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情熱のアッパカパー要塞

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 酔っぱらったコロンも杖に寄りかかったままフラついてやってきて言った。
 「もう二度とアッパカパー要塞に帰ってくるな!アッパカパー伯爵領へ入ることも禁止だ!」
アッパカパー伯爵の叫び声が携帯電話から聞こえてきた。
 「全然、構いません!わたくしは小イジアと結婚して、両家の間に続く怨恨の歴史を終わらせてみせます!」
ポロロンは高らかと宣言した。
 いいのかよ、本当に、オイ。
 スカイは気まずい展開で、顔から血の気が引いていった。
「カーマイン女卿、お手数を煩わせて済まなかった。もう娘は勘当する事を決定した。イジア国へでも、どこへでもやってくれ」
 アッパカパー伯爵は言った。
 「本当に、それで良いのですか」
カーマインは言った。
 「私は勘当した。もう娘でも何でもない。それでは携帯電話を切る」
アッパカパー伯爵は言った。
どうやらポロロンと同じぐらいに頑固者のようだった。
「わたくしは、アッパカパー伯爵家から勘当されました。ラーンと言いましたね離して下さい」
 ポロロンは言った。
「姫様、どうしますか」
 ラーンがカーマインの方を見て言った。
「ラーン。ポロロン・アッパカパーを離せ」
カーマインは言った。
 「判りました姫様」
ポロロンを羽交い締めにしていたラーンは腕を外した。
 ポロロンは服を叩いて、シワを伸ばし、両手を前で組み、澄ました顔でスカイ達の方へ歩いて行こうとした。その時カーマインの横を通り過ぎた。
「これから、どうするつもりだ」
 カーマインは言った。ポロロンはカーマインの横で止まった。
 「わたくしは、これから小イジアと結婚するために、この冒険屋達と一緒にイジア国へ向かいます」
 ポロロンは言った。
 「お前と小イジアの婚姻一つで、イジア国とアッパカパー伯爵家の争いに終止符など打たれるものか」
 ミラーナは言った。
「私は、歴史を変えようとします。変えられなくても努力はしてみせます。この一命にかえても」
 ポロロンは言った。
 「そうか、ならば、やって見せればよい。このミラーナ・カーマインの前で、イシサの伯爵家の娘が大口を叩いたのだ。ポロロン・アッパカパーよ、不可能な事をやりたければ思う存分やればいい。精一杯やってみよ。そして不可能だと知ったとき。己の愚かさ、浅はかさを呪うが良い」
 カーマインは言った。
「わたくしは不可能な事を、やろうとしていません。自分の心の良心に従っているのです。それは正しい事です」
 ポロロンは言った。そして再び歩き始めた。
 カーマインは剣を腰の鞘へ収めた。
ポロロンはスカイ達の前まで歩いてきた。
「ジェラール。気絶したナバーガーと、ラヒアを起こせ。戦闘は終わりだ」
カーマインは言った。
「小僧、命拾いしたな。私の名前は、カーマイン大公国の将軍だったジェラール・ジェラルドだ、覚えておけ。今度在ったときは貴族の前で平民が非礼を働いた罪を死によって償わせる」
 ジェラール・ジェラルドは、スカイに名前を告げると後ろを向いて歩いていった。
「さあ、皆さん、ロード・イジア要塞へ向かいましょう」
 ポロロンは言った。
スカイとマグギャランとコロンは気まずそうな顔をして頭を下げて溜息を付いた。
オイ、本当に不味いよコレ。



そしてスカイ達は、再びニーナ6号の操るメガトン・パンダに分乗してアッパカパー峠の山道を月明かりを頼りに進んでいった。
コロンが爆破して分断した道には、まだ戦斧隊が居て橋を掛けようとしていたがニーナ6号のメガトン・パンダは崖の斜面を走っていって、騒ぐ戦斧隊を後目に通り抜けていった。
 霧の谷鉄橋の検問所では、スカイ達は再び通行税を払ってパスポートにスタンプを押してもらい通過していった。ポロロンは何故か顔パスだった。ニーナ6号とは、ここで別れた。ニーナ6号とパンダ達と道着を着た猿は濃い霧で見えなくなるまで手を振っていた。
 スカイ達は、ミドルン王国の検問所を通り抜け、ロード・イジア要塞に辿り着いた。
スカイ達を見て、門番達は、敬礼をしたが、
ポロロンを見て不審に思った。
 ポロロン・アッパカパーを連れてきたから、小イジアを呼んでくるように頼んだ。
 「うむ、これで良かったのか」
 マグギャランが暗い顔でスカイを見て言った。
 「仕方ねぇだろ、なった物はなっちまったんだよ」
スカイも暗い顔で言った。
「あちゃしの不覚だぁ。あちゃしは金に目が眩んで、ロザ姉ちゃんに殺されるような事をやってしまったぁ」
 まだ酔っぱらっているコロンが言った。
 「ここが、ロード・イジア要塞なのですね。たとえ如何なる試練が待ち受けていようとも、わたくしは決して負けません」
 ポロロンは背筋を伸ばして言った。
「ぅぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおお!」
薄暗い要塞の奥の方から叫び声が、ドンドン大きくなってきた。そして床を叩く靴が鳴らすドタドタした音も大きくなってきた。
小イジアが血相を変えて走ってきたのだ。
スカイ達の前で小イジアは止まった。肩で息をしていた小イジアは血走った目でポロロンを見ていた。
「なんて事だ!君達は、僕の手紙をポロロンに渡しただけじゃなくて、ポロロン本人をつれてきてしまったのかい!何て嬉しいサプライズなんだ!これは凄いぞぉおおおおおおおおお!凄いぞ!凄いぞ!」
 小イジアは凄いぞと言いながら何度もジャンプした。
「こいつが小イジアだよ」
 スカイは言った。
「初めまして小イジア。わたくしがアッパカパー伯爵家の娘、ポロロン・アッパカパーです」
ポロロンは小イジアの前でスカートを持って頭を下げる挨拶をした。
「君は何て、美しいんだ!写真で見たより実物の方が百万倍良いよ!良いよ!良いよぉ!本当に結婚に応じてくれるんだね!」
小イジアはポロロンに向かって叫んだ。
 「そうです。アッパカパー伯爵家とイジア国の明るい未来の為に。わたくしはイジア国の小イジアの元へと嫁ぎます」
ポロロンは真剣な顔で言った。
「ヒャッホーイ!こんなに奇麗な嫁さんを貰うんだ!バンザーイ!バンザーイ!バンザーイ!」
小イジアは満面に笑みを浮かべて、両手を振り上げ何度もジャンプしていた。
これで良いのか。
 本当に、これで良いのか?
だが、この仕事で金が手に入る。
 金は命の次に大事で、何でも出来る万能の物だ。
まあ、仕方が無いか。ポロロンはイジア国とアッパカパー伯爵家の争いの歴史を終わらせると言うし。まあ結婚するなら、それなりに落ちるところに落ちて落ち着くだろう。
 スカイは、後ろめたさを感じながら、そう思った。
マグギャランとコロンは小イジアとポロロンから露骨に目を背けていた。どうやらスカイと同じように後ろめたさを感じているようだった。
「おい、小イジア。金を、俺達の銀行口座に振り込んでおいてくれ」
 スカイは言った。
 やはり大事な物は金だよな。金が在って、はじめて何等かの事を考えられる。