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情熱のアッパカパー要塞

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 「だが、現在は鋸卿が主導する議会に国を乗ってられてしまった。そして鋸卿は狡猾にもミドルン王国との主従関係を続けたまま議会制民主政治を行っていると言いながら独裁政治を行っている」 
「人切り鋸を持った黒頭巾の選挙管理員が行う公開選挙の、どこが民主制だと言うのだ」
ミラーナ・カーマインは吐き捨てるように言った。
「民主制になっても権力者の家系は変わらない。これは通説よ。何故、あなた達のカーマイン家は権力を失ったの?」
「鋸卿は、共和制をカーマイン大公国において行うという改革を行ったが、それは、ただの口実であり。その真の姿は秘密結社ミスティック・パンドラがカーマイン大公国を恐怖で支配する、この世の地獄に他ならない」
 「成る程ね。私も聞いた事があるけれど、そのミスティック・パンドラの噂は本当なの」
「間違いない。カーマイン家の情報組織がミスティック・パンドラだった。だが、ミスティック・パンドラは、いつの間にかカーマイン家を裏切っていた。地代地主を中心とした新興勢力に乗っ取られていたのだ。その代表者が鋸卿だ…」
 ミラーナは言った。
「姫様、話しすぎです」
 ジェラールがミラーナに言った。
ミラーナは、いつの間にか、喋る必要の無いことまで喋っていた事に気が付いた。この女は、人から話しを引き出す事が上手いという事に今気が付いた。
 仮面を被った、女の顔を見た。
 その口元は皮肉な笑いが浮かんでいた。
 「あなたは、人は良いけれど、人の上に立つことには必ずしも向かないようね。単純過ぎる君主も考えものでしょ」
 女はミラーナに、そう言った。
 「姫様に、向かって何という無礼を!」
 ラーンが腰の二丁剣を抜いて前に出てきた。
「ラーン。短剣を収めろ。これは政治の話だ」
ジェラールがラーンの肩を押さえて言った。
 「姫様は、立派な徳を持っています。このラーンにとって最高の君主様です」
 ラーンは言った。
「ラーン。お前の忠義は判るが。政治の話しに口を挟むな。黙っていろ」
 ジェラールが言った。
 「しかし」
 ラーンは言った。
 「ラーン。黙っていてくれ。これは、カーマイン家の再興の為に重要な一石となる」
 ミラーナは言った。
 「姫様が、そうおっしゃるのなら判りました」
ラーンは黙って二丁剣を収めた。
「ふふっ。可愛い娘を連れているのね。それで、アッパカパー伯爵にどんな用事があるのかしら」
女は言った。
 「アッパカパー伯爵に、カーマイン大公国再建の為の鋸卿包囲網に参加して貰う。イシサ聖王国に人脈を作りたいのだ」
 ミラーナは言った。
「話しを聞く限り、あなた達は、アッパカパー伯爵に危害を加えることが目的でないことが判ったから。私がアッパカパー伯爵の所まで案内しましょう。まあ、あなたは美人で有名だから、ウチの旦那が興味持つかと思って心配していたけれど、ウチの旦那は黒髪以外には興味無いから、まあ、大丈夫ね。私の名前は冬風。傭兵団屍の副団長よ」
そう女は名乗った。
 「冬風?タビヲン王国の黒竜太子一党の軍師だった、ルヒエ王国出身の双輝星の片割れマレット・ポチョンか」
ジェラールは言った。
「当たり。でも今は旦那が付けた冬風という名前で呼ばれている」
 冬風は言った。
ミラーナ・カーマインは、ジェラールが言ったマレット・ポチョンの名前を聞いて、ようやく冬風が、誰だか判った。タビヲン王国の仮面軍師、鬼面丞と好敵手と呼ばれた女軍師だ。個人的な武勇でも優れているという。
