョが目覚めて 毛並を寄せ合った。カノジョのニオイにほんのり母のニオイを感じた。『オレに頼ってくれよ』『大丈夫よ。でも ずっと仲良しでいてね』短い交流もオレには嬉しかった。
カノジョが帰って行く時に オレは驚いた。ベランダの下でカノジョがベランダから出てくるのを待っていたらしい二匹の小さな影。カノジョの後をついてチョロチョロ、ピョンピョンと帰って行く後ろ姿が幾重にも見えた。
感激で オレの目が潤んでいた所為じゃない。それにオレは泣いてない。
どうやら全部で六匹みたいだ。その六匹を棲み処から連れて来ているのか。
以前にカノジョらしき雌猫を見かけたときは たぶん棲み処に仔猫たちをおいてきて、人の住処でグデーンと寝ていたのかもしれない。子育ては大変なんだね。
カノジョは たくましいシングルマザーだな。
オレに 守るものができた。 これを夢が叶ったと思わなくてどうする。
作品名:猫の髭は七つの夢をみる 作家名:甜茶