そらのわすれもの5
琴恵は、腰に手をあてて、竜也の顔の前で仕切りに人差し指を振る。
「琴の不健康はいつもの事じゃないか。それは精霊殺しの呪いによる影響だろ?人のせいにしないでくれないか。」
竜也は、琴恵のその態度に慌てる事も無く、煩わしそうにそっぽを向く。
その態度に、琴恵は更に我慢の限界を感じ、竜也に掴みかかった。弾みで竜也の頭が壁にぶつかり、ドンと大きな音がする。振動で食器がカチャカチャと鳴った。琴恵は、慌てて廊下に繋がる扉に目をやったが、直ぐに向き直った。
「体質だって言ってるでしょ。変な言い掛かりは辞めて…。」
竜也は、押さえつけられて、身動きが取れない。琴恵の方が力がないと言っても、数センチ背が高いので、かなりの威圧感だ。けれども、余裕な顔をしている。昨日、あんなにも壁に身体を打ちうけられたのに、まるで、相手が攻撃くる心配をしていない。
「事実じゃないか。琴は、小さい時から、成績は良かったけど、すぐに体調悪くして、出席日数はギリギリだったじゃないか。でかい割には身体は軽いし。」
竜也は溜め息を吐き、軽く琴恵の身体を押して、距離を取った。
「ちょっ。」
琴恵は意表を突かれて、よろめいた。体制を整えると再び竜也の方を睨み付け、平手を打とうとした。
「どうぞ。」
しかし、次の動きに琴恵が動くことはなかった。
竜也がポケットからビニールで包まれた物を取りだし、琴恵の胸元に差し出しのだのだ。それを目にすると琴恵は黙り混む。