そらのわすれもの5
「どうした?」
丁度友達と教室に入ってきた優太が知秋の机を覗いてきた。それくらい知秋の落胆ぶりは激しかった。優太の手には購買で買ってきたパンの袋がぶら下がっている。
「知秋ちゃんが何故か嫌いな食べ物をお弁当に入れて、悲鳴をあげているの…。」
美紗が絶句している知秋の変わりに返答した。
「…アップルパイ…。」
知秋はお箸を机に置くと、お弁当箱の蓋を締めた。
「?」
美紗、優太、その友達御一行が心配そうに知秋を見る。動きがとにかくヤバイ。
「竜也がアップルパイを持っていたから、貰ってくる…。ちょっとポケットサイズだった気もするけど。あれと太陽光さえあればいける気がする…。」
ふらっと知秋は机から立ち上がるとドアの方へ歩いて行った。
「それ知秋ちゃん貰えるの!?というか、太陽光って何!?何でレバニラ詰めてきたの?」
美紗は慌てて、机から立ち、知秋に詰め寄った。
「てかさ、お前、親父と折り合いが悪くて、離れて暮らしているんだよなぁ!頼っちゃ駄目だろ!?」
優太の隣にいたクラスメイト達も知秋を慌てて追いかけた。
奇妙な光景だった。
知秋は、ガラッと教室のドアを開ける。
「食えないもん…。仕方ないじゃん。次の時間体育だし、明らかにダウンするの目に見えてるじゃん。」
悲壮感が漂っていた。
今にも出ていきそうな知秋の腕を優太が引っ張った。
「ごめん。それ、俺のせいだ。」
皆、一斉に優太の方を見た。