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情熱のアッパカパー要塞

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ナバーガーは、フリーズ・ドライ・ボールを作った。エターナルの魔術師を「バカヤロウ」と愚弄したことは。やはり許せる物ではなかった。それにナバーガーはカーマイン大公国の元家令で貴族だったのだ。当然、この四大元素を名乗る娘には死を与えねばならない。四大元素を名乗る市井の学派の炎をエターナルの冷凍系の魔術が制したとき。エターナル主導の正しい秩序がもたらされるのだ。エターナルのみが魔術師の正統であるという秩序が。そのとき横から何かが突進してきた。フリーズ・ドライ・ボールを作っていたナバーガーは避けきれず吹き飛ばされた。



 スカイはメガトン・パンダ達が、次々とカーマイン団のメンバー達を襲っていく光景を笑いながら見ていた。
「おお、さすが、ボンドネードを手こずらせただけの事は在るぜ。やるぜニーナ6号」
スカイは余裕扱いて笑いながら言った。
 「スカイ!カーマイン女卿がパンダに殺される所は見たくないぞ!」
マグギャランは叫んで言った。
 カーマインは飛び違える例の剣術を使っていたがグルグル走り回って次々と変則的な攻撃を仕掛けるパンダ達相手には、どうも勝手が違うのか上手く切りつけられなかった。やはり人間相手の剣術が、そのままモンスター相手には通用しないと言うスカイの持論は証明されていた。
老騎士も間断なく入れ替わって攻撃を仕掛けるパンダ達と道着を着た猿に翻弄されていた。どうやら、あの奇妙な術を使う時間が無いらしかった。多分、あの奇妙な術を使うには何か前提となる条件が在るようだった。



「姫様!ナバーガーとラヒアがモンスターにやられました!」
ジェラールが背後から飛びかかってきた猿の飛蹴りをかわしながらミラーナに向かって叫んだ。
「戦力比が不利になったか!ラーン!ポロロン・アッパカパーを捕らえよ!」
ミラーナはパンダの爪を避けながら言った。
 「承知しました姫様!」
 ラーンの返事が帰ってきた。
 
 

「戦いを止めろ!ポロロン・アッパカパーを殺すぞ!」
 ラーンが叫んだ。
 声のする方をスカイは見た。
 ポロロンはラーンに後ろから羽交い締めにされて首に短剣が突き付けられていた。
滅茶苦茶になっていた乱戦が止まった。



「くそっ、結局、勝ったのはニーナ6号だけか。他はどうも勝ったとは言えない状況だな」
 スカイは言った。
 結局ポロロンはラーンが首に短剣を突き付けて捕まってしまった。
 暴れるポロロンをラーンは力ずくで引っ張っていってカーマインと老騎士の所へ連れていった。
「私をアッパカパー要塞に連れ帰っても無駄です。私は、小イジアと結婚して歴史を変えるために何度でも要塞を抜け出します」
 ポロロンは言った。
「なぜ、そのような馬鹿げた事を考えた」
 カーマインが言った。
 「争いを止めるために私に求婚しに来た小イジアを捕らえた事で、多くの犠牲者が出てしまいました。ある者達は怪我を負い。在る者達は命までも奪われてしまったのです。それは全て上に立つ私の身から発した責任です」
 ポロロンは言った。
 「下らないな。お前は上に立つ支配者としての重圧に耐えられなかっただけだ。上に立つ支配者とは、人の命を如何様にも扱う力と権利を持っている」
 カーマインは言った。
 その言葉にポロロンはハッとした顔をした。
 「そんな権利なんか、誰も持っていません」
 「権力を持つ者には権利が在る。そんな単純な事も判らないのか」
「権力を持つ者は慎重に、その権力を使わなければならないのです。そして、そして、多くの民衆達を幸せにするのです」
 「民衆など甘やかせば、どこまでも図に乗り、つけ上がるものだ。それが、我がカーマイン大公国で起きた鋸卿による議会政治だ」
 カーマインは言った。
 「あなたは民衆を信用していないんですね。権力を持っている人間が、民衆を信用できなのなら。支配されている民衆は、あまりにも可哀想です」
「お前のアッパカパー伯爵家では、エセ君子ぶった施政方針に基づいて統治を行っているようだが。そうやって、忠誠心を不必要に、かき立てるから、捕らえられた小イジアを命懸けで奪い返されないように、兵士達が働くのだろう。アッパカパー伯爵家の偽善に満ちた甘さが。要塞の兵士達を死に追いやった」
「違います。父上の伯爵は、精一杯努力してアッパカパー伯爵領の民衆達が幸福を感じられるように努力しているのです」
ポロロンは言った。
 「お前の話は、もういい。まずはアッパカパー伯爵に携帯電話を掛ける」
 カーマインは真紅の炎模様の携帯電話を取りだした。そして携帯電話を掛け始めた。
「ミラーナ・カーマインだアッパカパー伯爵。娘のポロロン・アッパカパーの身柄を確保した」
 カーマインは携帯電話に話しかけた。ボリュームを大きくしたようだった。
 「カーマイン女卿、感謝する。ポロロンに代わってくれ」
 アッパカパー伯爵の声がカーマインの携帯電話から聞こえてきた。
 首に短剣を突き付けられたポロロンがラーンに引っ張られてカーマインの所へ連れて来られた。
 「父上!わたくしは何が何でも小イジアと結婚します!」
 ポロロンはカーマインの携帯電話に向かって叫んだ。
 「ポロロン、今すぐ要塞へ戻りなさい。お前は冒険屋達に騙されているのだ」
 アッパカパー伯爵の声が言った。
 「いいえ、帰りません!わたくしのせいで人が傷つき死ぬことには、もう耐えられません!そんな事が起きるのは、アッパカパー伯爵家とイジア国が三百五十年来の仇敵だったからです!この歴史を糺す為に、わたくしは小イジアと結婚するのです!」
 ポロロンは言った。
 「何で、そんなに小イジアと結婚したがるのだポロロン!ふしだらな娘の様な事を言うな!早く、アッパカパー要塞に戻って来なさい!」
アッパカパー伯爵の声は悲鳴に近かった。
「いいえ!戻りません!それに、わたくしは、ふしだらな娘では在りません!どうして父上は判らないのですか!」
「こんなに言っても、まだ判らないのかポロロン!アッパカパー要塞で、お前の考えを、しっかりと直さなければ駄目だ!」
 「わたくしをアッパカパー要塞に連れ戻しても無駄です!わたくしは何度でも要塞を飛び出してイジア国へ向かってみせます!そして小イジアと結婚して未来を変えるのです!」
 「ポロロン!お前はアッパカパー伯爵家の娘ではない!そんなことを言う、お前は、もう勘当するしかない!」
 アッパカパー伯爵は終いには怒鳴った。
 「勘当されても、わたくしは全然構いません!わたくしは先祖のナーロン・アッパカパーの道を継ぎます!父上は、あまりにも頑固過ぎます!」
 ポロロンは言った。
 「おい、なんか、無茶苦茶不味くないか」 スカイはポロロンとアッパカパー伯爵のやり取りを聞きながらマグギャランに言った。
 「うむ、親子喧嘩ではあるが、どうにも不味い展開のようだな。俺達に責任が在ることを、渋々とはいえ認めざるを得まい」
 マグギャランは腕を組んだまま気まずそうな顔をして言った。
 「あちゃしの不覚だ。あちゃしが借金しているから金に目が眩んでしまっからだぁ」