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情熱のアッパカパー要塞

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 「お前は、かなりの剣の腕を持っているはずだ。なぜ戦わない。剣を持って命を懸けて戦うスリル以上の楽しみなんて、この世に他に無いだろ」
 屍は鞘に入ったカタナで肩を叩きながら言った。
「いえ、私は、ただの、しがない冒険屋でしか在りません。命の、やり取りなどは、我が身可愛さ故に毫も興味は在りません。どうか寛大な慈悲の心で、私の命を、お見逃し下さい」
 リート・ボンドネードは土下座したまま言った。
 「俺は、今回、冬風が腕の立つ武芸者達と戦えるという触れ込みを聞いて、アッパカパー要塞の用心棒を引き受けたんだ。だから、お前も剣を抜いて、俺と戦え」
 確かに、噂以上の、命のやり取りしか考えていない刃物バカだ。
 だが、それならば、リート・ボンドネードにも考えが在った。
 「それでは、私が、他のパーティを呼んで来ましょうか。その中に、あなたと戦える様な武芸者が居るはずです。例えば。ユニコーン流でコモンの大武術大会を個人戦の部門で制したソークス・バンド。ペガサス流でコモンの大武術大会団体戦を制したジェラール・ジェラルドなどが、おります。あと、若くてイキの良い冒険屋が二組おります」
 リート・ボンドネードは携帯電話を取りだして言った。



ローサル達は物置のような部屋の中で休憩を取っていた。
 ローサルの携帯電話が鳴った。
大体,見当は付いていた。
「私だ。リート・ボンドネードだ。ローサル君」
 携帯電話からは予想通りの声が聞こえてきた。
「何の用だよ」
ローサルは答えた。
奴が何か企んでいることは間違いなかった。
 「要点を、かいつまんで言おう、小イジアの居場所が判明した。だが、我々では手出しが出来ない状況だ、そこで、我々は、この仕事を諦めることにする」
 リート・ボンドネードは、そう言った。だが、ローサルは騙されなかった。奴は必ず何かを考えている。「裏切りのリート・ボンドネード」は。



「私だ。リート・ボンドネードだ。カーマイン女卿」
ミラーナは、ナバーガーから、携帯電話を渡された。
「ボンドネード・ファミリーが何の用だ」
 ミラーナは言った。
「小イジアの居場所が分かったが。我々は手出しが出来ない状況だ。そこで、我々は、この仕事を諦める事にする」
 リート・ボンドネードが言った。
 「我々も、この仕事はキャンセルする。以後、電話は掛けないでくれ」
 ミラーナは言った。
 もう、小イジアの居場所は関係なかった。これから、アッパカパー伯爵に会う事が重要だった。カーマイン大公国奪還の為に。
「狡っ辛い事をするのね冒険屋は」
 冬風が言った。



 ソークスは携帯電話を受けた。
 「私だ。リート・ボンドネードだソークス君」
携帯電話から声が聞こえてきた。
ソークスはリッカに携帯電話のアンテナを指さした。
「何?」
 リッカは怪訝な顔をしていた。
 ルージェイがリッカの右耳を引っ張って小声で囁いた。リッカは目を丸くして大きく頷いた。そして背中のラップトップを取りだして、三次元モニターを点けた。アッパカパー要塞の今まで通ってきた見取り図が立体で浮かび上がった。
 そしてソークスはリッカに小イジアがいる「第105賓客室」の場所を確認させた。ここから、結構歩くが、決して遠い距離ではなかった。



「拙者の名はムササビ。フラクター選帝国ヤマト領からの抜け忍の身でござる」
 スカイ達の前に全身に金属鎧を纏った男が姿を現した。
「何だありゃ」
 スカイは言った。
よく判らない奴だった。
 「スカイ。あれはフラクター選帝国の忍者だ」
 マグギャランが言った。
 「おう、アレが有名な忍者なのかい。初めて見るな」
 スカイは言った。
 「『軍事戦略月報』や『月刊ミリタリー・バランス』などの雑誌をちゃんと読めスカイ」
 マグギャランは言った。
どちらもスカイとは縁のない軍事オタク向けの雑誌だった。
だが、スカイ達を無視してムササビは勝手に話し始めた。
「ヌシらW&M事務所のせいで、拙者はダンジョン競技のダンジョン・ストーカーの地位を追われて、失業したのである。ここで会ったが百年目、積年の恨みを晴らすには良い機会でござる。現実的には、まだ三ヶ月程前の話では、ござるが、拙者の中では百年分の恨みと同じ程に積もりに積もって熟成して発酵していると知れい。各々方、判ったか」
ムササビは一人頷きながら言った。
「何だよ?お前はダンジョン・ストーカーだったのか?見たことは無いぞ」
 スカイは言った。
確かに見たことは無かった。
 こんな奴が居たことも知らなかった。
 「ああ、そうだ。俺も見たことがない」
 マグギャランも言った。
「…知らない」
 コロンも首を振って言った。
ムササビは叫び声を上げた。
 「何!ダンジョンストーカー・キリングランキング二位であった拙者を知らないだと!ヌシらがダンジョニアン男爵様を、おかしくしたのだぞ!そして、おかしくなったダンジョニアン男爵様はダンジョン・ストーカーズを、あの日突然、全員解雇したのだ!拙者の名前はムササビ!ヌシ等、思い出せい!拙者がエージェントに版権を管理させているブロマイドとポスターとフィギュアなども土産物屋と通信販売で売っていたのだぞ!」
 ムササビという忍者は怒りだした。
 「だから知らないモノは知らないって、なあマグギャラン」
 スカイは言った。
 こんな奴のブロマイドやフィギュアを買う奴の気が知れなかった。
 「ああ、そうだ。俺は知らないぞ」
マグギャランも相づちをうった。
 「ええい!拙者は、強くなりたかったのだ。その為には、ダンジョニアン男爵の迷宮競技は格好の修行の場であった。次々と様々な敵と戦えて、エージェント契約してプロの殺人アスリートとして大金が手に入って拙者は非常に満足していたのだぞ」
ムササビは言った。
 「何だよ、あんな殺人ゲームで何の修行をするんだよ」
 スカイは言った。
 「それは殺しのテクニックの修行であった。拙者は、忍者として様々な殺しのテクニックを身に付けてエリート忍者としてフラクター選帝国ヤマト領で日々働いていたのだが。どうも、影に生きる日陰者の人生に嫌気を感じて。正々堂々と戦場で戦う事によって、殊勲をば得ることに人生の喜びを見いだすようになったのでござる」
ムササビは言った。
 「人殺して自慢しているんじゃねぇよ」
 スカイは言った。
 「ふっ、戦いこそ、我が人生。強き者と戦う事こそが我が生きる意味」
 ムササビは言った。
 どうも不味い奴だ。
 スカイはピンチを感じていた。
 コイツはスカイ達を殺すことを何とも思っていない。どうしようもない人殺しの殺人鬼のようだった。しかもスカイの嫌いなナルシストの手合いだった。
 「ダンジョン競技をリストラされた恨みを晴らさせて貰うでござる。覚悟召されよ」
ムササビは言った。
 「何だよ。俺達、関係ねぇよ」
 スカイは言った。
 「ああ、そうだ、逆恨みの逆ギレだ」
 マグギャランは言った。
スカイとマグギャランは剣を抜いて構えた。
 「ふっ。ヌシ等。弱いな。全然強さを感じぬ」