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情熱のアッパカパー要塞

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 ローサルは言った。こんなデカイ、ダンジョンを作るには莫大な金と権力を持っていたに違いない。
 「力は良くも悪くも使えますよ」
 ターイは言った。
「ああ、そうだよな力さえ在れば何でも出来る」
 ローサルは言った。
そう力さえ在れば、何でも出来る。ローサルは、この広大な地下迷宮を見て力を得てやると固く胸に誓った。



 「さて、我々は、イジア国からは色好い返答を貰えませんでした。ここで、作戦会議を始めましょう。我々はアッパカパー伯爵と連絡を取ります」
 ミラーナはダンジョンの中を歩いて行きながら話始めた。
 「姫様も狡賢くなられましたな」
 ナバーガーが溜息を付いた。
 「今の境遇では世知にも長けるものです」
 ミラーナは言った。
 「姫様はイシサ聖王国と結託する、おつもりですか」
 ジェラールは咎めるような声色で叱責するように言った。
 「ミドルン王国の貴族達の動きは緩慢です。我々が冒険屋として、トラブルを解決してきた貴族達も鋸卿に対して兵を動かす気は在りませんでした。ミドルン王家でさえ、鋸卿の独裁政治を認めています。鋸卿は巧みです、対外的には今までのカーマイン大公国と同じように振る舞っていますが、領土内では独裁政治を敷いています」
 「ですが、軽率では在りませんか。カーマイン大公国はミドルン王国と主従関係に在ります。他の大公達よりもカーマイン大公国はミドルン王家と歴史的に深い関係が在ることを、お忘れですか」
ナバーガーは言った。
「たとえ、外国の国でも後援に動いてくれるならば、味方に付けるべきです。そしてイシサ聖王国がミドルン王国に圧力を掛けて鋸卿を倒すために兵を動かす動機となるのであれば良いことです」
「二重外交をする、おつもりですか」
ナバーガーは言った。
「いけませんかナバーガー」
 ミラーナは言った。
 「ナバーガー。姫様は正しい。カーマイン大公国はミドルン王家と主従関係に在るが、独立性は元々高い。イシサ聖王国からミドルン王国を動かす事も理にはかなっている」
 ジェラールが溜息を付いて言った。
 「そうです。イシサ聖王国に、我々はコネを作る必要があります。アッパカパー伯爵と盟約を結ぶことは、その為の第一歩となるでしょう」
 ミラーナは言った。
「姫様も、このナバーガーに内緒で、そのような悪巧みを考えるとは、このナバーガー、一本と取られました。ですが、元々は、カーマイン大公国はミドルン王室と歴史的な関係の深い大公国なのですぞ。その事を忘れてはなりません」
 ナバーガーが困った顔をして言った。
「昔の事です、鋸卿の起こした変化が今の物で在れば、我々も過去を捨てて前に進むしか在りません。そして新しいカーマイン大公国を作るのです」
 ミラーナは言った。
 これがミラーナの決意だった。反鋸卿包囲網に参加しないロード・イジアの息子を救出する必要など無かった。



「アッパカパー伯爵様。カーマイン団のミラーナ・カーマインという女性から電話が掛かってきました」
 ベシアが言った。
「何?どういうことだ。また、ボンドネード・ファミリーのように密告なのか?」
 アッパカパー伯爵は言った。
 「どうやら違います。カーマイン団はアッパカパー伯爵様とカーマイン大公国の代表として内密の話が在るとの事です」
ベシアも怪訝そうな顔をして携帯電話を見ながら言った。
 「内密の話しだと?イジアの雇った冒険屋が、何の話が在るというのだ。まさか、会談するフリをして小イジアの身柄の奪取を図るのか?それとも、この私を暗殺する事が目的か?」
 アッパカパー伯爵は言った。
 「どちらでもありませんよ」
 冬風が言った。
 「どういうことですかな冬風殿」
 ベシアが言った。
「ミラーナ・カーマインはカーマイン大公国の嫡女です。鋸卿に支配されているカーマイン大公国に関する政治的な話しをアッパカパー伯爵としたいのでしょう」
 冬風は言った。
 「なぜ、イシサ聖王国の伯爵である私と内密の話をするのだ」
 アッパカパー伯爵は言った。
 「おそらく、ミドルン王国で反鋸卿の勢力を糾合しきれなかったのでしょう。アッパカパー伯爵を通して、イシサ聖王国との関係を深めることによってミドルン王国の貴族達を動かす事が目的だと考えられます」
 冬風は言った。
「どうしますかアッパカパー伯爵様」
 ベシアは言った。
 「話ぐらいは聞こう。ミドルンでは地代地主が増えて議会を作ろうとしているらしいからな。その辺りの事情は今後アッパカパー伯爵領にも変化を与えることになる。領民にとって良い変化なら良いのだが。悪い変化かもしれない。受諾すると伝えてくれ」
 アッパカパー伯爵は言った。
 「それでは、私が行きましょうか」
 冬風は言った。
「一人で大丈夫なのでしょうか。兵士達を貸しましょうか」
ベシアは言った。
「私は傭兵団屍の死剣士の一人です。それに彼女達は敵では在りません。救いを求めている、か弱い女性です」
冬風は笑みを浮かべて言った。



スカイ達はアッパカパー峠を下っていった。そして回りが岩をくり抜いた複雑な地形の谷間を通っていった。
 大分前から、アッパカパー要塞は見えていた。左手の岸壁がオーバーハングして出っ張って居る場所の奧の岸壁に城のような物が作られているのだ。その城の様な物の下には城下町の様な物があった。多分、あれが半日町だ。
「アッパカパー要塞は典型的な石窟城塞だな。岩を掘って作られた要塞は石窟城塞と呼ぶのだ」
 マグギャランが頷きながらスカイに説明した。コロンも首を傾げていた。
「何だ、ありゃ。ロボットか?」
 スカイは「半日町」の城門を塞いでいる7メートル近くある巨大な金属の塊の怪物を見ていた。右手には五メートルぐらいの長さのある巨大な刃渡りの剣が握られていた。そして左腕には盾が握られていた。
 城門には次々と、馬やラバに引かれた荷馬車が通り過ぎていく。だが、鎧を着た兵士達の検問が敷かれていて。荷物の中身をチェックしていた。
「不味いな、スカイ。「半日町」に入るためには、あの城門を通らなければならないだろう」
 「まあ、そうなるよな」
 スカイは頷いた。
 「あのロボットと戦って勝てる見込みは在るか?」
 マグギャランは言った。
 「全然無いな」
 スカイは断言した。
「だろうな。俺も全然勝てる気がしないぞ。剣では無理だ。コロンの魔術の方で何とかなるか?」
マグギャランは言った。
「…時間を掛ければ、理論上は金属を溶かすことは出来る」
コロンは困った顔をしながら言った。
 「だがな、敵もバカではないぞ。お前が時間を掛けて火で温めている間にだな、あの7メートルぐらい在る上背から繰り出される、鋼鉄のキックか、パンチでも食らって見ろ、即死は免れられんだろう。あの剣で切られたら確実に、お陀仏だ。あの重装甲では、さっきの爆裂火球の呪文も通用しそうには無いな。だが、あの破壊力ならば結構いけるかもしれんが」
 マグギャランは言った。
「…回りにいる人達が巻き添えになる」
 コロンは困った顔で言った。