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情熱のアッパカパー要塞

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「全く、世の中。簡単に金が手に入らない物だな」
 スカイは言った。
「うむ、俺達も、今日は二百五十ネッカー(二千五百万円)分ぐらいは、真面目に働いていたんだがな」
 マグギャランも言った。



「よし!小イジアの救出は俺達が成功だ!」
ローサルは言った。
ローサル達は、再びダンジョンとトンネルを通って、イジア国の地下坑道の入り口にまで辿り着いた。イジア国の制服を着た兵士達が敬礼をしていた。
 「まったく、あの化け物と戦ったときは死んだと思ったぜ」
 ソフーズがガムを膨らませながら笑いを浮かべて言った。まだ右の脇腹を押さえていた。
「まさか、俺の雷光檻が剣で切られるとは思わなかった。何故、剣で切られたのかを調べて、剣で切れない雷光を作ってみせる。雷光の裁定学派の名誉を守る為に」
 シャールが自分の杖を見ながら言った。
 「2人とも、あの男の剣で切られなくて良かったですね。ソークス・バンドの傷は、あの男の言うとおり、私の治療魔術では塞がらない物でした。私に出来たのは止血だけです」
 ターイが言った。
欠伸をして、ローサルが肩に担いだ小イジアが目を覚ました。
「ようやく眠りから覚めたか」
 シャールは言った。
「おや、何で、僕は、イジア国のトンネルの前に居るんだ。それに君達は何だ。何で僕は担がれて居るんだ」
 小イジアは言った。
 「アッパカパー伯爵に捕まった、お前を、俺達は救出したんだ」
 ローサルは、小イジアを肩から降ろしながら言った。
 「君達は父さんに雇われたのか」
 小イジアは言ったし。
 「ああ、そうだ。ロード・イジアに雇われたんだ」
ローサルは言った。
 「ここは、一号坑道の入り口じゃないか」
 小イジアは言った。
 「ああ、そうだ。ここはイジア国だ」
 ローサルは言った。
 「何て事だ!助かったのは嬉しいけれど、何で僕をアッパカパー要塞に居させてくれなかったんだ!」
 小イジアは言った。
 「お前は何を言っている」
 シャールが怒気を含んだ声で言った。
 「僕は、ポロロンに求婚しに言ったんだ」
 小イジアは言った。
 「はあ?それが、お前がアッパカパー要塞に捕まった理由なのか」
 ローサルは呆れた。
 どうやら、小イジアは女目当てでアッパカパー伯爵領へ行って捕まったらしい。
 「ハハハハハハハハハハ!そりゃ傑作だ!」
 ソフーズのガムが割れて腹を抱えて笑い出した。
「ああ、そうだよ。僕は、ポロロンの側に居られると思うだけで卒倒しそうなぐらいに幸せなんだ」
 小イジアは言った。
全く、とんでもないボウヤだぜ。
 ローサルは内心毒づきながら思った。

 

スカイと灼熱の翼はイジア国が掘ったトンネルの中を歩いていた。
「うむ、カーマイン女卿はどうしているのであろうか。まさか、捕まってしまったなどという事があるのでは。ふむ。それでは、このマグギャランが一肌脱いで、救出に向かわねばなるまいか。城に囚われた美女を救出する。これこそ騎士のロマンで在るな。だが一肌脱ぐのは救出した後かもしれぬ」
 マグギャランは言った。
「何で、この男は、こんなにエロエロなのよ。全く、こんなエロエロ男がパーティのメンバーでコロンも大変だよ」
 リッカ・グルンは言った。
 「フハハハハハは!俺は、気の多い浮気者で伊達男の騎士マグギャラーンなのだ!世界の美女達が俺を待っている!マグギャラーン・ミーツ・ビューティズなのだ!」
 マグギャランは、あっちこち向いて投げキスをしながら言った。
 「どうやらエロエロは筋金入りのようね」
 リッカ・グルンは言った。
「不味いことが、起きています。ソークスさんの、右腕と右足の傷が急速に壊死し始めています」
 ルエラ・ジパーズが飛行形態変形したペロピンに載せられて運ばれているソークスを見ながら言った。
 「何だ。あの屍の剣には、そんな力まで在るのか」
騎士が嫌そう顔をして言った。
 「ええ。多分、あの剣のせいだと思います。壊死した部分を切除しないと駄目です。切られた右腕と右脚は縫合しても傷口自体が、くっつかず繋がらないんです」
 ルエラ・ジパーズは言った。
 「何て事だ、ソークスは右腕と右足を失ってしまうのか。これだけの腕を持つ武芸者が身体の自由を失って朽ち果てるなど、俺はソークスの友人として嫌だ」
 騎士が頭押さえて首を振りながら言った。 しんみりした空気が辺りを支配したが。
 明かりが見え始めた。
 ここは一号坑道だった。



統合幕僚作戦参謀本部極秘会議場にスカイ達は到着した。扉を開けてみると、中では、もめ事が続いていた。
「ロード・イジア。小イジアの身柄を確保したのは、俺達キャンディ・ボーイズだ」
 ローサルの声がした。
 「だが、既にボンドネード・ファミリーから、我が息子の身柄を助けたとの連絡を受けている。そして競合ルールの報酬をリート・ボンドネードの口座に振り込んだ」
 ロード・イジアが言った。
 「それは、お前達が騙されたからだ」
キャンディ・ボーイズの魔術師が言った。
 「それではロード・イジア。リート・ボンドネード殿に携帯を掛けるのである」
 マッタール大臣が緑の携帯を取りだした。
「リート・ボンドネード殿か。私はイジア国のマッタール大臣である」
 マッタール大臣が携帯電話をかけた。
 「私の仕事は終わった。もう電話を掛ける必要は無いはずだが」
 リート・ボンドネードの声がマッタール大臣の携帯電話から大きく拡大されて出てきた。
「困ったことに、小イジアの身柄は、キャンディ・ボーイズが連れてきたのである。これは、どういう事だか説明して欲しいのである」
 マッタール大臣が言った。
「実は、小イジアの身柄は、我々が奪還した後、途中でキャンディ・ボーイズに奪われてしまったのだ」
 リート・ボンドネードは言った。
 「テメェ!何、嘘ついて居るんだよ!」
ローサルが緑色の携帯電話に向かって叫んだ。
「小イジア様は、どうなっているであるか」
 マッタールが小イジアに言った。
「ああ、僕は、屍という東方人の男と二人の世話係に連れられて、アッパカパー要塞のあっちこちの部屋を移動していた」
小イジアは言った。
「確かにそうだ。屍が小イジアの身柄を預かっていた」
ローサルは言った。
 「最後に覚えているのはボンドネード・ファミリーという冒険屋のパーティが僕の前に来てから、急に眠くなって眠ってしまったんだ。そして起きたら、ロード・イジア要塞の一号坑道の前に居た」
小イジアは言った。
「それは、エターナル魔術のスリープ・ミストだ。俺はまだ解呪出来ないがな」
 キャンディ・ボーイズの魔術師が苛立たしそうに言った。
 「おう、お前達も帰ってきたか」
ローサルがスカイ達3人と灼熱の翼を見て言った。
「そうだ。我々ボンドネード・ファミリーは小イジアにスリープ・ミストを掛けて連れだした」
リート・ボンドネードの声は言った。
「いい加減にしろ。リート・ボンドネード!嘘をつくな!」
 灼熱の翼の騎士が怒気を含んだ声で言った。
「君は誰かね」