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情熱のアッパカパー要塞

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 「ねぇ」
「何だよ」
 「あなた。もう少し大人になったら、いい男になれるかもね」
 「何、からかっているんだよ」
「本気よ。じゃあね」
イオラは、そう言うと扉を閉めた。
スカイは暫く扉を見ていた。
 「何だよ。鍵を掛けていけよ」
スカイは鍵を掛けるためにベッドから降りた。



 「よし、それでは、我々が潜入するルートを説明しよう」
リート・ボンドネードは言った。
 「我々はミドルン王国とアッパカパー伯爵が管理する国境の「霧の谷鉄橋」を越えてアッパカパー伯爵領に潜入する。その後で、バックアップの為に先行してイシサのアッパカパー伯爵領の城下町「半日町」に潜入したボンドネード家のザラシ達と合流する。ザラシ達はアッパカパー要塞で働く者の家族を捕らえたり買収工作を進めて内部情報を集めている。我々はザラシ達と合流後、アッパカパー要塞に潜入する。そして、アッパカパー要塞の六階の南の部屋「第六十五室」に捕まっている小イジアの身柄を奪還する。それでは、これからアッパカパー伯爵に携帯をかける」
リート・ボンドネードは言った。



作戦会議中に連絡が入ってきた。
 「アッパカパー伯爵様、ボンドネード・ファミリーと名乗る男から連絡が入りました」
ベシアが言った。
 「ボンドネード・ファミリーからだと。イジアの雇った冒険屋が何故だ?どういうことだ」
 アッパカパー伯爵はベシアに言った。
 「多分、密告です受けて下さい」
 冬風が言った。
「判った。ベシア受けてくれ」
 「判りました」
 ベシアは携帯電話に耳を当てた。
「繋げてくれ」
 ベシアは言った。そして携帯電話を操作してアッパカパー伯爵に渡した。壁に取り付けられたスピーカーから声が聞こえてきた。
 『私は、ロード・イジアに雇われた。冒険屋のリート・ボンドネードだ』
「ボンドネードファミリーが何故。アッパカパー要塞に電話を掛けてくる」
アッパカパー伯爵は言った。
 『ロード・イジアは我々ボンドネード・ファミリーの他に四つのパーティを雇っている。この四つのパーティに仕事を成功されたくはない。だから、今から、この四つのパーティの情報を、そちらに流す』
「そのような情報など…」
アッパカパー伯爵が言う前に冬風が前に出てきた。
「アッパカパー伯爵。この情報は聞きましょう」
 冬風は言った。
 「冬風殿、敵の罠かもしれません」
 ベシアが言った。
「それは無いでしょう。ロード・イジアが競合ルールで冒険屋達を雇ったならば、彼が敵の情報を流すことは理にかなっています。だから、情報を聞きましょう」
 冬風は言った。
 アッパカパー伯爵はベシアに頷いた。
 「判りました。冬風殿を信じましょう」
 ベシアが言った。
「それでは、四つのパーティの情報を教えてくれ。リート・ボンドネード」
 アッパカパー伯爵は言った。
 『キャンディ・ボーイズとカーマイン団はアッパカパー要塞の地下ダンジョンに作られたトンネルを通って潜入する予定だ。灼熱の翼は、ロボットを使って空から潜入しようとしている。W&M事務所は、いまだに潜入ルートが決まっていない。それでは、この三つのパーティの詳しい潜入ルートの説明をする…』
 リート・ボンドネードは説明を開始した。
 


プリムはマーガリナと共にメイド頭のマヌエッタ様に呼び出されていた。ポロロン様は、もう眠りにつかれていた。
「マーガリナにプリム、よく聞きなさい。明日の午前6時から、このアッパカパー要塞に向けて五組の、ならず者達がやって来ます。ポロロン様付きのメイドとしてポロロン様を、しっかりと守るのです。判りましたか」
マヌエッタ様は言った。
 「はい」
 プリムは先輩のマーガリナと、ほぼ同時に返事をした。
 「よろしい。しっかりと、お守りするのですよ。ポロロン様は、あなた方も知ってのとおり、気だてが優しすぎるぐらいに優しすぎます。これはポロロン様の良い面でもあり、悪い面でも在ります。私達はポロロン様をしっかりと守らなければなりません。それが、この誇り高きアッパカパー要塞に仕えるメイドとしての心構えです…」
マヌエッタ様は言った。そして長い説明が始まった。
 明日の朝まで続くのでは無いでしょうか。
 プリムは不安に駆られた。
 


「あー、朝早くから起きるのは辛いな、まだ五時だろう?」
 スカイは携帯電話を取りだして時刻を確認した。
 「昨日、リート・ボンドネード達と相談して決めた、我々、五つのパーティが結んだ協定による仕事の開始時刻は今朝の午前6時だ。一時間ぐらい早く用意していても、何等問題は無い」
マグギャランは言った。
 コロンは欠伸をしていた。
「ああ、だが、まだ、作戦は決まっていないぞ。俺達は、どこからアッパカパー要塞に潜入するか決めていないんだ」
 スカイは言った。
 結局、結論が出なくてスカイ達は未だにアッパカパー要塞を目指す侵入ルートが決まっていなかった。マグギャランに何か秘策が在るらしかったが。スカイ達には黙っていた。
 「俺達は毎回、行き当たりばったりだからな多少の準備はするにしてもだ。お前のズボラなデタラメさが俺にも、うつってしまったんだぞスカイ」
 マグギャランは言った。
 スカイ達は食堂に入っていった。
 「何だ、俺達が一番最後かよ」
 スカイは食堂となっている作戦会議室の中を見ながら言った。
既に、ボンドネード・ファミリー、キャンディ・ボーイズ、カーマイン団、灼熱の翼の四つのパーティが来ていた。
「おお、俺達のメシだ」
 スカイは、朝食を発見して言った。パンの他に何かの肉に、シチューに、サラダも付いている。朝食にしては気が利く献立だった。
スカイは「W&M事務所御一行」と書かれたテーブルの席に歩いていって座った。マグギャランとコロンも座った。
「そんじゃ食うぞ」
 スカイはパンの間に肉とサラダを挟んで、
サンドイッチを作って食べた。
 マグギャランは器用にナイフとフォークを使って食べている。
コロンはモグモグと口を動かして眠そうな顔をして食べていた。
 スカイ達が食べていると食堂にミリシンが入ってきた。
「皆さん、わたしです、ミリシンです。大変重要な事を今朝、悪夢でうなされて気が付いたのですが。皆さんの身分証明書を、わたしに預けさせて下さい。皆さんは捕まってしまった場合、くれぐれも、ミドルン国籍では無いと主張して下さい」
ミリシンが胃を押さえながら。食堂に入ってきた。
「我々は、身分証は持ってきていない」
 リート・ボンドネードは肩をすくめて言った。
 「お前に、身分証を預ける理由がねぇよ」
 ローサルが言った。
「何故、身分証を預けねばならないのですか」
 カーマインが言った。
「だから、捕まった場合に、ミドルン王国と無関係であると主張する為ですよ。これは外交問題に発展する可能性が在る重大な事件なのですよ。下手をしたら戦争になるかも。ああっ、恐ろしい。考えただけでも恐ろしい、ううっ…」
 ミリシンは胃の辺りを押さえてうずくまった。スカイ達は無言のまま朝食を食べていた。