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情熱のアッパカパー要塞

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静かな食堂となった「統合幕僚作戦参謀本部極秘会議場」でミリシンの、うめき声だけが何時までも響いていた。



ボーン、ボーンと廊下側の壁にレリーフと一体となっている巨大な時計が、音を立てて鳴り響き、六時になった事を告げた。五つのパーティのメンバーが全員、椅子を動かして立ち上がった。
 ボンドネード・ファミリーのリート・ボンドネードが「統合幕僚作戦参謀本部極秘会議場」の扉を開けた。
 扉を開けると音楽が聞こえ始めた。
何かの軍楽隊の行進曲のような音楽だった。
 「仕事の開始だ」
 マグギャランはスカイとコロンに言った。
「おうよ」
 スカイは頷いた。コロンも頷いた。
 スカイ達は、扉を潜った。
 広い応接室ではロード・イジアが、金色の全身鎧を着てヘルメットのバイザーを上げてスカイ達五つのパーティに敬礼をしていた。いや、他の兵士達も敬礼をしていた。赤と緑のソックスを履いた吹奏楽団が居て。演奏をしていた。
 「諸君等の健闘を祈る!」
ロード・イジアは顔を真っ赤にして叫んだ。
 「イジア国万歳!」
 マッタール大臣も額に青筋を立てて、後ろを振り向いて叫んだ。
「イジア国万歳!」
 マッタール大臣の掛け声と共に吹奏楽団や兵士達が一斉に両手を振り上げて万歳を開始した。
 「イジア国の軍楽隊よ!今こそイジア国の国歌「暴れやっこ」を演奏するのだ!国歌斉唱!」
 ロード・イジアが振り返って、感極まった声で涙を流しながら金色の鎧で覆われた腕を振り上げて叫んだ。
「戦え
  戦え
 無敵の戦士達
 悪いアッパカパーを懲らしめろ
  正義
  正義
 我等は正義の味方
  守りは堅く
 敵を討つ
 それ栄光の戦士達
 選ばれし勇者ここにあり
 」
酷い内容の歌詞の歌をイジア要塞の連中は集まった奴等が吹奏楽団以外全員が歌い始めた。いや口を使う楽器以外の太鼓を叩いている奴やアコーデオンを弾いている奴は大口を開いて歌っていた。皆、感極まった顔をしていた。
「二番斉唱!」
 ロード・イジアの叫び声が鼻水を、すする音と共に聞こえていた。
「仕事は始っちまったな」
 スカイは、外に出るための階段を降りながらマグギャランに言った。
 「ああ、そうだ」
 マグギャランは言った。
「取りあえず、どうするかだ」
 スカイは言った。
 「国境越えとトンネルの2つのルートが在る」
マグギャランは勿体ぶって言った。
「トンネルと国境越えは、どっちが良いんだ。トンネルの方が簡単かつ確実にアッパカパー要塞に潜入できるが、もし、トンネルがアッパカパー要塞の連中に発見されていて見張りか何かが居た場合、俺達はトンネルを出た時点で簡単に捕まる事になるな」
 スカイは、まだ迷っていた。
 何となく嫌な感じのカンが働いていたのだ。
「まあ、俺に任せろ、霧の谷へ向かうぞ俺達は、俺の秘策で国境を越える」
 マグギャランは言った。
キャンディ・ボーイズ達と、カーマイン団達は、上の空中庭園に出る階段の方へ歩いていった。
「何だよ、トンネル・ルートを取るのはキャンディ・ボーイズとカーマイン団だけかよ。俺達もトンネルからダンジョンを通った方が良いんじゃないのか」
スカイは前を歩いている灼熱の翼とボンドネード・ファミリーを見ながら言った。
「俺の秘策に任せろ」
 マグギャランは言った。
突然、ボンドネード・ファミリーが階段の踊り場で止まった。そして道を空けた。
 「先に通ってくれないかね、我々はミーティングをしなければならない」
 リート・ボンドネードが言った。
「階段でミーティングかよ」
 スカイは何となく、嫌な気がしたが、歩いていった。無表情のボンドネード・ファミリーの連中がスカイ達を見ていた。
 スカイは17ぐらいの男が、首に包帯を巻いているのに気が付いた。昨日は付けて居なかったはずだ。何が在ったのかはスカイには判らなかった。そのまま、ボンドネード・ファミリーに監視されるような感じのまま、スカイ達は、階段を降りていった。



「私です。ミリシンです。六時かっきりに、五つの冒険屋のパーティ達は仕事を開始しました。ボンドネード・ファミリー、灼熱の翼、W&M事務所はロード・イジア要塞の外へ向かい、カーマイン団とキャンディ・ボーイズはトンネルの方へ向かいました…」
ミリシンは、アッパカパー伯爵へ携帯電話を掛けていた。
「ミリシン。何処に電話を掛けているのであるか」
 マッタール大臣がミリシンの背後から突然現れて声を掛けた。
 ミリシンはハッとしてビクッとして振り向いた。
 「ミ、ミドルンの中央です」
 ミリシンは言った。
 「そうであるか。だが、このマッタールの目は節穴では無いのである。お前が、イジア国の国益を損なう様な事を企んでいる事は、既に、お見通しなのである」
 マッタール大臣がミリシンに顔を寄せてきた。
 「そんな事は、在りません!少しも在りません!」
ミリシンは必死になって弁解をした。
どこから聞かれたかは判らなかったが。マッタール大臣の口調からアッパカパー伯爵に電話を掛けている事はバレなかったようだ。ミリシンは必死に弁解を続けた。



「何だよ、トンネルに入るのは俺達と、このケツ女達のパーティだけかよ。他の連中はどうやって半日町まで辿り着く、つもりなんだ?」
 ローサルは、カーマイン団の後に付いて空中庭園に出る階段を昇っていった。他のパーティも、トンネルを通って、アッパカパー要塞に潜入するモノだとローサルは考えていた。
 「貴様、いい加減に、その減らず口を閉じろ」
カーマイン団の最後尾に居る黒い革の上下にプロテクターを着けた女が言った。オーラを発しているカーマインに比べれば比べ物にはならないが、顔も体つきも、なかなかの上玉だった。
 「ラーン。お前はカーマイン家に家臣として仕える身だ。このような下賤の輩と口を利く事はない。我々は仕事を全うすればよい」
 鎧を着て両手持ちの剣を背負ったジジイが言った。
 「謀反に遭った貴族程、情けない物は無いな。領民は、お前達を見限ったのだろう」
シャールが言った。
カーマインは後を向いた。
「謀反を起こしたのは鋸卿をはじめとする一部でしかない。領民の多くは我々を慕っている」
 カーマインは言った。
「姫様、お黙りを。このような下賤の輩達とは口を利く必要など在りません」
エターナルのローブを着たジジイが言った。
 「競合ルールでは、仕事に参加しているパーティ同士の戦闘は組合の権限で禁止されている。それは仕事が終われば、戦っても構わないと言うことだ。エターナルの魔術師を殺すことは、雷光の裁定学派の名誉だ」
 シャールが言った。
「時代遅れの決闘沙汰に拘るとは遅れた学派の魔術師には相応しい名誉だな。だがエターナルの魔術師は大局に立ち、争いを収めて民の生活の向上に務めている」
エターナルのジジイが言った。