情熱のアッパカパー要塞
「ここは、こうだ!スカイ!ユニコーン流の太刀筋を、このロボットで再現して見せる!」
マグギャランは操縦桿を奪って操縦した。
マグギャランの操る「虐殺王」の剣が、「暴虐王」の回転する剣と交差した。火花が散った。
「俺に任せろよ!」
スカイは、操縦桿をマグギャランから奪った。
「暴虐王」のドリル・ソードが突き出されるが。スカイは盾で受けた。だが、ドリル・ソードの刃が盾を貫通して右側に抜けた。
「暴虐王」が再び突きを放ってきた。
スカイは剣で受けた。
「同じ回転突きを使う以上。ユニコーン流皆伝の俺が遅れを取るわけにはいかぬ!俺に操縦させろスカイ!」
マグギャランは、「暴虐王」のドリル・ソードとヒート・ブレードで火花を散らしながら打ちあうスカイから操縦桿を奪おうとした。
「「虐殺王」のヒート・ブレードは切るために在るのですよ。突きに使ったら意味は在りません」
ニワデルが言った。
「それでも、俺はユニコーン流の突きを使うのだ」
マグギャランは、スカイから右手の方の操縦桿を奪った。
そして、「虐殺王」はバランスを崩しながらも回転突きを「暴虐王」に放った。
「しょうがねぇな」
スカイは、またバランスを崩し始めたので左の操縦桿を離して操縦席をマグギャランに明け渡した。マグギャランが左の操縦桿も握って操縦席に座った。
「暴虐王」は巨大な盾で受けたが盾を虐殺王のヒート・ブレードが貫いていた。
「突きから切りに変化する!」
マグギャランはヒート・ブレードを横に薙ぎ払った。
「暴虐王」の巨大な左腕が落ちた。
「くっ…何という無茶な動きを」
スローターの冷たい声に焦りが出た。
片腕となった「暴虐王」は一旦後ろに引いた。
「逃がさん!」
マグギャランは叫ぶとヒート・ブレードの突きを更に「暴虐王」目がけて出した。
「暴虐王」は右側に避けた。突進した拍子に「虐殺王」のヒート・ブレードはアッパカパー要塞の城門に突き刺さった。
「ええい、勢い余ったか!」
マグギャランはヒート・ブレードを城門から引っこ抜こうとした。だが、なかなか引っこ抜けなかった。
「何やって居るんだよ!」
スカイは言った。
だが、ヒート・ブレードを引っこ抜くついでに、アッパカパー要塞の鋼鉄製の十メートルぐらい在る巨大な城門が盛大に切り裂かれて両開きの鉄の扉の左側を引きはがした。
鋼鉄の扉が音を立てて倒れてきた。
「アブネェ!」
スカイは倒れて来た鋼鉄の扉を見て叫んだ。
だが、マグギャランは「虐殺王」の盾を持った左腕で城門の左半分を支えた。そして城門を奥の方へ向かって押し倒した。
城門の奥の方は、かなり高い天井の空間が広がっているようだった。
「…後ろからマンモス!」
コロンが小さく鋭く言った。
「ええい、マンモス、何するものぞ!きぇぇぇぇい!秘剣マグギャラン斬り!」
マグギャランは「虐殺王」を振り向かせた。そしてヒート・ブレードを横殴りに突進してくるマンモス向けて切りつけた。
「虐殺王」の巨大なヒート・ブレードは、横からマンモスの顔に食い込んだ。
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
マグギャランは雄叫びを挙げて一気にヒート・ブレードを横に薙ぎ払った。
虎縞のマンモスは突進してきた勢いのまま、上下に両断された。ヒート・ブレードは凄い切れ味だった。
「…横!」
コロンが、スカイを突っついた。横を見ると「暴虐王」が、ドリル・ソードを構えて突進してきた。
「ちょっと待て!」
マグギャランは慌てた声で言った。
不味い!避けきれないぞ!
「虐殺王」は、ぐるりと横を向こうとした。だが、突進してきた「暴虐王」のドリル・ソードがスカイ達の真っ正面から突き出された。
スカイは死を覚悟した。
だが、「暴虐王」のドリル・ソードは上へと逸れていった。
そして火花が頭上から降ってきた。
アブネェ。
どうやら、マグギャランが「虐殺王」の姿勢を低くしたようだった。後ろを見ると「虐殺王」の頭が無くなっていた。
マグギャランは「虐殺王」のヒート・ブレードで突きを放った。「暴虐王」もドリル・ソードで突きを放った。マグギャランは「虐殺王」の盾でドリル・ソードを受けようとしたが。盾を貫通してドリルソードがスカイの足下の胴体に、めり込んでいった。
「虐殺王」のヒート・ブレードも「暴虐王」の胴体へと突き刺さっていた。
そして二体のロボットは動かなくなった。
どうやら、相打ちになったようだ。
「暴虐王」から煙が上がった。スカイ達の足下の辺りからも白い煙が上がった。
「動かないぞ!」
マグギャランが操縦桿をデタラメに操作しながら言った。
「「虐殺王」は壊れました。早く逃げるのです。「虐殺王」の反物質エンジンが爆発したら。この一帯は吹き飛びます」
ニワデルが言った。
「そんじゃ逃げるぞ。だが、少し、高いな」
スカイは、下を見た。飛び降りるのは難しかった。スカイは身軽だから良いが。マグギャランやコロンが飛び降りるには少し高すぎた。5、6メートルの高さがあった。
「非常用の脱出装置が在ります」
ニワデルが言った。
そして、マグギャランが座っている椅子の後ろから縄ばしごを取りだした。
「何だよ発明家の「鋼鉄の歯車」学派の割にはセコイ物使うじゃねぇか」
スカイは、縄ばしごを「虐殺王」の操縦席の横から下へ落としているニワデルに言った。
「「鋼鉄の歯車」学派の魔術師でも食事の時はナイフとフォークを使います。それと同じです」
ニワデルは言いながら、縄ばしごを降り始めた。
コロンは呪文書の革表紙に付けたストラップで、背中に背負って、魔術師の杖を呪文書の革表紙に付けた金具で固定して縄ばしごを降り始めた。続いてスカイが降りはじめ、最後にマグギャランが降りていった。
「縄ばしごが途中で切れるとか言う事は無いよな」
スカイは言った。
「大丈夫です。しっかりと、丈夫な縄ばしごを使っています」
ニワデルが下の方で言った。
スカイが向こうの方を見ると、「暴虐王」
からも縄ばしごで人が降りていた。ニワデルと同じ様な色違いのデザインの服を着ていた。髪型は金髪のショートカットで、七三に分けていた。
スカイ達は「虐殺王」から走って逃げ出した。
「私のトランモちゃんが」
額に3と書かれたクローン人間の女がマンモタイガーの上下に分断された巨大な死体に向かってフラフラと歩いていった。燕尾服の背中には3とスパンコールの様な物で書かれている。
「おい、そっち行くと爆発するぞ!」
スカイは叫んだ。
「スカイ、構うな、そいつはクローン人間だ。およそ人間が神様の真似をして生命を創造するなどイケナイ事なのだ」
マグギャランは言った。
「放っておけるかよ」
スカイは言った。
コロンも頷いた。
スカイはクローン人間の右腕を引っ張った。コロンは左腕を引っ張った。
「私のトランモちゃん」
と、力無く、繰り返しているクローン人間を引っ張っていった。
その時、爆発が起きた。
スカイは爆風で吹き飛ばされた。
しばし気を失って目が覚めた。
作品名:情熱のアッパカパー要塞 作家名:針屋忠道