そらのわすれもの5
5-2
昼間の職員室。
琴恵の机の側。
さっきから、竜也がオロオロと徘徊している。琴恵に学年だよりを渡すつもりが、無視をされ続けているのだ。
「風間先生。」
「…。」
無視。
「風間先生。」
「…。」
無視。
「ことぉ~?」
無視。
琴恵は、黙りを決め込んで、仕切りに宿題のノートを見ている。ノート以外の物を間違えても視界に入れない様、睨み付けるものだから、凄い形相だ。
「あの、プリントあるんだけど…。」
竜也が仕方なく、琴恵の顔の右側にプリントの束を持っていき、バサつかせると、琴恵は優雅に左側に身体を反らした。
けれども、いつまでも、そのままプリントを無視するわけにもいかず、琴恵は溜め息を吐くと、振り返り、竜也を睨み、あごで隣のデスクを指す。とばっちりを受けた隣の鈴木先生が『俺!?』と言った顔をし、助けを求めるような目で竜也を見た。
「琴、直接受け取ってくれないか。鈴木先生が困っているだろ?」
「…。」
琴恵は溜め息を吐くと手を伸ばし、プリントを受け取って、直ぐに机に向かった。