そらのわすれもの5
「おい!内心馬鹿にしてないか!?」
「いやっ!そんな事ない!」
見事なまでの被害妄想だった。
「あと…炭酸。」
「ぷっ」
今度は知秋の被害妄想では無く、優太はあまりにも可愛らしい物が出てきたので、思わず笑ってしまった。
すかさず、知秋にどつかれる。
「…っっっ。ごめん!ごめん!」
優太はさっき知秋に攻撃された胸元を押さえ、弁解をする。結構痛い…。
「仕方ないじゃん…。竜也がなかなか大きくなるまで飲ませてくれなかったから、免疫がないんだよ。」
知秋は優太の前をずんずんと歩いた。
慌てて優太は追いかける。
「おい!ちょっと、待てよ!」
「もういいよ。別に食べなくても死なないし。」
知秋は一切振り返る素振りを見せない。
「馬鹿にしてないから!」
優太は慌てて教室に戻ろうとする知秋の腕を掴む。
ふわりと知秋の髪が揺れ、干したての布団から香るような日向の匂いがした。余程笑われたのが恥ずかしかったのか、知秋の顔は耳まで真っ赤だ。
「太陽の光があれば、あたしは人間じゃないから、最悪なんとかなるから。」
優太の腕を軽く退けると、髪を手ですきながら、目線を反らして言う。
優太はその仕草が悔しそうにしているように見えた。
「大丈夫じゃないだろ。人として暮らすんだろ?」
優太が聞くと、知秋は小さく頷いた。