双輝星はミラーナが十代の頃、タビヲン王国での活躍での勇名を聞いて憧れていた二卵性双生児の女騎士達だった。



「我が名は幽鬼。フラクター選帝国の一介の武人であり傭兵団「屍」の死剣士の一人である」
 フラクター選帝国ヤマト領の鎧を着た、痩せこけた男が名乗りを上げた。
回りには鎧を着た兵士達が何人もいる。イシサ聖王国の聖騎士の紋章を鎧に付けている
者達も何人もいる。ソークス達は、小イジアの居場所を目指してアッパカパー要塞の中を探し回っていた。
 「ソークスは何処にいる」
 幽鬼は言った。
 「ソークスは俺だ」
 ソークスは自慢の愛槍「鎧通し」を振り下ろして名乗りを上げた。
 「そうか、ならば我と立ち会え。お前が、屍と戦うに値するか品定めをしてやる」
幽鬼は言った。
 「ソークス、こんな奴は俺で十分だ。お前は出る必要はない」
 マウドが剣の鞘を払って言った。
 「うぬが如きの剣が我に通用すると思うのか。我は最強の戦士集団である侍であるぞ」
 幽鬼が言った。
 「試してみなければ判らないだろう。侍風情がコモンの騎士を舐めるな。俺は弱くはない。グリフォン流剣術皆伝の腕を見せてやる。俺の名はミドルンの騎士マウド・ベルター」
 マウドは言った。
「フラクター選帝国ヤマト領、空眼流剣術皆伝、幽鬼」
幽鬼は言った。
「それでは、幽鬼殿、他の冒険屋達とは我々が戦います」
イシサの聖騎士達が言った。
額に11と書かれた少女がムチを振るった。すると3メートルぐらいの背丈の道着を着たサルが3匹と、5メートルぐらいの長さのワニの足が付いたサメが2匹動き始めた。
「ペロピン!グレネード発射!いっけぇ!」
 リッカがペロピンに叫んだ。ペロピンは飛び蹴りを放つ巨大な猿に向かって左腕からグレネードを発射した。猿の頭がグレネードの爆発で吹き飛んだ。
 そして肉片と血が辺り一面に撒き散らされた。
「うえっ、私も戦うんですか?私は医者なんですよ」
 ルエラが泣きそうな顔で腰のベルトに差した鋼鉄製のトンファーを二本取りだして両手に持った。そして内股でヘナヘナと構えた。
ルージェイは「影走り」という、トリッキーな動きで、鎧を着て剣を持ったイシサの聖騎士達に間合いを詰めて、ナイフで手甲の内側の手首の腱と動脈を切った。
ソークスも聖騎士達の利き腕の肩の付け根を次々とスピンドル・スラストで打ち抜いて剣を落としていった。
そして、道着を着た猿の首を打ち抜いた。
マウドと幽鬼は切り結んでいた。剣の腕はソークスの見たところ、ほぼ互角だった。 
途端にマウドの動きが止まった。
「秘剣、幽鬼の構え」
 幽鬼が言った。
そして流れるように前に出て間合いを詰めて太刀を大上段に振りかぶり振り下ろした。
そしてマウドは避けることも無く切りつけられた。
 そして血を吹き出して倒れた。
「マウド!」
 ソークスは叫んだ。
 マウドは剣の達人だ。それなのに一太刀で切られた。技量だけならマウドの方が、わずかに上に見えた。
「マウドさん!」
 ルエラがマウドに駆け寄った。
 「ルエラ、マウドを頼む!」
ソークスは槍を構えた。
 「任せて下さい!」
 ルエラは言った。そして医療魔術を使い始めた。ルエラは苦手な物が多いが、血に対する恐怖症だけは無かった。
 「それでは一騎打ちを行うか。ミドルンの騎士ソークス」
 幽鬼は無表情のままマウドの血を払い落として太刀を両手で構えた。
 「望むところだ。マウドの仇を取ってやる」
 ソークスは槍を3本足の構えで構えた。
「参る」