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情熱のアッパカパー要塞

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 吹き飛ばされた先では、マグギャランが腕を組んでいた。
 コロンとクローン人間の女も無事だったようだ。
「特大のマンモ肉の出来上がりだな」
 マグギャランは言った。
「なんだい、あの爆発の仕方は」
スカイは言った。
 「反物質エンジンのジェネレーターが燃えたのよ。エンジンが爆発したら、この辺一帯は吹き飛ぶけれど、どうやら、セイフティ・システムがエンジンを保護したようね。エンジンさえ残っていれば「暴虐王」は、また、再建できるでしょう」
 ニワデルは言った。
「あなた達、「暴虐王」の修理に幾ら掛かると思っているの」
 腕を組んだスローターがスカイ達を冷たい目で睨み付けた。
 「そう、わたしの「虐殺王」も壊したでしょう」
ニワデルが言った。
 「と、取りあえず、要塞に突入するぞスカイ」
 マグギャランは不味そうな顔をして言った。
 「おっ!おおっ!コロン姉ちゃん行くぞ!」
 スカイはボケーッと突っ立っているコロンを引っ張った。
 コロンも気が付いてハッとしてビクッとして要塞の中へと前を向いたまま後ろ向きに駆けていった。
「逃げても捜し出して、後で請求書を回すからね」
 スローターが言った。
「そうね、私も請求書を出さないと」
 ニワデルも言った。
 だが、スカイ達は、水の入ったバケツを持った真剣な顔の兵士達が集まってきた横を通り抜けて。アッパカパー要塞の正門らしい城門から中へと突入していった。
「おい!お前達はW&M事務所だな!」
 早速、兵士達から誰何された。
 「不味いぞスカイ!」
 マグギャランが叫んだ。
 「シラ切って、このまま走って逃げるぞ!」
スカイも叫び返した。 
 スカイ達は鎧を着た完全武装の兵士達に追われながらアッパカパー要塞の奧へと走って入っていった。鎧を着ていない分、スカイ達は兵士達を少しずつ引き離していった。


 
 「まさか、堂々と正門の鉄の扉を破壊して中に侵入するとは。呆れた話ね」
 コーネリーがリッキーンの「影の鳥」で影になったままアッパカパー要塞の正門の前で言った。
 「やはり、どうしようもない馬鹿者達だな」
 リート・ボンドネードは言った。
まさか、あんなデタラメな方法で、要塞の中に入っていくなど、冒険屋業界に長いこといるリート・ボンドネードでも聞いた事は無かった。



ローサル達はダンジョンの中を歩いていた。ロード・イジアが、くれたダンジョンの地図は正確だった。罠が、あちこちに在ったが。今は作動したり動かないように止められていたり落とし穴には木の橋が架けられていたりした。
 向こうから、明かりを持った一団が来た。
 頭から足の先まで鎧で覆った兵士達が素早く数えて十四人居た。
 その一団の先頭には奇妙な作りの鎧を着た男が居た。フラクター選帝国のヤマト領の鎧だ。
「俺の名は砕破」 
ローサル達は全身をフラクター選帝国のヤマト領の鎧で覆った大男と対峙した。3メートルぐらいの体格だとローサルは見た。そして全身に筋肉が発達しているような体格だった。右手には先が太くなっている鋼鉄の金棒を持っていた。
そして、砕破は金棒で床を叩いた。
 すると床の石が粉々に吹き飛んだ。
「何だよ、人間なのか、お前。すげぇ力だな」
ローサルは剣を両手で構えながら言った。
砕破と言う奴はモンスター並の怪力を持っている様だった。
「紅毛碧眼の、お前が何故、フラクター選帝国ヤマト領の、はぐれ者達の仲間になっている」
 シャールが言った。こいつと、まともに戦うのは危険に思えた。シャールが上手いこと、話を開始した。
 「俺は、タビヲン王国を捨てて屍様の下で武人として生きる道を選んだ。俺は元はただの小作人の貧民だ。だが、屍様は、領主に抗う事を教えて下さった」
 砕破は言った。
 「何だよ、俺達と同じ様な貧乏人の庶民かよ。俺達は全員ミドルン王国の首都ウダルのスラム街から這い上がったんだよ」
 ローサルは言った。
「そうだよ、俺達は、金掴んで、成り上がるために冒険屋張って生きて居るんだよ。どうせ下も下のどん底見て生きてきたんだ。上に上がろうと思ったら上がり続けるしか無いんだよ」
ソフーズが言った。
「今の俺は武人だ」
砕破は言った。
「戦いづらいな。俺たちゃ似たもの同士だぜ。戦う事はねぇだろう」
ローサルは言った。
どうも、こいつとは戦うの避けた方が良さそうだ。腕力の強大さだけではなく、余りにも、似たもの同士だ。似たもの同士で殺し合うことはない。
「それも、そうだな」
 砕破は大きく、歯を見せながら笑って言った。
「何を言っているのだ砕破殿」
全身を鎧で覆った騎士らしい男が言った。
砕破は巨大な金棒を見えない速さで振り回した。一振りで四人の騎士達の首がヘルメットごと割れて血しぶきと共に吹き飛んだ。振り抜いた後で初めて金棒を振り回したことに気がつくぐらいの速さだった。これは避けることの出来ない速さだ。話している最中も油断はしていないつもりだったが、それでも一瞬砕破の腕の動きが見えなかった。
「何をするのだ砕破殿!」
 他の騎士達が武器を構えた。
 だが、砕破は巨大な金棒を振り回して、構えた武器ごと次々と騎士達を血しぶきと共に打ち殺した。紛れもなくコイツは怪物だった。怪力だけじゃなく、重い金棒を異常な速さで振り回せる。ローサルの目がようやく砕破の金棒の速さに追いつき始めた。こんな奴と戦わなくて良かったとローサルは思った。
「通れ。誰も見ていない」
砕破は笑って言った。
「お前、いい奴だぜ」
 ローサルは笑いを浮かべた。
「屍様は、もっと「いい奴」だ」
 砕破は笑って言った。
 「ありがとよ。通らせてもらうぜ」
 ローサルは言った。そして、他のメンバーに手で合図をした。
 「お前達。小イジアを捜しているなら、屍様と会うことになるだろう。だが、屍様と戦おうなどとは考えない方がいい。忠告だ」
 砕破は言った。
 「タビヲンの四剣士の話は知っているぜ。そんな奴と戦おうなんて思わねぇよ」
 ローサルは言った。
「それが正解だ」
 砕破は言った。
 タビヲンの四剣士の話はローサルも知っていた。並はずれた剣の使い手らしい。ローサルは、自分の腕っ節には自信が在ったが。自惚れては居なかった。自分の敵わない相手と戦う事は無かった。屍が、この砕破よりも強いことは間違いない。だが、タビヲンの四剣士の一人、屍が小イジアの護衛をしているとなると、これから先、どうなるかは判らなかった。



「あなたが、ミラーナ・カーマインね」
 ミラーナの前に、白い服に黒いマントの
男装の女が現れた。顔の上半分は金属製の仮面で覆われている。口元には蠱惑的な赤い唇が見えた。口は大きすぎもせず小すぎもしなかった。整った輪郭をしていた。
 「そうだ」
 ミラーナは答えた。
 「ミドルン王家に従属するカーマイン大公国の嫡女」
 「その通りだ」