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情熱のアッパカパー要塞

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 部屋の中ではリッカ・グルンが口を大きく開けてスカイ達を驚いた顔で見ていた。
 「何とか、無事に辿り着いたぜ」
 スカイは荒い息のまま言った。
 「うむ、気迫と気合いで突撃はするものだな。まるで、孤立した砦に救援に来た感じだ」
 マグギャランが言った。
 四十メートル四方は在りそうな広い部屋の中を見まわすと床に右腕と右足を失ったソークス・バンドが止血しているらしい紐で傷口の近くを縛られて倒れていた。
 「ありがとう!コロン助けに来てくれたのね!」
 リッカ・グルンが、口を閉じるとコロンの杖と呪文書で塞がった手を握ってジャンプしながらキンキン声で言った。
コロンは顔を赤くしていた。
入り口の方では、騎士とスカウトっぽい男が再び兵士達と戦っていた。
 「おい、リッカ。喜んでいないで、救援のパーティと一緒に、この状態をなんとかしろ」
 騎士が前を向いたまま言った。
 「確かにそうね」
 リッカ・グルンは背中に背負った機械を取りだした。そしてスイッチを入れて立体型のディスプレイに地図らしい物が映し出された。
「イジア国で渡された地図をペロピンが三次元データにして、今、居る場所が、ダンジョンの真上で在ることが判ったの。何とかダンジョンを通って、イジア国まで逃げ出せれば良いんだけど。私は鋼鉄の歯車学派の魔術を今日は使いすぎたから、打ち止めなのよ」
 リッカ・グルンが言った。
 「それなら。上手い方法がある」
 マグギャランは言った。
 「どんな方法ですか」
 灼熱の翼の、もう一人の女が言った。
 マグギャランの顔がデレっとなった。
「うむ、それは、コロンの新型爆裂火球を使うのです。このコロンの新型爆裂火球は、山道の道路を爆破して跡形もなくする事が出来るのです。ところで、そこの御婦人の、お名前は」
 マグギャランが言った。
 「ルエラ・ジパーズです」
灼熱の翼の、もう一人の女はルエラ・ジパーズと名乗った。
 「ルエラ、気を付けた方が良いよ、この人、絶対下心が在りそうだよ」
 リッカ・グルンが言った。
「こら、小娘黙れ。これは大人の話なのだ」
マグギャランは言った。
 「何が、大人の話よ、どうせアンタの頭の中はエロエロなんでしょ」
リッカ・グルンがバカにした顔で言った。
 確かにマグギャランの頭の中はエロエロだった。
「リッカ!無駄話を喋ってないで早く!脱出する作戦を作れ!百人以上も居る兵士達の相手を二人でしているんだぞ!そう長くは保たない!」
 印象の薄い騎士が叫び声を上げた。
「ええい。いかんぞ、いかん。とにかく、コロンが新型爆裂火球でダンジョンへ通じる穴を開けるのだ。そうすれば、後はダンジョンに潜って、イジア国まで行ける」
 マグギャランは頭を振って言った。
「炎の門学派って、そんな呪文が使えるの?」
 リッカ・グルンがコロンの方を振り向いて言った。
 「…うん」
 コロンが言った。
「それでは、コロン!穴を掘るのだ!」
 マグギャランが言った。
 「…判った」
 コロンは杖の先端に火炎球を作った。四十メートル四方は在りそうな広い部屋の真ん中へ向かって火の玉はヘロヘロと飛んでいった。
 そして床へ落ちる瞬間に形が変わった。
 物凄い爆発音がした。爆風がスカイ達目がけて吹き付けた。だが、今回は距離が離れている為、吹き飛ばされはしなかった。
「あっ!本当に穴が開いている!凄いよコロン!」
リッカ・グルンがコロンが開けた、穴の縁まで走って行って言った。
「だが、穴が開いたのは良いが、どうやってダンジョンの中に降りるんだ。俺達が持っているロープじゃ、この部屋の端までだって届かないぜ」
 スカイは言った。
 「それは大丈夫だと思います。リッカが使うロボットのペロピンは空中を飛ぶことが出来ます。穴の下のダンジョンまで降りて行けます」
ルエラ・ジパーズが言った。
 スカイとマグギャランは顔を見合わせた。
 結局リッカ・グルンが先にロボットのペロピンに乗って穴の底のダンジョンまで降りて、ペロピンを使って、ソークスをロボットに載せてダンジョンまで降ろし、続いて、ルエラ・ジパーズ、コロン、スカイ、マグギャランの順で降り。最後に灼熱の翼の騎士とスカウトっぽい男がペロピンに二人で、ぶら下がって降りてきた。アッパカパー要塞の兵士達は穴の上で騒いでいたが、スカイ達は、ダンジョンの地図を見て、イジア国目指して歩いていった。灼熱の翼の騎士は剣の立ち合いで傷を負ったらしいから走るのが辛いらしいのだ。それで歩いていった。



「ポロロン様、お止め下さい。まだ要塞の中に賊が居るかも知れません。部屋に、お戻りください」
 プリムは、先輩のマーガリナと一緒に、ポロロン様を止めようとした。
 だが、ポロロン様は、アッパカパー要塞の中を歩き回っていた。
 要塞の中では、あちらこちらで、怪我をした兵士達や、死んだ兵士達などが居た。そして、四つ足が生えたサメが死んでいたり、サルの頭が付いた巨大な蜘蛛が死んでいたりした。
 「何という、酷い惨状なのですか。これは、まるで地獄絵図です」
 ポロロン様は言った。
 ポロロン様は、傷ついた兵士達に声を掛けたり治療魔術で手当をしたりした。だが、目に見えて、ポロロン様は動揺していた。
 プリムとマーガリナはポロロン様に部屋に戻るように言い続けていたが。ポロロン様は。部屋に戻る様子は無かった。
 「これが、全部私のせいなのですか…」
 ポロロン様は、ボソリと一言、そう言って。悲しそうな顔をしていた。

 

スカイ達と灼熱の翼はアッパカパー要塞の地下にあるダンジョンを歩いていた。
「あーあ。今回は仕事を、し損じちまったな。あー二百五十ネッカー(二千五百万円)が手に入る筈だったんだよ。それが前金の二十五ネッカー(二百五十万円)だけだ」
 スカイは、どっと疲れを感じていた。
「ああ、結構俺達は頑張ったんだがな。思い返せば、道路を爆破して、城門を破壊して町の建物を破壊して、ロボットを二台破壊して要塞の階段を破壊したりと壊しまくりの一日だった」
 マグギャランも落ち込んだ顔で言った。
 「ここまで来る宿泊代や食費や運賃だけでもバカにならないからな。手取りが幾ら手元に残るか考えると気が重いぜ」
 スカイは頭の中で銭勘定をしながら言った。
 「何で、そんなに安いの。私達は一人頭一千五百ネッカー(一億五千万円)で仕事を引き受けたのよ」
 リッカ・グルンが言った。 
「冒険屋組合は、パーティの格付けを行って、報酬の査定をするんだ」
灼熱の翼の騎士が言った。
「いいな。お前達は一千五百ネッカー(一億五千万円)かよ。仕事を、し損んじても前金で百五十ネッカー(一千五百万円)を、もう貰って居るんだろう」
 スカイは言った。
「まあ、そうだけど。でもねペロピンは半永久機関で動くから燃料費は、ただ同然だけど。この子は金食い虫で運用コストが掛かるから、私は、余り、お金が手元に残る訳じゃないのよ」
リッカ・グルンは親指と人差し指で作った金サインを、手の平をパーッと開いて跳んでいくように振った。