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情熱のアッパカパー要塞

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 「学問の無い、お前には判らないだろうな。今、コモンでは社会が急激に変化しているのだ。まあ俺の知識でも、そのぐらいしか判らないが。変化させようとしている連中は、それを進歩と呼んでいる」
 マグギャランは言った。
「それぐらい、俺だって判っているよ。携帯電話が使えたり、テレビが出来たり。色々在るのは誰だって判っているよ」
 スカイは言った。
 「物事には洞察する深さが在るのだ、お前の理解より、俺は深い洞察をしているのだ」
 マグギャランは言った。



ロード・イジア要塞へ着いた、スカイ達は、豪華な金光りする複雑な模様のソファが幾つも並べられた応接室に通されていた。そこにはスカイ達も含めて四つのパーティが集まっていた。少し遅れてカーマイン団が入ってきた。そして五つのパーティは揃った。
 スカイは集まったパーティを観察していた。
「あれは、一族で冒険屋をやっているボンドネード・ファミリーだ。あの鎧を着た戦士の顔は冒険ジャーナルで見たことがある。確か、ボンドネード・ファミリーの現在の当主の2番目の弟で三男のリート・ボンドネードだ」
 スカイは集まった冒険屋のパーティを見ながら言った。ボンドネード・ファミリーのリーダーらしい四十台ぐらいの男の戦士リート・ボンドネードが鎧を着て腰に剣を差して盾を背負っていた。武器の剣は両手でも片手でも使えるようだった。それと四十台ぐらいのエターナルの黒い外套を羽織った女の魔術師が居た。それに長弓を矢筒と一緒に背負った気の強そうな顔の17、8歳ぐらいのスカウトっぽい女に、眼鏡を掛けた二十台ぐらいの男に、17、8ぐらいの男が居た。
 「なるほど。確かに顔は似ていると言えば似ているな」
マグギャランは言った。
 「いや、あんまり似ていないぞ」
 スカイは言った。見た感じ、あんまり似ていなかった。
「うむ、確かに似ていないな」
 どうも、さっきからマグギャランは上の空だった。
スカイはマグギャランの視線の先をたぐって見てみた。
 やっぱりマグギャランのヤツはカーマインを見ているようだった。
スカイは、苛立った。
「おい、真面目にやれよマグギャラン。カーマインばかり見ているなよ。俺達は、ここにいるコイツラと仕事の取り合いをしているんだよ。今のうちに、しっかりと奴等を観察して置くんだよ。そして特技とか判ったら記憶をしておく。そして奴等の考えの先を読んで俺達が仕事を成功させなければならないんだよ。だから、カーマインばかり見ているんじゃねぇよ」
スカイは言った。
 マグギャランは面食らった顔をした。
「し、失礼な事を言うなスカイ。俺はカーマイン女卿を見てなど居ないぞ」
図星のようだった。露骨にうろたえていた。
コイツの思考パターンは、それ程難しくは無いのだ。
スカイの目の前にロボットが、歩いてやって来た。スカイの身長よりも背が高い。2メートル近くあるロボットだった。スカイが前に雑誌で見たことのあるロボットと全く同じだった。
 「ペロピン。挨拶して」
女の声が背後からした。
「ハジメマシテ。ワタシハ、ロボット、ペロピン、デス」
ロボットから声が聞こえはじめた。ロボットは腰を曲げてコロンに挨拶をした。
「あなた、魔術師でしょ。どこの学派なの?」
 コロンの前にロボットの後から現れた金髪に眼鏡の女がやって来て言った。金髪を二つに分けてピンク色の丈が短い服の女だった。顔にはソバカスが残っていた。だが、酷いデザインの服だったピカピカの光沢があって背中に羽まで付いていた。
「…四大元素「炎の門」学派」
 コロンは顔を真っ赤にしてフラフラしながら言った。コロンは人見知りが激しいのだ。
ピンク色の服の女は右手の人差し指を顎に当てて腕を組んで上を向いて考えていた。
「うーん。初めて聞く学派ね。私は「鋼鉄の歯車」学派光明派のリッカ・グルンだから。最近はフラクターの科学技術の進展で「鋼鉄の歯車」学派が有名になったけれど。ウチの家は大昔から「鋼鉄の歯車」学派の魔術師をやっている。筋金入りの「鋼鉄の歯車」学派なのよ。この子は先祖代々受け継いでいるロボットのペロピン。可愛いでしょう」
 リッカはロボットの腕に、ぶら下がった。
ロボットが持ち上げて、リッカの足は宙に浮いた。
「リッカ。こいつらは俺達と競合する敵だぞ。余り話しかけるな」
鞘を被せた槍を担いだ。背がマグギャランと同じぐらいの百八十?より少し高めの男が仏帳面面で、やって来た。イマイチ、印象の薄い男だった。
 「ウチのリーダーは心が狭いのよ騎士なのに」
リッカが言った。
「だから余計な事を言うなと言っているだろう。魔術師のくせに、お前は、お喋り過ぎる」
 スカイは喋っている男の顔と名前が一致した。冒険ジャーナルに「ロボット使いの冒険家」と言う記事の特集で二年前に載っていた「灼熱の翼」というパーティのリーダー、ソークスだった。
 確か、十三年前の大武術大会で優勝したらしかった。スカイは、その頃一歳だから、よく知らないが。あんまり強そうには見えなかった。だが、ロボットに、ついて載っていた記事では、このロボットと一緒に写っていた筈の金髪の男が居なかった。
「お前は、ミドルン王国の騎士ソークスだな」
マグギャランは、いつになく真面目な顔と声で言った。
 「そうだ」
ソークスは答えた。
「確か、お前は、ミドルン王国で開催された大武術大会のトーナメントで優勝した経歴があったな」
マグギャランは押し殺した声で言った。
 マグギャランも知っているようだった。
 「ああ22歳の時だ金メダルとトロフィーと勲章を貰った。俺の実家に置いてある」
「確かユニコーン流槍術で優勝したらしいな」
 マグギャランは言った。
 「ああ、そうだ。それがどうした」
ソークスは言った。
「俺もユニコーン流を使うのだ。同門の先輩として御教授を願いたい」
 マグギャランは椅子から立ち上がって頭を下げて言った。てっきり奴の真面目な様子から果たし合いでも申し込むのかと思ったスカイはガクッときた。
 「同門か、よし、良いだろう」
 ソークスは言った。
「…すごいでしょ、この子はね、レーザー砲を装備していて。半永久機関を動力にして空も飛べるのよ。ペロピン。ソークスにチョップ」
 コロンと一方的に喋っていたリッカが言った。
 ロボットがソークスにチョップをした。
 ソークスは前を向いたまま頭の後に抱えていた槍で受けた。
「リッカ。ペロピンで遊ぶのは止めろ。直撃したら普通の人間は即死するんだぞ」
 ソークスは言った。
「ダイジョウブ、デス。コレハ、ギャグト、ワカッテ、イマス」
ペロピンは言った。
「ペロピンは、こう言っているよ。ペロピンは頭が良いのよ。戦闘モードになった時以外は人を傷つけないように作られているのよ」
 リッカは言った。
 「リッカお前は、黙っていろ」
 ソークスは言った。
「えーっ、つまんない。魔術師の女友達が欲しいのよ」
リッカはコロンの腕に抱きついて言った。
コロンは辺りを見て顔を赤くして困った顔をしていた。