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情熱のアッパカパー要塞

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 おい、俺達は、ならず者かよ。そこまで悪くはねぇよ。とスカイは思った。
 「わたくしのせいであるとは聞き捨てなりません。理由を説明しなさい。アッパカパー伯爵家の娘として家の誇りを傷つけられては黙っては居られません」
ポロロンは凛とした声で言った。
分銅鎖女が、また跳び蹴りをスカイに放った。
 「説明させません!」
 スカイは分銅鎖女の連続した空中三段飛び蹴りをガードしていた。だが、三段目はフェイントだった。ガードしようとしたスカイ目がけて、分銅鎖が飛んできた。
スカイは手甲で受けた。だが鎖が左腕に絡まった。これが狙いだったようだ。
 分銅鎖女はスカイの左腕に分銅鎖を巻き付けて叫びながら、マグギャラン目がけて跳び後ろ回し蹴りを放った。
「ポロロン様!この、ならず者達の話を聞いてはなりません!さあ!早く!この場から立ち去って下さい!」
だが、ポロロンは身体を押さえている、もう一人のメイドの制止を振り切って前に出てきた。
 「マーガリナ身体を離しなさい、プリムも戦いを止めるのです。そして二人とも控えなさい。これはポロロン・アッパカパーの命令です」
 ポロロンは言った。
 マーガリナとプリムは膝を付いて頭を下げた。
 「しかしポロロン様!話してはなりません!」
 マーガリナと呼ばれたメイドが悲鳴のような声で叫んだ。
 だがポロロンは手で制した。
 「さあ、我が、アッパカパー家を愚弄する理由を説明しなさい」
 ポロロンは言った。
 カーマインの異常な重さに比べると強くは無いが、ポロロンからも圧迫感が伝わってきた。
スカイが口を開こうとしたら。マグギャランが手で制して説明を始めた。
「アッパカパー伯爵は、お前に求婚しに来たロード・イジア要塞のロード・イジアの息子、小イジアを捕まえてアッパカパー要塞に監禁してしまったのだ」
マグギャランは言った。
「我が、アッパカパー伯爵家とイジア国は三百五十年来の仇同士、なぜ、ロード・イジア要塞の子息が、わたくしに求婚しに来るのですか」
ポロロンは狼狽した声と引きつった顔で言った。
スカイは自分の知っている範囲で答えた。
 「知らねぇよ。とにかく、俺達は捕まった小イジアの救出が仕事なんだよ。盗賊なんかしに来た訳じゃねぇんだよ。小イジアを見つけて連れて帰れば、それで仕事は終わりなんだよ。まあ、勝手に城に忍び込んだ事は悪いとは思うがよ。お前達だって、小イジアを捕まえて、どっかに監禁しているからいけないんだよ」
スカイはポロロンに言った。
「皆、わたくしに黙っていたのですかマーガリナ、プリム」
 ポロロンは、メイド二人に言った。
メイドの二人は黙っていた。
その時、階段を昇ってくる音と話し声が聞こえた。
 「階段は爆破したはずだ。どうやって、登ってきた」
マグギャランが言った。
 「さあな、根性で爆破した部分を飛び越えたんじゃねぇのか」
 スカイは通路の奥の方を顎で指さしながら言った。
 「登りの階段を、どうやって根性で飛び越えると言うのだスカイ。もう少し論理的な推論をしろ」
マグギャランは頷いた。
 スカイ達はボーっとして突っ立っていたコロンの腕を引っ張った。コロンはハッとした顔をして頭を振った。そしてスカイ達3人組は通路の奧の方へと駆けていった。



リート・ボンドネードは、策を考えていた。
小イジアの身柄を、どうやってキャンディ・ボーイズ達から奪い返すか。だが、キャンディ・ボーイズは、手傷を負っているとはいえ、メンバーの脱落無しで四人居る。奴等が、コンビネーションを使った戦闘に長けている事も屍との戦いで見ていた。リート・ボンドネードが連れている今回のメンバーでは戦闘を行って勝てるかどうかは難しかった。リート・ボンドネードは自身が習得している剣術、バーバリアン流乱舞剣術と精霊のマッド・インファントリーをボンドネード・ファミリーの前で使う事は避けたかった。競合ルールではパーティ間の戦闘は禁止されているが。それに関しては、ミドルン王国の冒険屋組合の副組合長をやっている長兄ルーサーの権限で揉み消すことが出来る。
 ルーサーの権限か…。
 リート・ボンドネードは策を思いついた。



「はい、スカイ・ザ・ワイドハート」
 スカイはアッパカパー要塞の中を3人で走って逃げ回りながら虎模様の携帯を取りだした。そして耳に当てた。
「助けて!」
 スカイの携帯電話にキンキン声が響いた。
 「誰だよ」
 「私よ!私!」
 「私なんて名前の奴知らねぇよ」
 「リッカよ、「灼熱の翼」のリッカ・グルン!」
「どうしたんだよ」
スカイはボリュームを大きくした。
「ソークスが大怪我を負ったのよ!」
 「何だよ、あいつ。強いんだろう。武芸大会で優勝したって話じゃねぇか」
スカイは言った。
「でも、ソークスが決闘したら、相手も強くて、大怪我を負ったの。今、マウドは怪我を押して戦っているし。ルージェイとルエラも戦っているけれど。ペロピンは、ソークスを載せて運んでいるから飛行形態のままなのよ」
リッカは言った。
 「まさか、あの大武術大会を制したソークスが破れるとは、相手は誰だ?」
 マグギャランが走りながら寄ってきて言った。 
「屍っていう東方人の男よ。ソークスの右腕と足を切っちゃったの」
 「なに、あのタビヲンの四剣士の一人か?まさか、大武術大会の優勝者よりも強いと言うのか」 
 マグギャランが狼狽した声で言った。
 「ねえ、今どこに居るの?私達が一度通った場所なら、ペロピンを通してラップトップに地図が作られているから」
 リッカが言った。
今居る場所は…スカイは辺りを見回した。
 「いま、俺達が逃げているのは第258倉庫前だ」
スカイは手近な扉を見て言った。
 「あっ、そこは私達も要塞の中を逃げ回った時に地図データに入っている。どっち向かって走っているの?」
 リッカが言った。
 「下りの階段が在る方だよ」
 スカイは叫んだ。
 「そのまま、真っ直ぐ進んで階段を降りて十字路で右に曲がって」
 リッカは言った。
 「どうする。マグギャラン。灼熱の翼の救援に向かうか?」
 スカイはマグギャランに聞いた。
 「うむ、昨日、一回指導を受けただけだが師匠は師匠だ。助けに行く。浮き世の義理という物があるのだろう」
 マグギャランは言った。
 「…リッカちゃんを助ける」
コロンも近くに寄ってきて走りながら言った。
「よし、仕方ねぇな。助けに行くぞ!お前等!」
 スカイは叫んだ。
 そしてスカイ達は走っていった。



「それでは、我々は、ロード・イジア要塞へ連絡を入れる」
 リート・ボンドネードは言った。
 「何を連絡するの。仕事は、し損じたでしょ。キャンディ・ボーイズが仕事を成功させた。私達の完敗よ」
 コーネリーが言った。
「黙って聞いていろ。ボンドネード・ファミリーは何があっても仕事は成功させる。だからこそ、その名前に権威と力が在る。コーネリー。これからボイス・チェンジの呪文を使って小イジアの声を作っておけ。小イジアの声は覚えているだろう」