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情熱のアッパカパー要塞

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 「まあ、俺に任せろよ。俺の脳内マッピングは捨てたものじゃねぇだろ」
 スカイは言った。
「ふむ、どうやら見たような場所に出たな」
マグギャランは言った。
 確かに、ポロロン・アッパカパーと出会った。扉が並んでいる廊下に出た。
「どの、扉に居るんだ?」
スカイは辺りを見回しながら言った。
 「さあな、そこまでは判らぬぞ」
 マグギャランは言った。
 「まあ、それなら、適当に扉を開けて回ろうぜ」
 スカイは言った。
 「よく見ろスカイ。扉の上にプレートが付いているだろう。ここに書かれているのではないか」
 「そういや、この要塞はドアの上に部屋の名前が書いてあるプレートが付いていたな」
 「その通りだスカイ。このドアのプレートに書かれた部屋の名前を調べて、ポロロン・アッパカパーの居室を発見するのだ」
 マグギャランは言った。
 スカイ達は順繰りに扉の上のプレートを調べていった。
 「…ポロロン様付きのメイドの控え室。これじゃねぇな」
スカイは言った。
 「おい、スカイ、ビンゴだ。ポロロン・アッパカパーと書かれた扉を発見した」
 マグギャランは言った。
 スカイとコロンはマグギャランの方へ歩いていった。
 そしてスカイは扉の横に付いている、呼び鈴を押した。
 「はい、何の用でしょうか」
 扉が外開きに小さく開いて、ポロロン・アッパカパーのメイドのマーガリナが顔を出した。
 「重要な手紙を運んで来ました」
 スカイはイシサ語で言った。
「重要な手紙ですか?ポロロン様宛に来る手紙は、数は多くないのですが。この時期に来る手紙は無いはずですけれど。留学しているポロロン様の兄上様達の誰かから来たのですか」
 マーガリナが怪訝そうな顔をした。
「それは、こういう事だ!きぇぇぇぇぇい!」
マグギャランが叫びながら小さく開いていた扉を思いっきり両手で引っ張った。
「わっ!いきなり何を!」
 ドアノブを掴んだままのマーガリナがバランスを崩して叫んだ。
 そしてスカイとコロンは開いた扉の中に素早く入っていった。
「マグギャラン・ドンケツ!」
 マグギャランは、前のめりにバランスを崩したままドアノブにしがみついている中腰のマーガリナを背中で突き飛ばして部屋の中に入って来た。
 マーガリナは、マグギャランのドンケツで、部屋の中に、すっ転んで尻餅を付いていた。
 「狼藉者ですポロロン様!」
プリムが叫んだ。
「狼藉者なのではない!我々は愛の伝書鳩なのだ!」
マグギャランは後ろ手で扉の鍵を掛けながら言った。
「その声は!さては、お前達は、ミドルンの冒険屋!」 
 マーガリナが叫んだ。
「おう、そうだよ。さっきは小イジアの救出が仕事だったけど、今は、ポロロン・アッパカパーに小イジアの手紙を届けるのが仕事なんだ」
 スカイは言った。
「私に小イジアから手紙が?」
 部屋の奥に居たポロロンが、分銅鎖を袖から引き抜いて構えたプリムの後ろから言った。
 「何をデタラメな!」
 マーガリナが言った。
 「黙りなさいマーガリナ」
 ポロロンは言った。
「俺達は、お前に、この手紙を届けて返事を貰ってくる仕事を引き受けたんだ。だから、この手紙の中身を今すぐ読んで、返事を書いてくれ」
スカイは手紙を取りだして言った。
 そして、ポロロンに手渡した。
 「その通りだ。これは重要な事なのだ」
 マグギャランは言った。
 「重要な事ですか。あなた達が持ってきた、この手紙には重要な事が書かれているのですか」
ポロロン・アッパカパーは手紙を、しげしげと見ながら言った。
 「そうかもしれないが、判断するのは、お前だ」
 マグギャランは、真面目な顔と声で言った。
 「まあ、本当は…」
 スカイは、ただのラブレターだと言おうとしたがマグギャランがスカイの口を塞いだ。
 「何するんだよ!」
 スカイはマグギャランの手を、のけて言った。
 「何か、勘違いしているようだ。この方が返事を簡単に書いて貰えるだろう」
マグギャランは小声で言った。
「おお、成る程な」
 スカイは言った。
マーガリナが、カエルの顔が付いた携帯電話を取りだした。そして、折り畳まれた携帯電話を開こうとした。
 「こら!メイド!何するか!マグギャラン!チェーック!」
 マグギャランが横っ飛びで飛びかかってマーガリナの手からカエルの顔が付いた携帯電話を奪った。
「あっ、私の携帯電話!」
 マーガリナが叫んだ。
 「ふ、連絡などさせるか。俺が一〇三インチのテレビを買って気持ちよくケーブル・テレビを見るためには、この仕事を簡単サクサクと片づける必要があるのだ」
 マグギャランは訛の強いミドルン語で言った。
 「この者達は人の物を奪って何とも思わない冒険屋ですよ!ポロロン様」
分銅鎖女が言った。
 「そうですプリムの言うとおりです!この者達を信用などしては駄目です!」
 マーガリナが言った。
 「大義の前の小義だメイド。我々が持ってきた手紙は大義を持っている重要な書簡なのだ」
 マグギャランはトレーダー語で言った。
 「なぜ、マーガリナの携帯電話を奪ったのですか。そこに大義が在ると言うのですか」
 ポロロンが言った。
スカイはマグギャランと顔を見合わせた。
そしてマグギャランが頷いた。口が裂けても、また捕まるのが嫌だからとは言えなかった。
 「ふ、それは…イジア国とアッパカパー伯爵家の未来に関わる重要な大義が在るのだ…メイド達は、己の職掌によって我々を捕まえようと…小義を働いている、だが、我々は大義の為に働いているのだ」
 マグギャランは少々つっかえながらも、もっともらしい出任せをトレーダー語で言った。
 「そこまで言うのなら判りました。私も、この手紙に込められた大義を読みとろうと努力しましょう」
 ポロロンは言った。
 「そんな物、見ては駄目ですポロロン様!」
プリムは言った。
だが、ポロロンは机へ歩いていって。ペーパーナイフを取りだして。小イジアの手紙を開いた。
 そして手紙を読み始めた。
「「僕と明るい未来を作るために結婚して下さい、返事を待っています小イジアより」とだけ大きい字で書かれています」
 ポロロンは手紙を読んで言った。
 スカイは、あまりにも単純な内容で呆れた。
まさか、こんな内容では、ポロロンが、ろくな返事を書かないと思った。小イジアが納得しなかったら報酬は出ない事になる。
大丈夫か?この仕事は?
 スカイは二百五十ネッカー(二千五百万円)が目の前から手の届かない所へ飛んでいくような幻覚に襲われた。
 「決めました。私が直に出向いて、小イジアと話しをします。冒険屋の皆さん、私を道案内するのです」
ポロロンは真面目な顔で言った。
 はあ?
 スカイは何か、おかしな方向へと話が進み始めていることに気が付いた。
「いや、俺達は、この手紙を、お前に渡して返事を貰ってくる事が仕事なのだ。わざわざ、お前が付いてくる必要は無いのだ」
 マグギャランは言った。
 奴も怪訝そうな声と顔をしていた。