そらのわすれもの5
優太の何とも言えなさそうな顔を見ると知春は苦笑した。
「私じゃないよ。お父さんと知秋ちゃんが。」
少しだけ風が吹き、木の葉が掠れる音がする。犬を散歩している老人が公園の入口を横切った。
「ごめんね。優太君を元気付けたくて、ここに来たんだけど、暗い話になっちゃったね。」
「え…?」
優太はびっくりする。
「今日、優太君、何かあった?何か悩んでるよね…?」
「うわの空で、ごめん。」
優太が謝ると知春は小さく首を振った。
「私、他の人と違って経験が少ないけど、勘は比較的いいんだ。月は感情を操るらしいから、その影響なのかな。」
「…。」
優太は言葉が見付からず、黙り込んでしまう。知春は、非日常的な話をさも当たり前の様に話す。それが何とも言えない。
この底なしの明るさと代償に彼女は世間に対して、あまりにも無知すぎた。
「本当はね、ずっと気になっちゃっていて。だけど、能力はあまり使わないようにしようねって知秋ちゃんと決めていたから、黙ってたの。」
知春は言葉を続けた。
「知秋ちゃんと何かあったの?」
優太は今日起きたことを知春に話すことにした。