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未花月はるかぜ
未花月はるかぜ
novelistID. 43462
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そらのわすれもの5

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訝しげに、琴恵はそれを見た。
「ちぃの分。受け取って貰えなかった。」

知秋の分らしかった。
しかも、断られたらしい…。

「…。」

断るという選択肢があったのか…。
琴恵は激しく自己嫌悪に陥った。自分の滑稽さ加減が悔しくて仕方がない。

普段ならば、もっと考えて動けるのに。

琴恵は、竜也を相手にする時、どうしても調子が狂いやすかった。流し台のタオルで手を拭いて、アップルパイを乱暴に受け取る。

「あっ、ただ…。」
竜也は申し訳なさそうな顔をした。

「知秋は、香りの強い物は嫌いだから、そっちには寧ろシナモンが入ってない。琴には、物足りないかも。そっちを先に食べた方がいいかも知れない。」
「ふーん…。」

それを聞くと琴恵は一瞬だけ寂しそうな顔をして、シナモンの抜かれたアップルパイを眺める。

「そんなにシナモンが好きなのか?寧ろ、シナモンの缶をあげた方が良かった…?」
ひょいっと竜也が覗きこんできた。
「うるさい!」
本当に黙っていて欲しい。
これじゃあ、センチメンタルな気分にもなれないじゃないか。