情熱のアッパカパー要塞
リート・ボンドネードは言った。
あの三人組が、どうやってアッパカパー要塞に潜入(これだけ大騒ぎを起こせば、もう潜入は出来ないはずだったが)するかが問題だった。それに、よってリート・ボンドネードの作戦も変わってくるからだ。
スカイ達の奪ったロボットは半日町の中の一番奥の方へと走っていった。
奧の方には垂直に削られた岸壁と鋼鉄の巨大な扉があった。
「見ろスカイ!もう一体ロボットが居るぞ」
マグギャランが言った。
「…虎縞のマンモスも」
コロンも言った。
スカイも前を見ていて、さすがに不味かったと思っていた。目の前の城門には、角の生えた7、8メートルぐらい在るロボットと、同じぐらいの背丈の巨大な黄色と黒の虎縞のマンモスが居た。その背中には銀色の燕尾服を着た女が乗っかっていた。額に3と書いてあった。さっきアッパカパー峠でリート・ボンドネード達と戦っている時に見た女と全く同じ顔に見えたが双子か何かかもしれなかった。だが番号からすれば六児なのかもしれなかった。
アッパカパー要塞の正門の左右にデンとロボットとマンモスが構えていた。
「どうするんだ、スカイ」
マグギャランは、うわずった声で言った。
「当然、このロボットで戦う。動かし方は結構簡単だったからな」
スカイは不味いと思いながらも、そう言った。
「あれは、一体何だと言うのだ」
マグギャランがニワデルに言った。
「あれは「暴虐王」。私達「鋼鉄の歯車」学派が過去に作り出した鋼の巨神」
「…虎縞のマンモスは」
コロンが聞いた。
「「二重の螺旋学派」のワールワルズが作った悪趣味な「作品」よ」
ニワデルは言った。
「…あの女の子は人造人間なの?」
コロンが言った。
人造人間?それは一体何なのだ。
スカイは思った。
「人造人間?随分遠回しな言い方ね。あれは、ワールワルズが作ったモンスター・ティマーの少女。悪趣味なクローン人間よ」
「なに、あれが有名なクローン人間なのか?試験管か何かでミジンコみたいに培養するという話だろう」
スカイは伝聞や噂などで聞いたクローン人間に関する話を総合して言った。
「私は「鋼鉄の歯車」学派の魔術師だから詳しくは判らないけれど、同じ顔をした娘が15、6人も一度に産まれるなんて不自然でしょ。間違いなく、あの娘はクローン人間よ」
ニワデルは言った。
「まあ、いいや、ロボットとマンモスの二体がかりだろうが。今日は絶好調の俺が仕留めてやるぜ」
スカイは「虐殺王」の巨大な剣を横に振るって言った。
「…殺すのは可哀想」
コロンが言った。
「何、動物愛護の精神を発揮しているのだコロン。あの巨大なマンモスは、先程のサルの頭が付いた巨大なクモのように生命倫理に反するイケナイ行いによって作られたのだ」
マグギャランは言った。
巨大な「虐殺王」の五メートルぐらいの長さのある剣をスカイは構えさせた。
対峙したロボット「暴虐王」から女の声がした。
「ニワデル博士どういう事ですか」
そう冷たい声で言った。
ニワデルが左側のスイッチを押した。
そしてコードの付いたマイクを取りだした。
「スローター博士。今、「虐殺王」は冒険屋のパーティ『W&M事務所』に奪われてしまいました」
ニワデルは言った。
「判りました。ですが。私は城門を守る仕事として、あなたの乗る「虐殺王」を破壊します。ニワデル。出来るだけ、あなたを殺さないように努力をします」
スローターの冷たい声がした。
「「暴虐王」のドリル・ソードは強力な武器です。まさかスローターの「暴虐王」と戦う事になるとは」
ニワデルが言った。
向かい合った、ロボット「暴虐王」のドリル型の剣がドリルの様にグルグルと回転を始めた。そして盾を前にして構えた。
「このロボットには何か、武器が付いていないのかよ」
スカイは言った。向こうだけ強そうな武器が付いているのが釈然としなかった。
「「虐殺王」には武器は…あっ!」
コロンが座っている所を見て、ニワデルが
大声を上げた。
「ヒート・ブレードのスイッチが入っているじゃないですか」
ニワデルが言った。
「ヒート・ブレード?何だ、それは」
スカイはニワデルに聞いた。
「「虐殺王」のメイン・ウェポンの高熱を発する剣です」
ニワデルは言った。
「そう言えば、さっきから、熱い様な気がしていたが。これは剣が熱を発しているからなのか…しかし」
マグギャランは何か考えているような口調で言った。
「おい、スカイ、お前ではダメだ俺に貸せ」
マグギャランがスカイの右手で握っているレバーを引っ張った。
ロボットの剣が上がった。
だが、変な方向に剣が向いて手が、ひん曲がって上がっていた。
「何やっているですか。この「虐殺王」は、操縦桿の筋電位センサーが神経の電位を拾って動かすので、一度に二人の人間が操ろうとするとエラーが生じて動きが混乱するんですよ。ほら、バランスを崩している」
ニワデルは言った。
確かにロボットがバランスを崩して傾き始めていた。
「スカイ、馬鹿者、お前の剣の腕では、ダメだ俺に操縦を代われ。これは乗り手の意志をダイレクトに反応させるマシンだ」
マグギャランがスカイの右腕を引っ張って。
「…マンモス!」
コロンが小さな声で鋭く叫んだ。
巨大なマンモスが、巨体の筈なのに敏捷にもジャンプして跳んできた。口には肉食獣の様な鋭利な刃物の様な鋭い牙が生えている。
マンモスがスカイ達の載っているロボット「虐殺王」に突進してきた。
「パオーーーーーーーン」
マンモスが雄叫びを上げた。
「ここは、こう動かすんだろうスカイ!」
マグギャランがスカイの右腕を引っ張ってレバーから引き離して引っ張った。
「虐殺王」の腕が上がった。「虐殺王」の剣を持った腕が、マンモスとぶつかった。そしてそのまま後に吹き飛ばされた。
「倒れるぞ!」
スカイは叫んだ。
マグギャランとコロンも不味そうな強ばった顔をした。
ニワデルがレバーを引っ張った。
すると、倒れかかった「虐殺王」が倒れかかった状態で止まった。
「こんな状態で倒れたら、私達は全員が即死ですよ」
ニワデルが言った。
「何で浮いているのだ」
マグギャランが辺りを見ながら言った。
確かにマグギャランの言うとおり浮いていた。
「「虐殺王」は反重力装置が内蔵されているため、1メートルの高さまで浮かぶことが出来るのです」
ニワデルが言った。
「まあ、いいや、何とかして起きあがるぞ」
スカイは操縦桿を握った。
ロボットの姿勢が高くなっていった。
「ええい、スカイ。俺に任せるのだ」
マグギャランが懲りずに操縦桿をスカイから奪った。
だが今度は「暴虐王」の剣がグルグルと回転を開始しながらスカイ達の乗る「虐殺王」目がけて突進してきた。
「ニワデル博士。「虐殺王」を破壊して止めます」
スローターの冷たい声がスピーカー越しに響いた。
「任せます」
ニワデルがマイクを持って言った。
作品名:情熱のアッパカパー要塞 作家名:針屋忠道