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未花月はるかぜ
未花月はるかぜ
novelistID. 43462
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そらのわすれもの5

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スーパーなどにある半透明のビニール袋に青いシールが貼られている。

「知秋の件は悪かった。お前、母さんのアップルパイ、好きだったよな。作ったから、やるよ。お前、作れないだろ。」
「そんなもので帳消しになると思うわけ!?」
憎まれ口を叩きながらも、琴恵は乱暴にアップルパイを受け取る。
それを確認すると竜也は優しく笑いかけた。

「ちゃんと琴恵用にシナモン多目になってるから。」
あまりとかではなく、わざわざ作ってきたらしい…。
しかも、何だか嬉しそうな顔をしている。
琴恵は目眩がした。

こんなんで、気が紛れるわけないじゃないか。
こんなんで、許せるわけがないじゃないか。
でも、完全に戦意喪失してしまった。

「馬鹿らしい。」
アップルパイをポケットにしまい、流しに向かう。すっかりお茶は渋くなってしまったので、新しく茶葉を入れ替える。
竜也はそれを確認すると飄々と琴恵の後ろで湯飲みをトレーに乗せ始める。

これじゃ、竜也の思う壺だ。
琴恵は再度振り返り、竜也を睨もうとする。

「あっ…出来たら、こっちも貰ってくれないか?」
竜也はそう言うと、手に持っていた湯飲みを置き、更にもう1個アップルパイをポケットから出してきた。赤いシールが貼られていた。
「何?」
さっきから完全に竜也にペースを持っていかれてしまっている。