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情熱のアッパカパー要塞

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「何だよ、お前」
 スカイは腰のナイフを引き抜いて言った。
「やっぱりね、あなた、盗賊でしょ。剣を持っているけどナイフの方を先に手にした」
入ってきたのはボンドネード・ファミリーの弓使いの女だった。
「盗賊じゃねぇよ。スカウトだよスカウト。俺、目つき悪いから、よく盗賊と勘違いされるんだよ。それに今は戦士だよ」
スカイは言った。
「私の名前はイオラ・ボンドネード。ボンドネード家の現在の頭首の次弟の娘よ」
「だから何だよって言っているんだよ。何しに鍵こじ開けて人の部屋に入って来るんだよ。お前の方が盗賊だろ。冒険屋組合の競合ルールでは競合パーティ同士の争いは禁止されて居るんだよ」
 「そんな野暮な事じゃないわよ」
「何が野暮じゃねぇだよ。勝手に人の部屋に鍵外して入って来るんじゃねぇ。こっち来るんじゃねぇよ。出てけよ」
 スカイは近づいてきたイオラに言った。何かの香水らしい匂いがした。
「あなた、若いわね。今何歳」
 「十四だよ。冒険屋は実力さえ在れば年齢は関係ねぇ仕事なんだよ」
「確かに、そうよね。私は十歳から7年間の間、冒険屋の仕事を引き受けているけれど。私の方が先輩かな」
イオラはスカイが身体を起こしたベッドに腰を下ろした。
「俺は七歳から冒険屋やっているんだよ、俺も7年間だ」
「嘘?!あなた七歳から冒険屋をやっているの!」
 イオラ・ボンドネードは吹き出した。
 「ああ、仕方がねぇんだよ」
 スカイは言った。
 何、ウケているんだよ。
 「一族で冒険屋をやっているボンドネード・ファミリーでも仕事に出されるのは十歳からよ。それが七歳から?本当なの?」
「冒険屋組合の登録は年齢制限がねぇだろう。だから問題は無かったんだよ」
 「最近は冒険屋組合も未成年労働を禁じているわよ。十歳以下だけど。ボンドネード・ファミリーの当主のルーサー・ボンドネードはミドルン王国の冒険屋組合の副組合長をやっているからボンドネード・ファミリーの都合に合わせて組合の規則を作っているのよ。十歳でも早すぎるって人権家とかは言っているらしいけれどね」
イオラは言った。
「人権の話なんかしているんじゃねぇよ。早く出て行けよ」
「私も、本当は、こんな仕事はしたくないのよ」
「そんなら、しなければ良いだろう。別の仕事に就けよ。俺は、この仕事が好きなんだよ」
スカイは言った。
「確かに、普通に報酬を貰えるならば、危険にしても割の良い仕事かもしれないけれど。ボンドネード・ファミリーは稼ぎは全部コーラーに渡されてから分配されるのよ」
「冒険屋の報酬って言えば基本は報酬を人数で割る山分けだろ」
スカイは言った。
「そうらしいけれど。私は、分け前の報酬が父親経由で月に二万ニゼ(1万円)ぐらいしか、貰っていないの。私は、兄妹や従兄弟達みたいに頭が良くないから、魔術の勉強もさせて貰えなかったし、何時も、罠の発見や、鍵の開け方の練習とか、そんなことばかり。本当は弓なんか嫌いなのに、弓矢の流派の免許を取らされるし」
「何で、身の上話しているんだよ」
 「あ、しまった。ねぇ。私どう?」
いきなりイオラがベッドの上に上がってきて、左手を腰に当てて、右手を頭の後に当てた。そして鼻に掛かった声で話し始めた。マグギャランの部屋で奴に見せられたケーブルテレビのポルノ番組に出てくるエロ女の喋り方に似ていた。
「何、いきなり。しな作っているんだよ。ベッドの上に靴履いて上がるんじゃねぇ」
 「靴を脱げばいいの」
イオラが鼻に掛かった声のまま言った。
「俺は山道登ってきて疲れて居るんだよ。早く睡眠を取りたいんだよ。早く帰ってくれよ」
「私だってね、こんな仕事で着る服を着ていなければ、もっと女の子らしくも見えるし、可愛いって言われたり、美人だって言われるのよ」
イオラが鼻に掛かった声でシャツの胸元を弄りながら言った。
「だから、何で、俺の部屋に入ってきて居るんだよ」
 スカイは言った。
 「判ったわ」
 イオラは溜息を付いた。そして急に元の声になって続けた。やっぱり騙そうとしていたなとスカイは思った。
 「明日の作戦を教えて」
「何だ。そんな事が聞きたかったのかよ」
 「そうよ。教えて」
 イオラが真面目な顔で言った。
「まだ、決まって居ないんだよ」
 スカイは正直に言った。
 「まだ、決まっていない?明日の六時から仕事は始まるのよ」
 「ああ、そうだよ」
 「嘘ついているでしょ」
 「嘘なんかつかねぇよ」
「絶対、嘘ついている」
 「俺達は、何時も計画を立てないで、行き当たりばったりで仕事をしているんだよ」
「呆れた。そんな、やり方で冒険屋の仕事が上手く行くと思っているの」
 「まあ、多少は計画は立てるが。その計画が上手く行った事が無いから。結局は行き当たりばったりなんだよ」
これはスカイ達3人組の法則の様な物だった。スカイは、あまり難しい事を考えるのは得意ではなく、マグギャランは偉そうな事を言うが、あんまり作戦を立てるのは得意ではなく、コロンは作戦会議中は何時も顔を赤くしていたりボーっとしているぐらいだった。
「それじゃ、計画は、在ることは在るのね。それを教えて」
「マグギャランが秘策を考えついたらしいんだが。俺とコロンには秘密にしたまんまなんだ」
 「秘策?」
 「ああ、そうだよ。秘策が在るって言って居るんだよ」
「どんな秘策なの?」
 「だから、あいつが一人で秘密にして喜んでいるから秘策なんだよ」
 スカイは言った。
 「はあ?それで、上手く行くと思うの?」
 「判らないな。まあ、上手く行くかもしれないし、上手く行かないかもしれない」
 「つまり、五十%以下と言うこと」
 「さあな。そこまでは分かんないよ。上手く行くかもしれないし」
 「呆れた。そんなデタラメな作戦で、命を懸けて国境侵犯をして、隣のイシサ聖王国のアッパカパー要塞に潜入するつもりなの」
「俺達は、いつも行き当たりばったりだって言って居るだろう」
「余所のパーティの事だから。私も口を出す訳には、いかないけれど、メンバーを考え直した方が良くない」
「しょうがねぇだろ。俺達は俺達で、何とかやっているんだよ」
「成る程ね」
 イオラは溜息つくと、スカイのベッドから降りた。
 「何だよ、今度はマグギャランの部屋に行くのかよ。だが、あいつは二十歳以上という年齢制限があるんだぞ。お前は十七歳だろう」
「どうしようかな。あなたの話を聞いていて、面倒くさくなってきちゃった。どうせ大した作戦じゃ無いんでしょ」
 「そこまでは分かんないよ」
「さっきね。廊下でカーマイン団のリーダーが与えられた部屋の前で、そのマグギャランって人がロード・イジアと言い争いをしているのを聞いたのよ。聞く限りでは二人とも夜這いをしようとしたみたいなのね。それで身の危険を感じて、あなたから情報を聞き出そうとしたんだけど。そんなデタラメな作戦じゃ駄目ね」
 「ああ、それじゃ早く出ていってくれ」
イオラは、部屋の扉へと歩いていった。
そして振り向いた。