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情熱のアッパカパー要塞

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 「おい、お前、小イジアの身柄は、灼熱の翼か、キャンディ・ボーイズが手に入れる筈だ。屍様が、そう決めた」
 砕破が言った。
 ただの怪力の大男ではなかった。リッキーンが影にしたことに気が付いたようだ。
 「何の事ですかな。我々は、それでは失敬させていただく」
 リート・ボンドネードはシラを切ろうとして言った。
 「セコイで、ござーる。ヌシが小イジアを見えなくしている事など、当に、お見通しなのである。そこの眼鏡の男と金髪の娘が支えて引きずって連れているのであろう。体勢を見れば、一目瞭然で、ござーる」
ムササビは言った。そして歩いてきて、ケーとイオラの間に手をやった。そこにはリッキーンの影の鳥で、影になった小イジアが居た。ムササビが手を上から下に振り下ろした。
「痛っ!」
 リッキーンの悲鳴が上がり、ケーとイオラに支えられたまま眠っている小イジアの姿が現れた。
 リート・ボンドネードは、内心舌打ちをした。
「それじゃ、どうするかだ。俺としては、小イジアの身柄は、一番楽しめた灼熱の翼に渡してやりたいが」
 屍は言った。
 「ふざけるな屍。ソークスが、こんな瀕死の重傷を負ったんだ。俺達は、小イジアの身柄など、もうどうでも良い」
 マウド・ベルターがソークス・バンドの側で言った。
「それじゃ、キャンディ・ボーイズに小イジアの身柄を渡す」
 屍は言った。
「判ったぜ。ありがとうよ」
 ローサルが近づいてきて、眠っている小イジアの首根っこを持った。ケーと、イオラは小イジアから手を外した。
 この私が、仕事を失敗するのか。リート・ボンドネードは怒りが込み上げてきた。何とか、しなければならない。何とか。そして、仕事を成功させるのだ。



スカイ達は追われていた。当然と言えば当然だが。ここは、アッパカパー伯爵のアッパカパー要塞なのだ。そこら中に兵士達は居た。
今は、どことも知れない階段を駆け昇っていた。
 「コロン!」
コロンが杖で地面を叩いた。杖から火の玉が出来上がって飛んでいった。
 火の玉は階段の中程に落ちた。
 そして大爆発が起きた。
 物凄い轟音と爆風が響いて吹き付けて。火が広がるのをスカイは見た。そしてスカイの身体は宙を浮いて階段の上の方へと飛ばされた。スカイはバランスを崩しながらも何とか上手く階段に着地した。マグギャランは膝を付いていて、コロンは尻餅を付いていた。煙が晴れると、階段は壁を吹き飛ばして吹き飛んでいた。これでは、追ってくるアッパカパー要塞の兵士達は階段を昇ってくることが出来ない。
 「うー。すげぇ威力だ」
スカイは吹き飛んだ壁と大きく、えぐられた階段を見て言った。
「何の音だ!」
 「見ろ!階段が無くなっている!」
鎧を着て、手に手に剣や様々な形の武器を持った連中が階段を昇ってきた。だが、コロンが開けた大穴の前で立ちすくんだ。
 これで、アッパカパー要塞の連中は追ってくることが出来ない。
「どうやらコロンの新型爆裂火球で階段を爆破したかいが在ったな。凄い威力だな」
 マグギャランも言った。
 「あー、走りっぱなしだったからな。ようやく休めるぜ」
 スカイはアッパカパー要塞の連中達を見ながら言った。
 「賊め!」
 追ってきた連中の一人が前に出てきてクロスボウをスカイ達に向かって構えようとした。
 「逃げろ!」
 スカイは叫んだ。
どうもスカイの方を狙っているようだった。
 スカイ達が階段を走って昇っていくとクロスボウが発射された。案の定クロスボウはスカイの方へ飛んできた。
 だが、スカイは屈んで避けた。矢は壁に当たった。
 「危ねぇだろ!」
 スカイは叫んだ。
そして次の矢を、つがえる前に階段を昇っていった。

 

爆発音がした。
 「何の物音です」
 ポロロン様は言った。
 「何かの爆発音の様です」
 マーガリナは言った。
 プリムも頷いた。
 確かに、爆発音だった。
 「誰かが怪我をしたかもしれません、これから見に行きます」 
 ポロロン様は言った。
 「ポロロン様、なりません。伯爵様から、お部屋の外へ一歩たりとも出てはならないとの厳しい命令があるのです」
 マーガリナが言った。
 「怪我人を見捨てる訳には、まいりません。わたくしは誇り高いアッパカパー伯爵の娘です。私は治療魔術が使えます」
ポロロン様は扉へと向かった。



「あなた達は何者なのです。城の雇った兵士ですか」
 15、6歳の白いドレスを着た貴族の女が言った。
画に描いたように深窓の、お嬢様という、ありふれた形容詞が似合う感じの女だった。
 「俺達は冒険屋だ」
スカイは言った。
 「故あって、この城に忍び込み、ヘマあって捕まり、運あって脱走して逃げ回っている」
マグギャランは真面目な声で言った。
 確かにスカイ達の事情を簡単かつ明瞭に説明していたが、聞いていると情けなさが込み上げてきた。
 「マーガリナ先輩!ここは、お任せを!ポロロン様を安全な場所へ!」
 貴族の女のメイドが白いシャツの袖口から分銅鎖を引き抜いて構えた。鎖の長さは1メートル以上在る。
何?この女がアッパカパー伯爵の娘のポロロン・アッパカパーなのか?
スカイはポロロンを見た。典型的な、お嬢様顔であることは、間違いはなかった。写真写りが良さそうな顔だった。その写真を見て、小イジアが一目惚れした事は間違いなかった。
「なぜ、このアッパカパー要塞に侵入したのですか、あなた達は金品目当ての賊なのですか」
 ポロロンが言った。
 「俺達は冒険屋だよ。盗賊じゃねぇよ」
スカイは言った。
「それでは何故、城に忍び込んだのです」
ポロロンは言った。
「何だ、お前、何も知らないのかよ。元は、お前のせいと言えば、お前のせいなんだよ」
スカイは言った。
 「まあ、そういう見方もある」
 マグギャランも頷いた。
「お黙りを!」
 分銅鎖を持ったメイドが空中を飛んで跳び蹴りをスカイに向かって放ってきた。
 スカイはスェーバックして右足の蹴りを避けた。だが、分銅鎖を持ったメイドは空中で回転して左足の踵でスカイのコメカミを狙ってきた。右足の蹴りはフェイントだったのだ。スカイは左前腕部に着けた手甲で受けた。
 だが、更に空中から分銅鎖が飛んできた。
スカイではなくマグギャラン目がけて分銅鎖が飛んでいった。マグギャランがハッとして気が付いた。
 「なんとぉ!」
マグギャランが気合いもろとも剣を引き抜いて分銅鎖を受けた。
 分銅鎖女は分銅鎖を手首を返して一挙動でたぐり寄せながらスカイ達と間合いを取った。
「事の原因は、お前のせいでもあるんだぞ、ポロロン・アッパカパー」
 マグギャランは剣をポロロンに向かって突き付けて言った。
 「わたくしのせいですか?何故、そのような事が在るのです。わたくしには、なんらやましい所は在りません」
ポロロンは怪訝な顔でスカイ達を見ていた。
「ポロロン様、話してはなりません。早く、別の部屋に避難しなくてはなりません。この者達は世間一般では冒険屋と呼ばれる、ならず者達です」
 別の女が言った。