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情熱のアッパカパー要塞

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 ムササビはバカにした声で横を向いて溜息を吐いてから言った。
 「うるせぇよ」
 スカイは言った。
余計な、お節介だった。
「そうだ、昨日、俺はソークスに稽古を付けて貰って数段階パワーアップをしているのだ」
 マグギャランが言った。お前はソークス頼みかよ。スカイは情けなさで気合いが少し抜けた。
「ならぱ、前は相当弱かったのでござるな」
ムササビはマグギャランに挑発するように言った。
 「何を言う。ユニコーン流はコモンの大武術大会を制覇した名誉と栄光を持つ流派だ。騎士道を体現する気品と風格を兼ね備えている」
 マグギャランは言った。
 「ふっ、口だけは一人前でござる。弱い犬ほど、良く吠えるとは上手く言った物でござるな」
 ムササビは言った。
 「主君の命令で暗殺やスパイをする忍者の貴様こそ犬だろう」
 マグギャランは言った。
 「だから、拙者は、そのような暗くて地味な、やりがいの無い仕事を辞めて抜け忍となって。戦場で堂々と戦って名誉と名声と金を得ているのでござる。人を殺し続ける自分探しの結果拙者は天職に就くことが出来たのでござるよ」
ムササビは言った。
「何が自分探しだよ」
 スカイは言った。
人殺しで自分捜しをしているコイツの神経を疑った。
だが、ムササビはスカイの話しを全然聞いていなかった。
 「決めたでござる。ヌシ等は弱いから拙者は利き腕ではない左腕の小指のみを使って戦って進ぜよう。これもまた修行でござる」
 ムササビはオカマみたいに左手の小指を立ててスカイ達に振って言った。
「なめてんじゃねぇぞ!」
スカイは怒鳴った。
トンガリ頭の嫌な奴を思いだした。
あいつも相当の自惚れ屋で、鼻持ちならない奴だった。あんな奴の事を思い出したくも無かったが、ダンジョン競技の話のせいで思いだしてしまった。ジーウとは、ダンジョニアン男爵を倒した後、黒鷹の他のメンバー達と一緒に会った。あの時は、必ず勝負を後でつけると、お互いに罵り合いながら別れた。
 スカイは剣を振りかぶって背中に担ぐように構え、マグギャランは剣の刃に左手を添えた構えた。
スカイとマグギャランはムササビに向かって突進していった。
「うおりゃあ!」
スカイは気合いもろとも剣を振った。
「びょーん」
 ムササビは両手を上に上げてワカメの様にしなって避けた。
マグギャランはムササビが避けきった所に突きを放った。
 間違いなく有効なコンビネーションのはずだった。
「崩れ花車!」
 ムササビは、回避不可能な筈の奇妙な姿勢から前方にクルクルと回ってマグギャランの頭上を跳んでいった。金属鎧を着ているのに異常に身軽だった。
そして、「ふっ」とバカにした様な笑い声を上げて、片膝を付いた、しゃがんだ姿勢のまま頭だけ振り向いた。
 「弱い。弱すぎるでござる。いや、拙者が強すぎるだけなのかもしれぬが。強くなりすぎたが故に戦いを楽しむことが出来なくなってしまった者の悲しみをヌシらは一生理解は出来まい。そこまで隔絶した高さに拙者は今、立って居るのでござるよ。これは左手の小指ではなくて、左足の小指の方が良かったでござるかな」
ムササビはマグギャランの背後に着地してスカイ達を見ながら言った。
「冗談も大概にしろよ」
 スカイは怒りが沸き上がってきた。ここまでコケにされる、いわれは無かった。
 「ああ、そうだ。さっきから聞いていれば言いたい放題言ってからにして、しおってからに」
 マグギャランも、良く意味の判らない事を言い始めた。
「全力でカモーンでござる」
 ムササビはスカイ達に言った。挑発していることはスカイは判った。マグギャランも判っているはずだった。
「テメェ!この野郎!」
 だがスカイは怒りに任せて剣を振りかぶって突進していった。
「許せん!」
 マグギャランも、ほぼ同時に剣を構えて駆けだしていた。
しばらくの間、スカイと、マグギャランは連続して何度も何度もムササビ相手に切りかかっていったが全てかわされていた。
「ああっ、何と拙者は強いのでござるか?ああっ、強い、強すぎるでござる」
 ムササビはフラフラと身体を揺すって独り言を言いながら。余裕扱いてスカイとマグギャランの剣を体裁きだけで、かわしていった。
スカイとマグギャランは息を切らして肩で荒い息をしていた。
「畜生め!何で当たらないんだ!」
 スカイは終いには腹が立って叫んだ。当たりそうなのに、当たらないギリギリの所でムササビは巧みに避けているのだ。スカイが当てたと思った瞬間に避けているのだ。
 「これが動かし難い実力の差というものでござるよ」
 ムササビは鉄の仮面の下では確実に嘲笑って居るような声を出していた。
 息が上がっているスカイ達に比べて、全然余裕だった。呼吸が乱れていなかった。
 「ヌシら殺す価値もないクズ共で在るな」
ムササビはスカイ達に言った。
「牢に捕まり鎖に繋がれ、せいぜい生き恥をさらして不様に朽ち果てるがよい」
 ムササビは言って手を挙げた。
 すると、いつのまにかスカイ達は鎧を着込んだ完全武装の兵士達に回りを囲まれている事に気が付いた。
 スカイとマグギャランは息が上がっていて動けなかった。
 そして腕や脚を掴まれて地面に引きずり倒された。 
 「くそっ、へばってなきゃ捕まりもしないのによ」
 スカイは言った。
 コロンも兵士達に捕まっていた。
その時、スカイの携帯電話が鳴り始めたが、
兵士達に捕まって受け取りようが無かった。



 「ここが「第105賓客室」か」
 ローサルは言った。
 部屋の前には五人の鎧姿の氷柱が在った。
 「ひでぇ事しやがるな冷凍人間だぜ」
 ソフーズがガムを膨らませながら言った。
 「くだらん。冷凍系の呪文より雷光の方が数段優れている」
 シャールは言った。
「まあ、取りあえず…」
 扉に近づいたローサルは手が止まった。扉の前から異常な殺気が押し寄せてきていた。
この気配は今まで感じたことがなかった。だが、これは、紛れもなく、酷く危険なモノが居ることをローサルは感じ取っていた。
 「…ローサル。この気配は異常だぜ」
 ソフーズが言った。
 「ああ、どうやら、やはりリート・ボンドネードのヤツは、俺達をハメる気だったようだな」
 ローサルは言った。
砕破の言葉を思いだした。
 屍様と戦おうなどとは考えない方がいい。
 「だが、小イジアは、この中に居る」
 シャールは言った。
 魔術師のシャールは、気配を感じる能力が劣る。この中にいるバケモノの気配を感じていないのだろう。だが。シャールの語尾も少し、うわずっている。無意識の内に、この中のバケモノの気配の影響を受けているのだ。
「ローサル、開けるか?」
 ソフーズが嫌そうな顔で言った。
 「罠は無いんだろう。俺が開ける」
 ローサルは言った。
 そして扉を開けた。
 中にはソファーに寝そべった黒い服を着た男がいた。あと、小イジアと2人の男、そして、ボンドネード・ファミリーが全員居た。