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情熱のアッパカパー要塞

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 赤い詰め襟に金モールの軍服を着た斧槍や長刀を持った兵士達が走ってやって来た。
 「見りゃ判るだろう。決闘だ」
 ローサルは言った。
 「手出しは無用だ」
 カーマインは言った。
隊長らしい男が肩で息をしながら前に出てきてローサルとカーマインを真面目な顔で止めに入った。
 「皆さんはロード・イジアが雇った冒険屋さんでしょ、事は内密に進めなくてはならないのですから、目立つことはしないで下さい。我々は城門の衛兵から連絡を受けて迎えに来たのですよ。決闘が始まったって途中で連絡が入ってきて私は、慌てて部下共々走ってきたのです」
 軍服の男が黒い携帯を見せて荒い息で言った。部下達も荒い息をしていた。
「水が差されたな。つまんねぇな」
 ローサルは面白くなさそうな顔をして剣を肩に担いだ。
 「この立ち合いは預けて置くぞ。後日勝負を付ける。カーマイン家の名誉のために」
カーマインは重々しい顔で剣を鞘に収めた。
 「俺は記憶力が悪いんだ、明日になったら忘れているぜ」
 ローサルも剣を鞘に収めた。
 「皆さん、早く、ロード・イジア要塞へ来て下さい。私達が先導します。あなた達3組で最後です。ボンドネード・ファミリーと灼熱の翼は既に要塞に来ています」
 軍服の兵士達が敬礼をして言った。
「私達は、馬に乗って後から行きます」
 カーマインが言った。
「俺達は勝手に行かせてもらうぜ。案内なんか必要ねぇよ。あんだけデカイ要塞だ。ガキでも辿り着けら」
 ローサルは顎をしゃくって要塞を指しながら言った。
 そして後の仲間達に手で合図をした。残りの3人は、仲間達の方へ歩いてきたローサルと一緒になって歩いていった。ガムを膨らませた男が後を向いたまま何時までも、こっちの方を見ていた。完全に監視をしている目だった。
 どうやらスカイ達やカーマイン団の騙し討ちを警戒している様だった。
「W&M事務所の方達ですね」
 赤い軍服を着た兵隊がスカイ達に敬礼して言った。
「おう、そうだよ」
 スカイは答えた。
 「私達の後に付いてロード・イジア要塞へ来て下さい」
 兵隊は言った。
「スカイ、素直に付いて行った方が良いぞ」
 マグギャランは、辺りを気にしながら言った。
「ああ、そうだな」
 特に反対する理由も無くスカイは言った。
 「それでは案内をさせて戴きます」
 兵士が敬礼をして言った。
 そしてスカイ達は兵士達の後を付いて歩いていった。



「ローサル。何故、総攻撃でカーマイン団を潰さなかった。エターナルの魔術師を殺すチャンスがパーだ」
 シャールが神経質そうに眼鏡を外してレンズを布で拭きながらローサルに言った。
 「他のパーティが見ていただろう。俺達の手の内を見せる訳にはいかないさ」
ローサルは言った。
 「戦士二人に女魔術師一人のパーティか?確か名前はW&M事務所だ」
 シャールが言った。 
「ああ、そうだ」
ローサルは言った。
「ありゃ、一人は騎士だよローサル。鎧は着けていないが。貴族臭さがプンプンしやがる」
 ソフーズが色々な味のガムを混ぜた風船ガムを膨らませながら面白く無さそうな顔で言った。
「違いねぇ」
 ローサルは言った。確かにボンボン臭さが抜けない気に入らない野郎だった。
「あの女魔術師は同門だ。俺の「雷光の裁定」学派が使う杖と全く同じ杖を持っている」
シャールは自分の持っている長い杖を見せて言った。
 「そんなに珍しいのか、その杖が?」
 ソフーズがシャールの持っている杖を見て言った。
「ああ、珍しいな。「雷光の裁定」学派はミドルンとヒマージでは、権力者達から嫌われる学派だからな。好きでなるヤツは少ない学派だ。だが同じ杖を使う敵の学派も在る。もし「猛き炎」だったら殺さなければならないだろう。「雷光の裁定」の名誉の為に。エターナル狩りと同じだ」
シャールは言った。
「だが、オマエ達は気が付いていなかったようだな。俺はビンビン感じていたぜ。もう一つ、どこからか、覗いている奴が居た。多分、ボンドネード・ファミリーか灼熱の翼だ。確証は無いがな」
ローサルは言った。
「私は感づいていましたよ」
 ターイが笑顔のまま言った。
「俺もだ」
 ソフーズが言った。
 「何だ、気が付いていないと思っていたぜ。かなり上手く気配を消していやがった。だがビンビン濃厚な殺気を放ってもいた。ありゃ、まともな神経を持った奴じゃ無いな」
 ローサルが言った。
気配を消していたのと、同時に殺気を出していた。俺達を試していた事は間違いなかった。そこでローサルは気が付かないフリをした。偏執狂に気に入られるのも嫌な物だった。
 「まあ、俺も本当の所は錯覚かと思ったぐらいだったからな。お前の勘の良さには負けるよ」
 ソフーズは口に更にガムを放り込みながら言った。マスカット味のガムの包みだった。
 「私もです。殺気と気配を消しているのが、ごちゃ混ぜで怪訝に思っていたんですよ」
ターイが肩をすくめて言った。
 「気が付いていなかったは俺だけか。お前達に比べると、どうしても俺は気配を読む能力が劣るな」
 シャールは溜息を付きながら言った。
「心配するなよ。魔術師の、お前は、雷を落としてくれれば良いんだよ。俺達は、お前の背中を守ってやるぜ」
 ソフーズが言った。
 「俺達は仲間だ」
 ローサルは言った。
 この四人で行けるところまで登って行く、命を預け合った仲間達だった。



ロード・イジア要塞へは一本のメインストリートで繋がっているようだった。坂がそこら中に在って、道が曲がりくねっているにしてもだ。
 スカイ達3人は五人の兵士の後を歩いていた。
「スカイ。ローサルが、お前の未来の姿だとすると、もう少し、俺は、お前を教育せねばならんのかもしれないな。レディに失礼な事を言ってはいかんのだ」
 マグギャランが歩きながら、さっきからずっとスカイに説教のような事を言っていた。
「だから言わねぇよ」
 スカイは言った。
マグギャランがスカイに説教臭い事を言っている時は、大概女の事を考えている時だった。どうやら奴の恋の病が始まってしまったようだった。
 「いや、お前は失礼な事を言いかねん奴だ。もし、お前が、二十歳になったときローサルのMk?とならないように、俺がしっかりと教育をせねばならないだろう」
 マグギャランは言った。
「大体、あんな、コエー刃物女に、何で、俺が興味を持たなくちゃならないんだよ。あんな奴、女じゃねぇよ」
確かに、カーマインは絶世の美女の方に入る事は間違いなかったがスカイの女性の興味とは別のベクトルだった。
「カーマイン女卿は、獰猛な議会に領土のカーマイン大公国を追われた可哀想な薄幸の美女で貴婦人なのだ。俺は胸が痛んで、涙が、ちょちょ切れる様な状態だ」
マグギャランは目頭を押さえて首を振って言った。
「何だよ、議会とか言っても意味が通じねぇよ。悪いことでもやっていたから追い出されたんじゃねぇのかよ」
 スカイは言った。