情熱のアッパカパー要塞
キャンディ・ボーイズの医者ターイ・ラッスルは頭を下げていった。
「貸し借りは無しって事で行こうぜ。お前等の証言で無事に報酬が入金された。金は幾らか要るか?」
ローサルがターイ・ラッスルの肩を叩いて言った。
「いや、俺達は、ソークスを故郷に連れて帰る事が先決だ。俺達は正義の為に証言をした。これは、ソークスの名誉を守るためでも在る」
マウド・ベルターが言った。
「それじゃ、俺達は、仕事を無事に終了だ。ウダルへ帰るぜ。ロード・イジア。世話になったな。また何かトラブルが在ったら呼んでくれ。また会おうぜ」
ローサルは言った。
「うむ。イジア国に何かあれば、キャンディ・ボーイズを呼ぼう。それでは、さらばだ」
ロード・イジアが手を振った。「統合幕僚作戦参謀本部極秘会議場」に集まっている、軍服のような物を着た連中達も手を振っていた。
ローサルは、仲間達と一緒に「統合幕僚作戦参謀本部極秘会議場」から出ていった。
「俺達、灼熱の翼もバンド男爵領へ帰る。ロード・イジア。それでは我々は帰らせて貰う」
マウド・ベルターは言った。
「うむ。さらばだ」
ロード・イジアは言った。
灼熱の翼はマウド・ベルターを先頭に「統合幕僚作戦参謀本部極秘会議場」から出ていった。
リッカ・グルンがコロンの所へ走ってきた。
「それじゃ、コロンは携帯電話を持っていないから、スカイか、フレイア先生の携帯電話に掛ければ繋がるのね」
リッカ・グルンが言った。
「…うん。リッカちゃんさようなら」
コロンは言った。
「それじゃ、コロン。また会おうね。じゃあね!」
リッカ・グルンは元気良くコロンの腕を振って言った。そして手を振りながら、灼熱の翼の方へ走っていった。
「なんだ。どのパーティもつれないな」
白目を剥いて倒れていた小イジアは起きあがって、「統合幕僚作戦参謀本部極秘会議場」から出ていくパーティ達を見送りながら言った。
ロード・イジアやマッタール大臣や小イジアの母達などは、「統合幕僚作戦参謀本部極秘会議場」から出ていく二つのパーティを立ち上がって広間の方まで出ていって見送っていった。
「さて、俺達はどうするかだ」
スカイは言った。
「俺達は競合ルールで敗れてしまったのだ。前金の二十五ネッカー(二百五十万円)しか残らなくなる」
マグギャランは言った。
「どうするか。このまま、帰るか?」
スカイは言った。
確かに、小イジアの依頼を受けるにしては、今日はアッパカパー要塞で逃げ回って疲れていた。
「ねえ、そこの低レベルそうな君達」
小イジアが小さな声でスカイ達に話しかけてきた。
「低レベルは余計だよ」
スカイは言った。
「あのさ、僕は、君達にポロロンへの手紙を送り届ける仕事を依頼したいんだけど。受けてくれるかな」
小イジアが言った。
「おいおい、単に郵便ポストに手紙を投函するような仕事じゃないだろう。幾ら掛かるか判っているのか」
マグギャランは言った。
「君達は幾らで、父さんから仕事を引き受けたんだい」
小イジアは言った。
「前金が一人頭二十五ネッカー(二百五十万円)で、成功したら残りの二百二十五ネッカー(二千二百五十万円)を払う約束で、仕事に参加したんだよ」
スカイは言った。
「それじゃ、僕の貯金で十分間に合うよ。一人頭二百五十ネッカー(二千五百万円)を報酬にすれば良いんだね」
小イジアは言った。
「ああ、だが、一応、冒険屋組合を通す事になって居るんだ」
スカイは「統合幕僚作戦参謀本部極秘会議場」の外の広間に出て見送っているロード・イジア達を見ながら言った。
「こっちに来てくれ。この上座の壁に塗られているロード・イジアの肖像画には秘密通路が在るんだ。これを通れば、今、見送りをしている父さん達に見つからずに僕の部屋へ行ける」
小イジアは言った。
そして目元をアップにしたロード・イジアの肖像に描かれた、右の鼻の穴の所を押すと、壁が開き、中には細い通路があった。
「それじゃ、こっちに来てくれ。僕の部屋へ行こう」
小イジアは言った。
スカイとマグギャランとコロンは顔を見合わせた。
そして小イジアの後を付いていった。
細い通路を通って、クネクネした階段を昇って、途中で何度か分岐しながら上の方へと登っていった。
そして、小イジアが、扉の様な物を開けると、服が、ぶら下がっているタンスのような所に出た。
「何でタンスが在るんだよ」
スカイは言った。
「スカイ、これは隠し通路だ。タンスの中に非常用の抜け道へ繋がる入り口の扉があるのだ」
マグギャランは言った。
「その通りだよ。じゃあ僕の部屋へ入ろう」
小イジアは言った。
そしてタンス?の扉を開けて、スカイ達は、小イジアの部屋へ入った。
「何だこりゃ!」
スカイは小イジアの部屋に入って叫び声を上げた。
その部屋の中には一面にポロロン・アッパカパーの写真らしい物が拡大されて、そこら中に貼ってあったのだ。
「ははははははは、僕の愛の深さに驚いたかい。僕はポロロンを雑誌で見て、その写真をカラーコピー機で拡大して、部屋中に貼り付けたのさ。僕はポロロンに囲まれているのだ。だが、幾ら写真を部屋に飾っても本物には、かなわない。だから僕はアッパカパー要塞に向かって霧の橋鉄橋を通ってポロロンに求婚しに行ったんだ」
小イジアは自慢そうに言った。
「うむ、まるでストーカーではないか。一人より二人が良いし、二人より百人の方が良い。女は数ではないかね小イジア」
マグギャランは言った。
「駄目駄目。その辺の大したこと無い女を百万、一千万積んでも、並べてもポロロン一人には敵わないよ」
小イジアは言った。
「凄い思いこみだとは思うが。実物に会ったら興醒めでもするんじゃないのか」
マグギャランは言った。
「俺達も、アッパカパー要塞でポロロン・アッパカパーに会ったが。ただ気が強いだけの貴族の娘だったぜ」
スカイは言った。
「何!君達はポロロンに会ったのか!」
小イジアが血相を変えて、スカイに突進してきて、肩を乱暴に揺すった。
「ああ、そうだよ」
スカイは言った。
「どこで!」
小イジアは、さっきのロード・イジアの様に顔を真っ赤にしてスカイの顔に唾を飛ばしながら詰問するように言った。こういう所はロード・イジアに似て居るんだなとスカイは思った。
「アッパカパー要塞の上の方の扉が沢山並んだ廊下だよ」
スカイは言った。
「俺達は兵士達に追われて、階段を爆破した後でポロロンに会ったのだ」
マグギャランは言った。
「何か話したの!」
小イジアが口から泡を吹きながら詰問するように言った。
「ポロロンは、俺達の事を賊だと勘違いしたのだ」
マグギャランは言った。
「ポロロンは何て言ったの!」
小イジアは言った。
「なんか、アッパカパー家を愚弄するのが許せないとかどうとか言っていたな」
スカイは言った。
確か、そんなことを言っていた。
「うむ、誇りがどうのこうのとかも言っていた」
マグギャランも言った。
作品名:情熱のアッパカパー要塞 作家名:針屋忠道