そらのわすれもの5
5-3
「あの後もあたしと一緒にいたんだな。」
日の光が降り注ぐ、購買に続く階段を降りながら、知秋は呟いた。結局、知秋のお昼ご飯を優太が出すことにしたので、二人は購買部に向かっていた。昨日の出来事を思い出し、知秋は罰が悪い顔をしている。
「ごめん、食事に誘われて、家で一緒に夕飯作ったんだ。俺が好きな食べ物にレバニラとか言わなかったら、こんな事態にはならなかった。」
「いや…。」
知秋は拳を握りしめた。
「まったく!!悪いのは知春だよ。あいつ、食べたくないから、全部あたしに食べさせようとして…!!」
お弁当箱にぎゅうぎゅうに詰まったレバニラを思い出して、知秋はほっぺを膨らませる。
その様子に拍子抜けして、優太は笑った。昨日から、知秋にどう接していいのか、悩んでいたのだ。
「何ニヤけてんだよ!」
知秋は思わず優太の服の裾をぐいっと引っ張る。優太はよろめいた。
「ごめん…やけに知春ちゃん、食べないなぁと思わなくも無かったんだけど…。」
「知ってたのかよ。」
知秋はがっくりと肩を落とし、憎々しげに優太を見た。
「まあまあ…じゃあ、今後の参考に嫌いな食べ物聞いておくよ。」
「わざと入れたりしないだろうなぁ…。」
知秋は警戒心たっぷりな顔で優太を見る。
「しない、しない。そんな事したら、またパン奢る羽目になっちゃうじゃないか。」
優太が明るくそう言うと、知秋は呆れた顔で優太を見てから、苦手な食べ物をあげ始めた。
「みょうが、しょうが…、セロリ?酢が強い物…、あと辛いものもダメかも…。シソも生では無理。あと…しいたけと…。」
知秋の右手の指がどんどん折られていく。これは地雷を踏まずに食事をする方が難しいかも知れないと優太は苦笑いをした。