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情熱のアッパカパー要塞

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 スカイは。小イジアが作ったピンク色の封筒に入った手紙を腰裏のバッグから取りだして見た。蝋で封印がされて刻印が押されている。
 「重要な仕事だ。成功すれば二百五十ネッカー(二千五百万円)が手に入る。そして百三インチの大画面テレビが買える」
マグギャランは言った。
「ああ、そうだ。金が手に入れば、バカンスにも行けるな。沿海岸州連合王国の風光明媚な避暑地リドルでサーフィンでもしようや」
 スカイは言った。
スカイ達は、アッパカパー要塞へ向かって一歩を踏み出した。



ミラーナ・カーマインを代表とする、カーマイン家の三人とアッパカパー伯爵の会談は続いていた。
 ミラーナ達とアッパカパー伯爵の会談の内容は、肝心のイシサ聖王国の有力貴族達への根回しの話しになった。
 「イシサの貴族で、現在一番、力を持っているのは、リノト公爵で在ることは間違い無いのでしょうか…」 
 ナバーガーが確認するように言った。
 その時、扉が開いた。ミラーナは扉の方を見た。15、6の娘が居た。
「父上!」
 娘は、よく通る声で言った。
 「どうしたのだポロロン。今は重要な会議中だ。人払いをしている筈だ。お前は部屋に戻りなさい」
 アッパカパー伯爵はポロロン・アッパカパーに言った。
 「なぜ、私に小イジアが求婚しに来た事を黙っていたのです!」
 ポロロン・アッパカパーが、よく通る大きな声で言った。
 「それは、イジア国の策謀だと思ったからだ。お前に余計な気苦労を掛けたくなかった」
 アッパカパー伯爵は言った。
 「それでは、なぜ、小イジア捕らえたのです」
 ポロロン・アッパカパーは言った。
 「イジア国が卑劣にも求婚を使ったアッパカパー伯爵家を愚弄する策謀を行った事に対する代償だ」
 アッパカパー伯爵は言った。
 「それでは、なぜ!要塞の中には傷つき、倒れた兵士や騎士達が居るのですか!」
ポロロン・アッパカパーは言った。
「アッパカパー伯爵家のアッパカパー要塞に、イジア国が雇った冒険屋達が潜入して、殺戮を行ったのだ。兵士達は、アッパカパー伯爵家の主権を守ろうとしたのだ」
 アッパカパー伯爵は言った。
 「このような、惨事は、私のせいなのでしょうか!私が悪いのでしょうか!私のせいで要塞の兵士達や騎士達が、傷つき、命まで失ってしまったのですか!こんな事は嫌です…」
 ポロロン・アッパカパーの最後の方の語尾
が消え入りそうに小さくなった。
ミラーナは、その様子を見ていた。
 カーマイン大公国の王女として育てられたミラーナから見ても、ポロロン・アッパカパーは、あまりにも世間知らずに見えた。だから、アッパカパー伯爵がポロロン・アッパカパーに何も知らせなかったのは当然の事のように思えた。
 


スカイ達は前回逃げ回っていた反省を踏まえて、変装する事にした。アッパカパー要塞の兵士達のヘルメットなどを無断で借りてレンタル料を一人ずつ、二千ニゼ(一千円)置いておいた。ヘルメットを被って槍を持ってイシサ聖王国の紋章が付いたマントを肩から掛けて変装した。コロンは杖の先端に魔術の発動体にカバーを掛けて槍に見せかけていた。これは以外と効果的で、スカイ達は怪しまれる事無く、アッパカパー要塞の中を歩いていた。
「何だよ、最初から、こうやって、変装すれば良かったんじゃねぇか」
 スカイは呑気に、アッパカパー要塞の兵士達と、すれ違いながらも、うろ覚えのイシサ風の敬礼をして、兵士達が通り過ぎた後、マグギャランに言った。
「まあ、なんだ。そこら中に怪物の死骸が転がっているな」
マグギャランは言った。
「ああ、そうだな」
 スカイは答えた。
 四つ足のサメが焦げて炭化していたりした。
 スカイは、辺りを見回した。
「まあ、俺達もマンモタイガーを倒したし、「暴虐王」をも倒した。なかなかの戦果を上げた物だぞスカイ。今日は秘剣マグギャラン切りが炸裂したからな」
マグギャランが頷きながら言った。
「何、言って居るんだよ。適当に動かしたんだろう」
スカイは言った。
 「実は、俺は、あの手のロボットは昔、操縦を習った事があるのだ」
 マグギャランが言った。
「なんで、そんな物習うんだよ」
 「コラ、スカイ。騎士には色々な訓練が在るのだ」
「まあ、大体、ポロロン・アッパカパーが、どこら辺に居るかも判っている。ガキの頃から、ダンジョンを歩いている俺はアッパカパー要塞の中は大体判っている」
 スカイは言った。
 「まあ、お前の、脳内マッピングは、かなりの精度だからな」
 マグギャランは言った。
「前に会った場所の近くに居るだろう」
 スカイは言った。
「うむ、取りあえず、あの辺りを捜してみよう」
 マグギャランは言った。
スカイ達はポロロンと遭遇した場所を目指して階段を昇っていった。



 アッパカパー伯爵の命令で自室に帰られたポロロン様は、ずっと自分を責め続けて泣いていた。
「私の責任です。私のせいで、要塞の多くの兵士達が、ある者は傷つき、在る者は命までも奪われてしまいました。なぜ、こんな事になってしまったのでしょう。私に求婚しに来た小イジアを捕らえてしまったからなのでしょうかマーガリナ、プリム」
 ポロロン様は涙を流しながらハンカチで拭きながら言った。
「そんな、事は、ありません。小イジアは、勝手にアッパカパー伯爵領に侵入したのです」
マーガリナは言った。
「そうです。領地に侵入して、ポロロン様に求婚するなど、小イジアの取った行動は言語道断です」
 プリムは言った。
「なぜ、小イジアは、私などに求婚をしに来たのでしょう」
「ポロロン様が、奇麗だからです」
 マーガリナが言った。そして、プリムを見てしきりに目配せをしていた。何かを言えと言っている様だった。プリムも頷いて言った。
 「そうです。ポロロン様は奇麗ですから」
プリムは言った。これは間違いなかった。
ポロロン様は、黒く長い巻き毛に秀麗な眉目を持っていた。やや、目が大きいが、バランスが悪く見えるような形ではなかった。
 「三百五十年来の仇同士の、アッパカパー家とイジア家がです。小イジアが、私の容姿ごときで求婚するなど考えられません。きっと何か深い意味が在るに違い在りません。そうでなければ、死んでいった人達の魂が浮かばれる事は在りません」
 ポロロン様は悲しそうな顔で涙を流しながら言った。
ポロロン様にかける、言葉が思い当たらずプリムはマーガリナと顔を見合わせた。



スカイ達は変装したまま階段を昇っていた。
途中で、何度も検問の様な場所に、ぶつかったし、今登っている階段の入り口にも鎧を着た兵士達が居たが、スカイ達は、問題なく、例のスカイ達が覚えたイシサ風の敬礼をして、
無事に通過していた。
「まあ、何て言うのか、勝手知ったる他人の家ならぬ外国の要塞とでも言うのかスカイ。コロンが爆破した階段には、木の板で臨時の橋が掛けられたようだな。どうやら、ポロロン・アッパカパーに小イジアのラブレターを渡す仕事は簡単に終わりそうだなスカイ」
 マグギャランは言った。