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情熱のアッパカパー要塞

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 戦斧隊の突進を切り抜けることに成功した。
 「よし、コロン火炎球を出せ!」
 マグギャランは言った。
「いや、まだ火炎球が出来て居ないぞ」
 スカイは肩の上に抱えているコロンを見ながら言った。
 「なんだとぅ!」
 マグギャランは叫んだ。
「とにかくこのまま走り続けるぞ!距離を取れ!」
スカイ達はコロンを抱えたまま走っていった。
 スカイ達は、崖に沿って木の手すりが付いた霧が薄くなっている道を走っていった。
 「戦斧隊!追撃戦開始!」
アガの叫び声がスカイの背中に突き刺さるように響いた。
不味い!
「うぉぉおおおおおおお!」
 後を見ると。後から戦斧隊が戦斧を構えて追ってきた。コロンが抱えられた状態のまま火炎球を作り始めた。そして、火炎球が戦斧隊の方へ飛んでいった。
「攻撃魔術警報発令!戦斧隊転進!一時退却!」
 アガが叫んだ。
 コロンの火球を避けるために戦斧隊は後を向いて走っていって距離を取った。コロンの火球がヘナヘナと飛んでいって、道に落ちた。
落ちる直前に逆さの円錐型に変化した。吹き上がる炎をスカイは見た。同時に爆発音と地響きが走って、スカイとマグギャランはコロンを抱えたまま爆風で吹き飛ばされた。
スカイ達は地面を転がっていった。
 「何だこりゃ!」
 スカイは地面に転がったまま吹き飛ばされて、煙っている辺りを見ながら叫んだ。
 道が無くなっていた。正確には岸壁沿いの道が大きく欠けていたのだ。十四、五メートルぐらいの幅で道が消えて、深くえぐれていた。
 これでは戦斧隊は。渡って来ることは出来ない。
「何という凄まじい威力だ。地形が変わっているぞ」
マグギャランも強ばった顔でスカイ達の方を見ていた。
「ええい、卑怯な!この歴戦の勇士達を罠にはめるとは狡猾な奴等め!」
 アガが叫んだ。
 「何だよ。何時、こんな呪文を覚えたんだ」
スカイはコロンに言った。
 「…昨日リッカちゃんに鋼鉄の歯車学派の話を聞いたから。真似して作ってみたの。でも、こんなに威力が在るとは思わなかった」
コロンも動揺した声で言った。
 「成る程。鋼鉄の歯車学派の呪文を使ったのか」
 マグギャランは言った。
「だが、威力が在りすぎだぜ」
 スカイは大きく、えぐれた道を見ながら言った。
道の向こうでは戦斧隊が戦斧を振りかざして何時までも叫んでいた。



ローサルは、四十一番トンネルの扉の前に来た。頭上に作られたトンネルには木で作られた梯子を登るようになっている。
 「42番トンネルと何で嘘を付いた」
 シャールは言った。
 「決まっているだろう、アイツ等が捕まった場合、俺達の潜入ルートを知っている事は良くない」
 ソフーズが言った。
 「そういうことだよ。駆け引きでも勝たなくちゃいけねぇ」
 ローサルは言った。前に木の梯子が在った。
 「どうやら地図は間違っていないようだぜローサル」
 ソフーズはシャールが杖の先に灯した雷光の明かりで確認しながら言った。
 「覚悟決めるぞ、お前等。こっから先は敵のアッパカパー要塞の陣地だ」
ローサルは言った。
そして、頭上の扉を押した。
 


ソークスは携帯電話をリッカの兄のノアム・グルンに掛けていた。
「…こういう訳だ。肝心の小イジアの居場所が1時間、おきに移動されていて分からない」
 ソークスはノアムに今までの事情を説明して言った。
 「成る程。ならば、命令を出している場所から直接、その小イジアの居場所を聞き出せばいい」
ノアムは言った。
 「どういうことだ」
 マウドがボリュームを上げた携帯に言った。 「つまりアッパカパー伯爵という人から直接小イジアという人質の居場所を聞けばいいわけだ。アッパカパー伯爵という人なら人質の居場所を知っているだろう」
ノアムは言った。
 「また、強引な事を考えるな。一番警備が厳しい場所だろう」
 ルージェイが言った。
 「でも、君達を止められる腕前の人間が辺境のアッパカパー要塞に居るとは思えないけれどね」
 ノアムは言った。
「俺達だって人間なんだぞ。バケモノみたいに言うな」
 ソークスは言った。
「でも君はバケモノみたいに強いじゃないか。何とかなるんじゃないか」
 ノアムは言った。
随分と強引な作戦だったが。他に考えようが無かった。
 「もう少し、俺達を、いたわる作戦を考え出してくれ」
 マウドが言った。
 「リッカが光学迷彩の呪文を使えば、いいだろう」
 ノアムは言った。
 「えー、嫌だよ、お兄さま。わたし、あの呪文疲れるから嫌なのよ。今日は何回も使ってヘトヘトなのよ」
 リッカは言った。
 


「伯爵様!モンスター・サーカスのニーナ6号から連絡が入りました!ボンドネード・ファミリーと遭遇し、これから殲滅するとのことです!」
ドウンが報告をした。
「よし!殲滅を開始しろ!」
 アッパカパー伯爵は叫んだ。
 


 リート・ボンドネードはスカウト能力を持ているイオラを先頭にアッパカパー峠の道を下っていった。この辺りの地形は巨大な石が転がっている為、迂回するためのルートが無かった。リート・ボンドネード達は巨大な石をくり抜いて作られたトンネルを潜って。先を急いだ。
 何かの気配を感じた。視線を感じたのだ。獣の殺気と人間の視線が混じっていた。
 「パーティのメンバーに告げる。何かが居る。気を付けろ」
 リート・ボンドネードは言った。
 「崖の上を!」
 イオラが叫んだ。
 イオラが指した指の先には左手の崖の天辺に巨大なパンダに跨った。燕尾服を着た若い娘の姿があった。他にも二頭のパンダが居た。
 パンダ達は斜面を駆け下りてきた。
 「いったん。引け!」
 リート・ボンドネードは命令した。
敵の戦力がハッキリと判らない以上遭遇戦は避けたかった。



スカイ達は、アッパカパー峠を警戒しながら、歩いていった。どこに待ち伏せが居るのか判ったものでは無かった。自然と疑心暗鬼に駆られて、そこら中を注意してキョロキョロとしてスカイ達は歩いていた。
暫く歩いていくと、人の気配がした、ガヤガヤとしていた。
 「不味いな、結構な人数で騒いでいる様だぞ兵士達が群れて待ち構えているんじゃねぇのか」
 スカイは言った。
 戦斧隊は十人?ぐらいしか居なかったが、もっと沢山の数の兵士達が待ち構えている事は十分に考えられた。
「確かに、そうだな。こんな山道で酒盛りする事は考えられないが。ミドルンの検問所の兵士は朝から酒を飲んで酔っていた訳だし、酔っ払いの酒盛りの可能性は十分ある」
 マグギャランは言った。
「まあ、取りあえず、遠回りして様子を見るぞ。手頃な藪が在るな。あれに隠れて先に進むぞ」 
 スカイは道の上を走っている藪を目で指しながら言った。
マグギャランとコロンは頷いた。