小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

情熱のアッパカパー要塞

INDEX|5ページ/65ページ|

次のページ前のページ
 

スカイは悪巧みを考えて事の推移を見守っていた。
実際の所、コイツ等と、まともに仕事の取り合いをして勝てる見込みは完全に薄かった。
だが二百五十ネッカー(二千五百万円)の仕事など滅多にある仕事ではなかった。纏まった金が手に入ったら、フラクターの便利な科学製品が沢山買えて貯金が出来るのであった。
スカイ達は、人混みの間を通って前に出て行った。
「無礼を取り消せ」
 カーマインが言った声が聞こえてきた。凛とした声で女の声というより、男のような口調だった。
 「嫌なこった」
ローサルは笑いを浮かべながら言った。
「無礼を取り消せ」
 カーマインが言った。
 「別に無礼じゃねぇだろ。ただ良いケツしているから「良いケツ」だって誉めただけじゃねぇかよ。誉めているんだよ」
 ローサルは笑いながら言った。
「ならば切り捨てる」
 カーマインが言った。
「だとよ。コエー女だな」
 ローサルは後ろの「キャンディー・ボーイズ」の仲間達に笑いながら言った。
 「コイツは、自分の領土を失った奴だ。それを冒険ジャーナルに書いている奴だ。同情でも欲しいのか」
 キャンディ・ボーイズの金髪の長い髪を総髪にした眼鏡の男が言った。コロンとよく似た長い杖を持って白い、ゆったりとした服を着ている。
「重ねて愚弄するか」
 カーマインが言った。
 「姫、このような下賤の輩共に関わってはなりなせん」
 白髪の刈り込んだ髭を生やしたエターナルの黒マントを羽織った老人が言った。
 「事実を言ったまでだ。エターナルの紋章をジジイになってまで後生大事に付けているボケも一緒だしな」
金髪総髪の眼鏡男が言った。
「下郎、口の効き方に注意しろ。エターナルの魔術師は、魔術ごっこをしている市井のボンクラ学派の魔術師とは格が違うのだ。エターナルの魔術師のみが、魔術師と名乗ることを許されるのだ」
長い髭の老人が言った。
「冒険屋になったのは、どっかの領主を寝取るためだって噂が在るが本当かよ」
 細身の剣を腰に差した赤いベストの男がピンク色のガムを膨らませながら頭の後に手を組んだままバカにした顔で言った。
「言うに事欠いて何という事を!」
 カーマインの背後の二十代中程の短い黒髪の女が両腰の短剣をクルクル回して引き抜いて構えた。あれはマンティコア流二丁剣の構え方だった。スカイは前に戦った事があった。あの時、スカイはナイフしか持っていなくて苦戦した経験が在った。今は古道具屋で見つけて、マグギャランに「買え」と言われて買った剣を剣帯でぶら下げていた。確かに、これは今まで使っている剣の中で一番良い剣だった。マグギャランの説明では銘が在るらしかったが、スカイは剣の銘を忘れていた。
キャンディ・ボーイズの四人とカーマインのカーマイン団の五人が対峙して臨戦態勢に入った。
「おー。何か、俺の望んでいる展開に近づいてきたぞ。しめしめだ」
 スカイは笑いながら言った。
 奴等が総力戦で潰し合えばスカイ達が競合するパーティは実質的には2パーティとなる。
これは、非常に都合が良かった。
「このままでは集団バトルではないか。これでは、俺の出ていき方が難しくなってしまう。俺の狙っているシチューエションとは違うでは無いか」
 マグギャランは情けない顔でスカイの腕を叩いて不満そうな声で言った。
ローサルとカーマインの間には濃厚な殺気の様な物を感じた。
 「お前達は戦わなくて良い。これは、私と、この無礼を働いた者の問題だ」
 カーマインは背後の仲間達に前を向いたまま言った。
「一騎打ちか?全員でバトリ合っても構わないんだがな」
 ローサルは言った。
「剣を抜け。抜かねば、そのまま叩き切る」
カーマインが言った。
 そして剣を上段に振りかぶった。
 「ちっ、しょうがねぇな。女の相手をするにはベッドが必要だが、ここにはねえようだな」
ローサルは笑いながら腰の剣を抜いた。かなり、重厚な厚い刃の剣だった。そして、だらりと下に垂らして石畳と剣の先端がぶつかって音を立てた。
 「お前に必要な物は棺桶だ」
カーマインがローサルに間合いを詰めながら言った。そして急に、物凄い速さで前に飛び出して剣を上段から振り下ろした。獣の様なしなやかな動きだった。
ローサルは後に飛びながらカーマインの剣を右手一本で振り回した剣で跳ね上げた。
 だが、カーマインの剣は跳ね上げられながらも、カーマインが素早く右と左に構えを飛び違えて変えながら前に進んでローサルの右肩から斜めに袈裟切りに切り下ろした。
完全に手なんか抜いていなかった。殺す気の一撃だった。
 スカイは勝負が付いたと思った。
だが両手に持ち替えたローサルの剣はカーマインの剣を受けていた。
 そして、そのままローサルはカーマインの剣を受けた剣ごと振り回すように押し切りを掛けた。
だが、カーマインは、押されながら左から右に構えを変えてローサルの剣の下から右脇を狙って切りつけた。素早い変わり身だった。だがローサルは後に飛び退きながら剣を前に突き出した。カーマインの剣は跳ね飛ばされて逸れた。
 カーマインはローサルのカウンターの突き
を、構えを右と左に入れ替えながら後に飛んで避けた。
「ピョンピョン跳ね回る剣を使うな」
 ローサルが言った。
「お前の剣こそ力押しだけの剣だろう。正式な剣術を学んではいないな」
カーマインは言った。
「剣の流派なんて物はな一日通えば十分なんだよ。その日の内に師範を倒せば目出度く卒業だぜ」
ローサルは剣を肩に担いで不敵な笑いを浮かべて言った。
 それは道場破りって言うんだよ。
 スカイは思った。
だが、大体の所、ローサルの考えはスカイの考えと一致していた。スカイも剣術の師に就いたことは一度も無かったからだ。勘で戦う方が流派なんかに就くより確実だと思っていたからだ。大体、人間相手の剣の流派がモンスター相手に通用するとは思えなかった。
人間を殺すことは無いスカイにとって剣の流派は不要な物だった。
「お前の様な奴に、ペガサス流皆伝の私が負けるわけにはいかん」
 カーマインは言った。
 「背負う価値のない物を背負っているだけさ。流派や師匠なんて物はな成り上がるための踏み台でしかないんだよ。足で踏みつけて自分が高いところに登って行くのさ。高いところに登ったら後は用済みなんだよ」
ローサルは言った。
確かに、そう言われればそうだな。
スカイは内心頷いていた。
「先人に対する敬意を持たぬのか」
 カーマインは言った。
 だが何で、流派に付くヤツは、その流派に責任みたいな物を感じるんだ?
 流派や師匠に就いたことの無いスカイにはイマイチ判らなかった。スカイの剣術は全部自己流だったからだ。ガキの頃、棒きれを振って剣士ごっこをしていた延長線上にスカイの剣技は在った。それで今までやって来たし、これからも、それでやっていくつもりだった。
「先人なんてのは、くたばった奴の事だろう、くたばった奴より生きている奴の方が重要だぜ」
 ローサルはバカにしたような顔で言った。
「皆さん!何をやっているのですか!」